練磨しろ、たった一太刀しか振れぬ聖剣の贋作を

スライム道

第1話

「はい、包丁研いでね。」


無言で包丁を受け取り研いでいく。


俺はこの村の職人だった。両親は既に流行り病で他界している。昔、都で技術を学び村に戻って発展を手助けする制度を利用して何でも屋のような形で村に重宝されている。


そんなある日だ。幼馴染が癒しの担い手の素質があるとかで国から学園への推薦状が届いた。


幼馴染は喜んで学園へ旅立った。


俺は特に機にすることもなく職人を続けた。


ある日村に珍妙な武器を持った冒険者が訪れた。


「すまないがこれを最低限でいいのでメンテナンスをしてくれないか。どうにも素人の僕では限界があってね。」


「金貨1枚。」


「うん、相場通りだしいいよ。」


彼の持っていた武器、それは聖剣と呼ばれた物。


その名に恥じぬ性能と使用者を選ぶことから操る者は生涯大物になると言われていた。


シュリ、シュリ


最終段階における剣を研ぐ作業。俺はこの作業がとても好きだった。何も考えなくていい、ただ剣に、刃に身を預ける心地良い作業。


「うん、いい腕だね。聖剣はメンテナンスにするときすら担い手を選ぶけど君ほどこの聖剣を斬れる物にした人は見たことがない。どうだい私と旅に出ないか?」


「俺は村の職人。ただそれを全うする。」


「振られちゃったかな。まあまたメンテナンスが必要になったら君に頼むことにするよ。」


それらを終え1年は過ぎただろうか


幼馴染が聖女に認定された。


なんでも国の認めた聖剣の使い手、勇者と呼ばれる人物と魔物の王を倒すたびの出かけるらしい。


村民は大いに盛り上がる。昼夜問わずの宴が執り行われた。


でも俺はただの職人だ。村人がどんなに盛り上がろうと自分の腕を磨き研磨する。


それがたとえ自分の心を壊すことだとしても

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