第3話 クライオニクス
「――で、俺の最後の記憶では病院に入院してたはずなんだ。それも不治の病と宣告されて。それなのに、目が覚めたらここにいた」
その言葉に螺希が眉をほんの少し上げる。
「え、え? お姉ちゃん、何か分かったの?」
そんな僅かな動作の中に姉の理解を感じ取ったらしく、真弥は体全体を螺希に向けて尋ねた。さすがは妹というところか。
「空から落ちてきた理由は分からない。でも、穹路が何者かの一端は分かったかもしれない」
「何か分かったんなら教えて欲しい。正直、俺も訳が分からない状態なんだ」
螺希は一瞬考えるような仕草をしてから、小さく頷いた。
「その前に確認しておきたいことがある。穹路が入院したのは何年のこと?」
「何年? それは……二〇二〇年のことだけど」
「え!? に、二〇二〇年!?」
穹路の答えが意外だったのか、真弥は心底驚いたように叫んだ。
「真弥」
そんな真弥に螺希は自分の唇の人差し指を当てて、静かにするように促した。
それを見て真弥は慌てたように両手で口を押さえる。
「まず先に言っておくけれど、今はADではなくSA。SA九年。そして、AD二〇二〇年は今から約二三〇年前のこと」
「SA?」
相変わらずの淡々とした螺希の説明の仕方は、相手に事実を突きつけるには非常に有効だろう。
しかし、空から落ちてきたという話同様、このこともまた穹路には荒唐無稽過ぎて、すぐさま言葉の意味を飲み込めなかった。
「SAはstarting afreshの略で最初からやり直すという意味。それ以前の時代はBCも含めて全て旧時代と呼ばれてる」
「旧、時代……」
螺希は穹路の思考が追いつくのを待つように一息ついてから再び口を開いた。
「そして、恐らく貴方はクライオニクスを受けたんだと思う」
「クライ……何?」
聞き慣れない単語に、穹路は間の抜けた声で聞き返してしまった。
「クライオニクス。人体冷凍保存。イメージとしてはコールドスリープと言った方が分かり易いかもしれない。正確な意味は違うけれど。その時代では不治とされる病の治療を未来の医療技術に託す。そういう話、聞かなかった?」
その螺希の説明と問いに導かれるように、穹路の脳裏に両親とそのような話をした記憶が甦ってきた。
「た、確かにどこから見つけてきたのか、そんなようなことをしてる非営利団体の話を両親からされた記憶はあるけど。でも、それは……」
両親には悪いが、はっきり言って余りにも怪しかった。
インターネットで検索して最初に出てくるようなよくも悪くも有名な団体ではなく、検索に一件も引っかからないような団体だったからだ。
人体を冷凍保存するには多額の費用を要求される。家族の気持ちにつけ込んだ詐欺の可能性を第一に疑って当然だろう。
もし、人体冷凍保存を本気で推進しようとしている団体だったとしても、保存状態の維持などに莫大なコストがかかる以上、運営を続けられるとは思えない。
どちらにせよ、最終的には無駄に金を払うだけになると思い、穹路は両親にそんな話に乗らないように忠告していた。
正直藁にも縋りたい気持ちもあったが、どこか諦めも抱いていたし、何より自分のためにこんな負ける確率が余りにも高い賭けをして両親のこれからの人生を狂わすのは申し訳ないという気持ちの方が強かった。
だが、まさか本当に両親はそんな眉唾もいいところの話に希望を託したのか。
いや、死に行く子供を前にして、親ならばそれぐらいのことはしてしまうものなのかもしれない。
そして、もし螺希の話が真実ならば、結局両親の選択は成功したことになると共に、自分が両親から深く愛されていた証明にもなるだろう。穹路はそう思った。
「二〇二〇年というと時期的に早い気もするけれど、貴方が今ここに存在するという事実の方が大事。大体、全ての団体の詳しい記録が残ってる訳でもないし。貴方が本当に二〇二〇年に生きていたという記憶を持ってるなら、それがきっと真実」
