第七〇話:対決! 俺の許嫁VSガチホモ四天王

 俺たちはガチホモ城にある淫猥な造形の塔の中を上がっていく。

 螺旋のような階段。


『塔を登って敵を倒していくって、ジャ〇プの漫画みたいよね!』


『うーん、元ネタはブルスリーの死亡遊戯じゃないかな』


 もう結構な高さを登っていた。

 

「ワンワン! ワンワン!(あれが、第一の部屋です!)」


 エロリィを背中に乗せたガチホモが吼えた。

 四つん這いで、階段を上るのって大変だと思うんだけど。

 まあ、コイツにとっては、あらゆる責め苦がご褒美なんだからどうしようもない。

 乳首にぶら下がっている大きな洗濯ばさみがプラプラ揺れている。

 首輪をされ、リードは上に乗っかったエロリィが握っているのだ。


 確かにこのガチホモ奴隷から、犬となった奴の言うとおり、階段はそこで途切れていた。

 そして固く閉じた扉が俺たちの前に存在している。


「む、つまりこの部屋に入らねば、先に進めないということか」


 確かに階段は部屋で塞がれ、他に上がっていく道はない。

 もはや、俺たちには考える余地もない。


「ぶち壊すぞ! ライサ!」


 俺は、後ろにいる緋色の髪の少女を見やった。

 待ってましたとばかり、にっ、と獰猛な笑みを浮かべる。

 やや釣り目気味の大きな瞳が赤い光を放っている。


「あはッ! ようやくあのクソ野郎のガチホモどもをぶち殺せる! 殺してやる。ぶち殺してやる!」


 ずいっとライサが前に出た。

 

「死に腐れ! このド外道どもがぁぁ! クソがぁ! ぶち殺すぞ! 死ね!」


 叫びをあげながら、扉に右足で蹴りをぶち込む。

 唸りを上げた右足が分厚い扉に激突する。


「バガァァァン!!」という破壊音と粉じんが舞った。


 分厚そうな木材を重ねて作った扉が木端微塵に吹っ飛ぶ。

 まあ、ライサの蹴りなら当たり前のことだった。

 障害物の排除には、これが一番手っ取り早い。

 

 長い髪を揺らしライサが部屋の中に飛び込む。

 続いて俺も行く。気配を消したままのシャラート。そして、ガチホモ犬から飛び降りたエロリィも続いた。


「もうね! もう少し丁寧に開けないと、埃がたって煙いのよ!」

 

 エロリィが顔をしかめていった。確かに粉じんが、結構舞っている。


「うっせーな! じゃあ、てめぇやれよ。このクソロリ姫!」


「黙らないと、アンタ殺すわよ!」


 ライサとエロリィの言い争いの声を遮り何かが飛んだ。

 

 シュン――


 空気を切り裂く音。聞きなれた音だ。シャラートのチャクラムが飛ぶ音だ。

 すっと、シャラートは俺の前に音もなく立った。

 背後から手を回し、おっぱいをモミモミするのに、最適なポジションだった。

 ただ、いまここで、それはできない。

 至高のエロいおっぱいだが、俺専用なので、ガツガツと揉みまくる必要もない。


「敵がいます―― アイン、気を付けて」


 シャラートのいつになく緊張した声だった。

 

「ほう…… ここまで来たか。パンゲアの旧人類どもが」


 徐々に晴れてくる粉じんの中、巨大な人影が確認できた。

 奴等だ。ガチホモ四天王だ。


「ああ、あ、あ、あ、あ、こ、ここまでくるのわ、すごく強いことだと思うのだぁ!! だから、殺した方がいいと思うのだぁ。そーすると、王様に褒められます。だから気持ちいいことしてもらえるのだぁ! あがががあああああああかかああ!! 精進なのでーす!!」


 ヌルリと粉じんの中から巨体が姿を現した。

 巨体揃いの中でも、ひときわ馬鹿でかい図体を持っている奴だ。

 しかも、ふんどしの間からは相変わらず、大量の白濁液を垂れ流していいる。


「チャクラムが……」

 

 俺は息を飲むように言った。

 シャラートの鋭い刃ともいえるチャクラム。

 それは、この巨体の右肩と、首に食い込んでいた。

 しかし、それはチャクラムが、コイツの肉を切断したわけじゃなかった。


 不意にチャクラムが落ちていく。カランカランと乾いた音をたて、床を転がっていく。


「痛いのは嫌なのだ。だから、筋肉に力をいれると、精進なので、刃物は通らないのだ。精進、精進、精進の日々なのだぁ!!」

 

