糸々涙々
排水溝の側に眠る
あんなにも美しく舞う私の一部
黒く細い線たちが絡み合うその穴は
余りにも醜く、目を背けたくなる
あんなにも大切に育てたのに
そこで価値が消えてなくなる
呼吸をしたいんだ
懸命に酸素を手に入れたいんだ
どうやったら息を吸えるだろう
どうやったら息を吸い続けられるだろう
もう、疲れたのかもしれない
黒に添えるなら、赤が良い
でも私の中にあるそれは
黒く濁って見えるから
どうやったら貴方達をもう一度、
綺麗な姿に戻せるだろうと
考えている
考えていた
多分きっと、
私達には強酸性がお似合いなんだ
排水溝の側に眠る
真っ白になったその口を
指先で優しく撫ぜる
余りにも冷たく、不気味なほど滑らかで
あんなにも醜かった貴方は
誰よりも清らかな肌になった
意識を棄てたいんだ
空白の中へ堕ちたいんだ
どうやったら私でなくなる
どうやったら私はなくなる
もう、遅いのかもしれない
白に添えるなら、青がいい
でも私が作り出せる物は
透明に近い雫だけ
どうやったら貴方に相応しい
素敵な末路を見出だせるだろうと
考えている
考えていた
多分きっと、
私達には弱酸性がお似合いなんだ
排水溝の側に眠る
また貴方は黒く染まる
私の一部を絡ませて
何もかも呑み込んでゆく
どうしたら貴方の中に入れるだろう
きっとそこでなら私、
暗闇に空白があるだろうから
幸せになれるのに。
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