この体調のよさは螺希の話に信憑性を持たせている。少なくとも、不治の病と告げられていた病気が完全に治ったように感じられるのだから。
「クライオニクスという試み自体は二〇世紀からあったらしいけれど、様々な問題があって結局残される者の自己満足に過ぎなかった。実際に正しく解凍できる形で冷凍する技術を得たのは二一世紀のことだから」
言い淀みなく滑らかに螺希は続ける。
「最大の問題は冷凍、解凍時の細胞破壊だった。私の記憶が確かなら、体液を不凍液に入れ替えたり、水分を凍らせないまま低温状態を作り出したりする技術でその問題を解決したはず。だから、厳密には冷凍とは言えないかもしれないけれど」
「じゃあ、お兄ちゃんもそうなんだ」
しばらく黙って話を聞いていた真弥が口を開く。
「も? ってことは、俺の他にもそういう人はいるのか?」
「大勢いる。特に最近ではその必要に迫られてるから。多くの人が解凍されて、実際にこの社会で生活してる。大抵は元の国籍に従って、それぞれの国で。現在では被験者は国が管理してて、定期的に解凍して社会に適応させるための施設で教育を施してる。本当なら穹路もそのはずだけれど――」
そのような施設にいた記憶はあるのか、と螺希の目は尋ねていた。
「俺はそんな施設に覚えはないよ」
穹路の言葉に螺希は無表情のまま、しかし、しっかりと頷いた。
「空から落ちてきたこともあるし、思った通り何か訳がありそう。何だか、私達の家に降ってきたのは偶然じゃない気がする」
「もしかして、運命の出会い?」
真弥は何故か嫌らしい笑みを浮かべてそう言ったが、螺希は静かに、ほんの少し硬く見える表情で首を横に振った。
「何者かに意図されたような、そんな、感じ」
その螺希の発言に穹路は夢の中で聞いたウーシアの言葉を思い出していた。彼女達が助けてくれる、という言葉の彼女達とは螺希と真弥のことなのかもしれない。
「どうかした?」
「い、いや、何でも」
それは単なる想像に過ぎず、そもそもウーシアの存在自体があやふやなのだ。
それに話の流れと螺希の冷静な話し方のせいで半ば受け入れてしまっているが、まだ螺希達の話を全て信じた訳ではない。今は余計なことを言わない方がいい。
だから、穹路は一先ず気になるところを質問してみて、螺希の話に矛盾がないか探ってみることにした。
これまでの印象では二人が騙すような人間だとは思えなかったが、話が話なので仕方がないだろう。
「クライオニクスについては、まあ、何となく分かったけど、結局のところ何でADからSAに変わったんだ? もしかして、さっき言ってた解凍が必要とされてるってのと何か関係があるのか?」
「その詳しい説明は少し時間がかかるから、今は要約させて」
一瞬の沈黙。それは螺希が態々許可を求めての間だと気づき、穹路は慌てて頷いた。説明をしてくれている側なのに何とも律儀な子だ。
「穹路の言う通り、その二つには因果関係がある。まず当然のことだけれど、ADからSAに変わったのはそれだけ大きな事件があったから。……全人口の九割以上が死んでしまうぐらいの」
「九、割?」
穹路の常識でも人口は七〇億以上だから、最低でも六三億。本当に二〇〇年以上経っているとすれば、実際はそれを遥かに超える人々が命を失ったことになる。
現実味のない数に一瞬理解が追いつかず呆然とする。
「そう。だから、その事件が起きなければ、人口増加の問題が強く叫ばれてた時期だったこともあるし、クライオニクスを受けた中の一部の人達は資源の無駄食いとして破棄されてた可能性もある」
「破棄? 殺す、ってことか?」
破棄という言葉が余りにも無機質に感じられ、穹路は思わず顔をしかめた。