 コイツの分厚い筋肉がシャラートのチャクラムを止めてしまったのだ。

 よだれを垂らしながら、ガクガクと痙攣して、巨大なガチホモが言った。


 傷を負っていないわけではない。

 うっすらと、皮膚が切れて、血が流れているがそれだけだ。かすり傷のようなものだった。

 ぶっとい指で、ポリポリとその傷跡をかいている。


「どうするのだ? アナギワ・テイソウタイ。木冬木風にやらせるのか?」


 プリプリとした尻のガチホモが言った。ふんどしから見える尻が艶々している上にプリプリなのだ。

 ふんどしの脇からは剣の柄のよなものが突き出ている。

 確か、「魔剣アナル・ビーズ」とかいう狂った武器をふんどしの中に仕込んでいるのだ。

 なにを鞘にして、刀身をどこに入れているのか考えたくもない。


「ふむ、まずは、そこの可愛い男の子を、王の前に連れて行くこと。王のハーレムに加えられるレベルだろう」


 デンマと掃除機を握りしめたふんどしのガチホモが言った。どうも、コイツが四天王のリーダー格のように見える。


「まあ、王がいらないと言ったら、俺がもらいますか」


 ふんどしの隙間からホースを伸ばしたガチホモが言った。アナール・ドゥーンというガチホモだ。

 このホースが「アナル・ガン」といって直腸内に仕込んだ「アナル弾」という弾丸を発射する異常な武器なのだ。

 あらゆる意味で危険な武器でもある。


「あががががぁぁ!! そのときはぁ、じゃんけんなのだぁ! 俺もあの男の子が欲しいのだぁぁ! 精進するのだ!」


 ふんどしの隙間から大量の白濁液を垂れ流しながら、ガクガクと痙攣して、よだれを垂らした男が言った。

 ベロベロンと舌を振り回す。唾液が飛び散る。

 完全に瞳孔が開きっぱなしで、なにを考えて、なにを見ているのかすらわからない。

 ガチホモ四天王の中でも最も異様で巨大なガチホモである。


「このデカ物が!! もうね、私をけがらわしい、変な液でヌルヌルにして許さないのよ!」


 ビシッとエロリィ-が巨大なガチホモを指さした。


「ほう…… 木冬木風を指名か……」


「おもしろいな」


「うむ、いいだろう」


 デンマと掃除機を握りしめた変態ガチホモ野郎がすっと前に出てきた。

 鋼鉄製のふんどしを締めて、そこには鍵がかかっている。

 意味不明な扮装をしている。


「いいぞ、我らガチホモ四天王、1人ずつ相手をしてやる。お前たちは全員でかかって来てもよい。その間、他の3人は手を出さぬことを約束しよう」


 見下すような視線でガチホモが言った。確かアナギワ・テイソウタイとか言う奴だ。


「莫迦か! コイツら! 戦力の分散逐次投入は、下策中の下策よぉぉ!! 戦争を! 戦争の実相を! 我ら人類の文化の粋ともいえる戦争を舐め腐っている!!」

 

 エルフの千葉がキュッと鉢巻を締め直した。

 旭日模様に「大和魂」とかかれた鉢巻。こんな鉢巻しているエルフはちょっといない。


「戦力の集中による、包囲殲滅! 今、貴様らの敗北は決定したのだぁぁ! もはや、ガチホモが呼吸する場所は、地獄以外あり得ないのだぁ! キル・ザ・ガチホモ! キル・ザ・ガチホモ! キル・ザ・ガチホモ! 降伏も捕虜もない! ここにはジュネーブ条約もない! がはははは!!! いいね! 最高だ! 完全殲滅だ!」


 狂ったようなエルフの千葉の叫びが続く。まあ、千葉君の正気は俺も保障できないんだけどね。

 

「俺意外の全員で、叩きのめそう。なあ。アイン――」


 くるっと、俺の方を振り向いて、ポンと肩を叩くエルフの千葉。

 確かに、千葉にしてはいい案だとは思う。

 全員でかかって、一人づつフルボッコ。


 非常に安全で勝つ確率が高い。


「うむ、千葉よ、さすがだな。その作戦は正解だと俺も思う」


「なに言ってんの! もうね、あいつらに舐められるのよ! アイツラが1人づつ出てくるなら、こっちも1人づつなのよぉ!」


 エロリィが吼えた。怒りで碧い瞳が炎を上げているようだった。

 ゆるゆると、全身に魔力をまとい始めている。

 青白い光がゆっくりと、エロリィを包み込み、輝きを増しつつあった。


「あんた! このデカイガチホモがぁ! この禁呪の天才のプリンセス様に、白濁液をぶちまけたことを後悔させてやるのよぉ~!」


 エロリィは自分の何倍もありそうな巨体のガチホモに向き直った。

 正面から、キッ、とした視線で、ガチホモを睨み付けた。その横顔は、光をまとった北欧の妖精のようであった。

 