「そだよ。結局、過去の人間だもん。今生きてる人の枷になるなら、ポイしちゃおうとする人だって当然いるでしょ? どんどん人口は増えてって、その上、ちゃんとした人体冷凍保存の技術も確立されちゃったから冷凍保存を受ける人ももっと増える。トータルの維持費は馬鹿にならないもんね」
言いながら、真弥はそんな合理的な命の計算が気に食わないようで唇を尖らせた。
「一つ注意して欲しいのは、冷凍、解凍の技術がしっかりと確立した後にクライオニクスを受けて、かつ病がその時代の医学で治療可能な人はちゃんと解凍されて社会復帰してるということ。……人口問題の最中でのことだから、妙な差別も少なくなかったけれど」
旧時代末期にもなると風当たりが特に強かったみたい、と螺希はつけ足し、更に言葉を続ける。
「でも、実際に破棄云々の議論が出たのは、そもそも不確かな技術で冷凍されて、解凍した場合死に至る可能性が高い人や、西洋医学の発展速度が極めて遅くなってた旧時代末期でさえ、それでも不治の病として冷凍された人が大部分を占めてる段階での話」
とは言え、初期の被験者やその家族は、未来の医療に望みを託して冷凍保存を選択したにもかかわらず、その未来の事情で望みを絶たれる可能性があった訳だ。
だが、よく考えればそれも仕方のないことだ。
真弥の言う通り、今を生きる人々が困窮しているというのに、過去の願いに引きずられて共倒れしてしまっては本末転倒以外の何物でもない。
真弥同様、一〇〇%賛同することはできないが。
「でも、破棄反対派が抵抗してる間に、ある技術が登場したの。それによって不確かな技術で冷凍された人の解凍も可能になり、不治とされる病もさらに少なくなった。さらには人口問題にも光明が見出されたの。そのおかげで破棄すべきと考えていた人々の勢いは弱まって、さらにSA元年の人口激減で完全決着」
螺希はそう言いながら胸元に黒く輝く石を握り締めた。
「でも、ちょっと勝手だよね。自分達の都合で簡単に態度をコロコロと変えちゃってさ」
真弥は悲しそうに呟いて俯いた。
「それは仕方のないことだよ。誰だって大小の差はあれ、都合で対応を変えたりするものだからね。それに、そのことで真弥ちゃんが悲しむ必要は全くない」
むしろ、ほとんど破綻せずに現在まで存続していたことを感謝すべきだろう。
過去の人間の願いを果たすために、命という重過ぎる荷物を背負い続けてくれていたのだから。
「お兄ちゃん……うん」
真弥は穹路の言葉に頷いて、すぐ彼女によく似合っている笑顔を見せてくれた。
「まだ聞きたいことは多いと思うけれど、まず先に穹路には選択して貰わないといけない」
相変わらず抑揚のない声で、しかし、先程までより冷たさが大分和らいだ視線を穹路に向けて螺希が言う。
「施設に連絡するか、私達に匿われるか。……でも、何だか訳ありのようだから、前者はお勧めしないけれど。酷い目に遭うかもしれないから」
「それは実質、選択できるのは一つだけじゃないか。でも――」
「こんな小娘に匿われても不安なだけ?」
螺希はほんの微かにではあるが、意地悪そうに小さく笑った。
それは本当に些細な表情の変化だったが、初めて笑顔を見せた螺希は可憐で、いわゆるギャップによってか心臓が僅かに高鳴る。
それを誤魔化すように穹路は少し視線を外した。
「私達は確かに小娘に過ぎないけれど、祖父のコネを使えば色々なことができる。例えば貴方にこの時代で生きる場所を作るぐらいのことも」
「……コネ、か。だから誰かに仕組まれてる、なんて言ったのか?」
螺希は静かに、しかし、しっかりと頷いた。
特殊な状況下に置かれて助けが必要な者が、それが可能な者の目の前に現れた。確かに都合がいいし、それを誰かの思惑と考えるのも無理もない。
「お兄ちゃん、他に行くとこあるの?」
真剣に、心配そうに真弥にそう尋ねられる。
正直に言えば、穹路はまだ空から落ちてきた云々については信じていなかった。
しかし、少なくとも今が自分の知る時代、その最後の日から見て明日のその遥か先の世界であることだけは確かだと思った。
この体自体にその事実が刻まれている気もする。
螺希の話にも大きな矛盾はなさそうだったし、何よりこの体の調子のよさは未来の技術で治療を受けたとしか考えられない。
「どうする? 私はどっちでも構わないけれど」
ここは夢で聞いた言葉に従って、螺希達に助けて貰った方がいいかもしれない。
兎にも角にも現状についてもっと知る必要があるし、それに適応していかなければならない。何より、この二人自身のことは信用してもいいだろう。
穹路はそう判断し、二人の厚意を信じて甘えることにした。
「螺希達に助けて貰いたい。今の状況で頼れるのは二人だけのようだから」
「そう。分かった」
少し安堵したような口調で言って、螺希は立ち上がった。
「なら、私は早速そのための手続きをしてくるから」
「うん。行ってらっしゃい。ちゃんとお兄ちゃんとお留守番してるからね」
螺希は真弥の言葉に頷いて、それから穹路に再びあの冷たい視線を向けた。
「一応言っておくけれど、真弥に手を出したりしたら、許さないから」
「わ、分かってるよ」
その鋭い眼光に射竦められ、穹路は背筋が凍る思いをした。
螺希はその返答に満足したのか表情を幾分か穏やかにし、部屋から出ていった。真弥もその後に続く。玄関まで見送りに行ったのだろう。
そして、玄関の扉が閉まる音のほとんどすぐ後に、廊下を駆けてくる軽い足音が部屋に近づいてきて、真弥が再び部屋に戻ってきた。
「ごめんね、お兄ちゃん。お姉ちゃん、ちょっと心配性で。さっきのも半分冗談だから気を悪くしないでね」
半分は本気なんじゃないか、と突っ込むべきか悩んだが、そこは我慢しておく。
「いや、俺が言うのも何だけど、螺希の心配の方が正しいと思うよ。どう考えても、真弥ちゃん達から見れば俺は不審人物なんだから」
自分の言動を思い返してみると余計にそう感じてしまう。
そもそも穹路自身も自分の状態を不審に思っているのだ。
赤の他人である二人の不審が穹路よりも遥かに大きいことは容易く想像できる。
「うーん、でも、そう言うお兄ちゃんなら大丈夫だよ。きっと」
しかし、ニッコリと笑ってそう言う真弥はまず相手を信じてみるタイプらしく、彼女に関してはその想像は外れのようだ。
「それにお姉ちゃんだって、最低限それは感じ取ったから一人で行った訳だし」
「そうかな? 何だか凄く警戒されてたみたいだったけど」
「あれは緊張してただけだよ。あ、でも、それは警戒とも言うのかな。お姉ちゃん、人見知りが結構激しいから。でも、本気で警戒してたら真っ先に家から追い出すだろうし、まだ怪しく思ってたら多分三人一緒に出かけたと思うよ。監視も兼ねて」
真弥とは対照的に、螺希はまず疑って吟味するタイプのようだが、真弥の言葉からすると多少は信用してくれたらしい。
「お姉ちゃん、無愛想に見えるけど、本当はとっても優しいんだよ」
「それは、うん、分かる」
彼女達からすれば穹路など厄介者以外の何ものでもない。
家を追い出されても、施設とやらに通報されても文句は言えない。
それでも家に置いてくれて、色々よくしてくれようとさえしている。
いくらコネがあってそれが可能だとはいえ、実際にそれを行動に移せるのは螺希が優しいからに違いない。
やれるからやる、というのも存外難しいものだ。
「よかった。お姉ちゃん、よく誤解されるから」
真弥は嬉しそうに微笑んだ。
確かにあの厳しい表情と抑揚のない口調で話されたら、冷たい印象しか受けないかもしれない。実際、穹路も第一印象ではそう感じていたのだから。