「あばばばばぁぁ!! 小っちゃいのをぶち殺しても、あまり精進にならないのだ! でも、やってあげてもいいのだ! あがががあ、殺すのが好きだからぁ!」


 ネバネバとした涎にまみれた口をかぱぁっと開けた。

 汲み取り便所の匂いを更に濃縮したような臭いが流れてくる。

 最悪の、ガチホモだった。

 上も下も垂れ流しのガチホモだ。

 こんな、穢れた奴とエロリィを戦わせるのは心配だ。


「あんたなんかに、アインを好きにさせないのよ!」


 人の心配している場合じゃなかった。負けたら、俺がガチホモの餌食になるのだった。

 ガンバレ! エロリィ!


「あはッ! いいね。じゃあ、私はお前だ! そのデンマでビリビリとやってくれたよな! 絶対に、ぶち殺してやる! 殺してやるからな!」


 紅い瞳から突き刺すような視線をガチホモに向けるライサ。その先にいたのは、デンマと掃除機をもった異形のガチホモ、アナギワ・テイソウタイだった。


「ふん、まあいいだろう。小娘め相手になってやろう。木冬木風が、その小さい女を殺したら、相手をしてやる」


「あはッ! バカかてめぇ? 逆だろ、この薄汚いガチホモが殺されたらだろうがぁ? このクソロリ姫が、簡単に殺せるわけねーだろ」


 普段、いがみ合ってというか、マジの殺し合いまでしている俺の許嫁。

 それだけに、相手の実力はよく知っているのだ。

 ライサは、なんだかよく分からんがエロリィの戦闘力は信用しているようだ。


「では、私はアナタですか―― 私のチャクラムを落としましたね。もう、それはさせません」


 闇の底から冷たい声が響くような感じがした。

 俺を守る様にたっていたシャラートが、「アナル・ガン」の使い手、アナール・ドゥーンに視線を送った。

 絶対零度の凍りつくような視線だった。


「その、チャクラムじゃ、俺には勝てない」


 ぎゅっとホースを握りしめ、アナール・ドゥーンが言った。その顔にはすでに勝ち誇ったような笑みさえ浮かんでいる。


「ん、じゃあ…… 俺は誰だい? 誰を相手にすればいい?」


 魔剣アナル・ビーズに使い手、ホモ・リンゴという奴だ。

 リンゴのような大きさの丸い弾の連なった剣を使う。

 もう、剣と言っていいのか、ムチと言っていいのか分からん武器だ。

 プリプリとした尻を震わせている。なんであなに、プリプリしているのか、マジで気持ちが悪い。


「ああ、それは、ロリ姫でいいんじゃないでしょうか。それで3対3になります」


 シャラートがふっ、と口元に笑みを浮かべて言った。

 氷で出来た刃が笑ったような感じだ。


「はぁ!? アンタね、なに言ってんの? 私の相手は――」


「あがががああばばああああああああああああああああああ!!! 苦しいのだ! 苦しいのだ! 精進できないのだぁぁ!! なんだか分からないけど! 苦しいののだぁぁぁ!!」


 巨体のガチホモが崩れ落ちた。その場でガクガクと痙攣を始めた。

 見ている内に、耳、目、鼻、口とありとあらゆるところから、ドクドクト血が流れ出していた。

 フンドシから流れ出している白濁液にも、血が混じりだした。

 まるで、イチゴミルクのような色になってきた。しばらくいちごミルクは飲めない。まあ、異世界にそんなものはないのでいいんだが。


「がななあああぁああ!! ぐるじいいいい!! 精進がぁぁあ! 精進してもくるじぃぃ!!」


 やがて、激しいい痙攣とともに、高い絶叫を上げた。まさに、断末魔の叫びというやつだ。

 そして、そのガチホモは動かなくなった。

 木冬木風が完全に活動を停止していた。生命体としての。


「マンドラゴアの毒です―― かすり傷でも死にます」


 シャラートは暗黒の笑みを浮かべ、静かにチャクラムを構えた。

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