恐らく螺希はただ単に感情を表現することが苦手なだけなのだろう。
去り際の一睨みを見る限り、内面では意外と感情豊かなのかもしれない。
「ね、お兄ちゃんはお姉ちゃんのこと、どう思った?」
「え?」
「お姉ちゃん、ちょっと愛想はないけど美人でしょ? 胸はわたしより小さいけど」
「そう、だね。美人だと思うよ」
そう言いながら真弥の言葉に釣られて、ついつい彼女の胸の辺りを見てしまう。
真弥のそれは外見相応ぐらいだろうが、確かに螺希よりも少しだけ大きかった。
同じぐらいの背丈だからか余計に際立っている。と言うか、螺希が絶望的にないのだ。言っては悪いが。
「えへへー、わたしは十歳だからまだまだ成長するよ。多分」
穹路の視線に気づいてか、真弥は笑顔でその胸を強調するように張って、しかし、恥じらいを隠し切れずに顔を赤らめながら言った。
「って、そうじゃなくて。お姉ちゃんのこと、好きになりそう?」
「好き、って、そりゃあ親切にされたら好ましく感じるけど」
「人間として、だけじゃなくて、異性としても、だよ」
真弥は穹路の誤魔化しに唇を尖らせながら、妙に真剣な目で見詰めてきた。
「それは……」
そんな真弥の勢いに穹路はどう答えていいものか、困ってしまった。
「さすがに会ってすぐじゃ、まだはっきりとは分からないよ」
「でも、まだってことは、可能性はあるんだよね?」
真弥は布団の上に手をついて身を乗り出すようにして尋ねてきた。
そうすると、まだ幼さは残るが螺希に似て将来は美人になることを確約された真弥の可愛らしい顔が、丁度目の前にある形になる。
その近さに何とも恥ずかしくなり、穹路は思わず目を逸らしてしまった。
「あ、ご、ごめんね」
真弥もどうやら同じように感じたらしく、慌てたように姿勢を戻した。
「えっと、お姉ちゃんって第一印象が悪いからか、十七歳なのに今まで誰ともつき合ったことがないんだ。だから、妹としてはちょっと心配で」
真弥は腕を組んで渋い顔をしながら、あんなに美人なのに、と呟いた。
「お兄ちゃん。もしお姉ちゃんを狙いたくなったら言ってね。協力してあげるから」
それから一転して意地悪な笑みを浮かべる真弥。半分ぐらい本気、残り半分は冗談で穹路が困惑しているのを見て楽しんでいるという感じだった。
そんな彼女に、突然陥ったこの状況で不安になっていた気持ちが幾らか和らぐ。
「……そうだね。そうなったら、お願いしようか」
だから、ちょっとしたお返しのつもりで、穹路もまた冗談めかして言った。
すると、真弥は一瞬きょとんとしてから、その言葉についても半分本気、半分冗談で受け取ったように嬉しそうに微笑んだ。
それから二人一緒に笑い合う。
「よかった。お兄ちゃん、笑ってくれて。……急にこんなことになって不安だったかもしれないけど、わたしとお姉ちゃんが傍にいるから安心してね」
心が温かくなるような無邪気な笑顔を向けてくれる真弥。
そんな彼女の言動に、今の会話は自分を元気づけるためのものだったのかもしれない、と穹路は思った。
「ありがとう。真弥ちゃん」
だから、少し気安過ぎる気もしたが、感謝の意を込めて真弥の頭を軽く撫でる。
真弥は嫌がる様子もなく、くすぐったそうに笑っていた。
こんな状況では、一人で変に足掻いていても、ただ塞ぎ込んでいても何かが解決する訳ではない。それなら、むしろ笑い飛ばしてやるぐらいの方が遥かにいい。
「じゃ、元気になったところで一緒に遊ぼっ! お兄ちゃん、ほら、立って!」
そして、真弥に引っ張られるままに穹路は立ち上がり、彼女に手を引かれながら部屋を出た。繋いだ彼女の手は太陽のような温かさを湛えていた。
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