第三一話:許嫁エッチ拡散制限条約
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ~ 気持ちいい~」
熱い風呂だった。
おそらく42度以上あるだろう。
異世界で生まれ育った俺の実家の風呂は温かった。
温室サウナと温水プール程度の温度の湯船の組み合わせだった。
体をキレイにするという目的は達成できたが、湯船につかっていい気分になることはなかった。
その点、この宿の風呂はよかった。日本の風呂に近い。
木製の湯船に、熱いお湯。
木の香りも凄くいい感じだ。
そして、俺の許嫁たちが一緒に湯船に浸かっている。
湯船は普通の銭湯くらいだろうか。十分な大きさがある。深さもあった。
エロリィがその小さい体でチョコンと俺の伸ばした足の上に座っている。
小さな体なので、それで丁度肩くらいまでつかることになる。
北欧の妖精がの背中が、俺のお腹と胸に密着する。可愛らしい。
「なんか、コツコツ当たってるのよ~ アイン?」
金色のまつ毛を沈み込ませて、俺を見つめる碧い瞳。幼い体に、似合わぬ妖艶な雰囲気な眼差しだった。
いつもはツインテールの髪の毛が、解かれ濡れた髪が頬に貼りついている。
「ねえ、アイン、もう一回、チュウしたい~」
すっと手を伸ばし、俺の首に手をかけてきた。
後ろ向きに首をひねってくる。なんというか、見た目通りの年齢ではないのではないかと思わせる仕草だった。
エロ過ぎる。
「おい! これで2回目だから、今日はこれであと1回になるぞ、いいのか?」
「いいのよぉ! したくなったらするのよ」
ライサの言葉に反応して、エロリィがからかうように言った。
ちょっとまて、なんだそれ?
あと1回ってなんだ?
そんな疑問に関係なく、エロリィが俺の唇を奪ってきた。
ニュルンと舌が侵入して、前歯をコンコンする。
俺が前歯を開けるとニュルニュルとは入ってきて、俺の舌を良いように蹂躙する。
舌で鶴のワイヤーアートを作るテクニックで、俺の脳が蕩けそうになってくる。
十分に、ベロチュウを堪能したエロリィはチュポンと唇を離した。
「あああん、アインとのベロチュウは気持ちいのよぉぉ」
うっとりした目で俺を見つめる。もはや、幼女の姿をしたビッチ。だが、それがいい。
しかし、チュウの回数に制限があるのか? なんだそれ。
「なあ、ライサ」
「あ゛~ なーに? アイン」
ライサは、頭の上に畳んだタオルをのせてスラリとした肢体を湯船に揺蕩(たゆた)えている。
もはや、一流絵師の描いたエロ漫画の表紙レベルだった。3次元を超えている。
「チュウするのに回数制限あるのか?」
「あるよ。決めたから」
「決めたの?」
「そうだ。アイン、婚約者間の無秩序な争いを避けるため、エッチなことに関する『許嫁エッチ拡散制限条約』を締結した――」
エルフの千葉が会話に割り込んできた。
「なんだそれ?」
「ああ、それはだな――」
エルフだった千葉が説明をした。要するにさっきの作戦会議というのはこのことだったのだ。俺を平等に共有するための条約だった。
俺が誰かを選ぶのは仕方ない。ただ、それまでは全員が平等に俺を共有してエッチなことをする回数も全部平等。その回数を厳密に制限するというものだった。
無制限、無軌道なエッチな行動拡散を抑制し、健全な婚約者として節度を持って行動するための条約だという。意味不明だ。
「キスが1日3回なのか――」
「ああ、そうだ」
「その理由はなんだ?」
「お目覚めのチュウ。お風呂のチュウ。寝るときのチュウだ――」
「少なくないか?」
「ああん、天成君、先生が大人の女として言わせてもらうわ、女の人はチュウをいっぱいしてほしいの。ううん、これは、先生がそうして欲しいっていうわけじゃないの。愛して欲しいの、その実感が欲しいのよ、うふ(天成君、そんなに若い娘がいいのかしら…… ああん、私も、私だって、まだ負けないわ、どうしたらいいのかしら)」
先生は婚約者じゃないし、部外者だから。もう、部外者というか、人類以外だから。
凶悪なほど巨大なおっぱいが湯船に浮かんでいる。あの足に感じた柔らかな感触が蘇る。ちょっと、手でモミモミしたいなと思った。
「アイン―― さっきから何を見ているのですか?」
シャラートがお風呂に氷をぶち込んだような視線で見た。
「いいえ、おっぱいはシャラートがいいです! お姉様が最強です」
「なら良いのです」
「なんだよぉぉ~ 私のおっぱいじゃだめか?」
ライサがキュッと俺に密着。おっぱいをスリスリしてきた。
ボリュームでは、シャラートに劣るが、十分に魅力的だ。
細い腰から流れるような胸のラインは絶品だった。
「ああああ~ いいです。これもいい」
「おっぱい、スリスリとモミモミは同じものとしてカウントされますが――」
「ああああ! 今の無しぃぃ! 部屋に戻って楽しもうと思ってたからぁぁ」
「えー、ライサさんのおっぱいモミモミが後1回ですね」
「はぁ、なんだよぉぉ~ んじゃ、ここで楽しむからいいよ」
ライサがふてくされたように言ったが、俺をギュッと抱きしめる。
さらにおっぱいが密着する。
「なあ、ここから、アインにモミモミされるのは、カウントされるのか」
「ギュッと押し付けた時点で1回です。さらにモミモミするともう、1回、合計2回で今日は終了です」
エアメガネをくいっと持ち上げてエルフとなった千葉が言った。
千葉よ、エルフとなった千葉よ。そんな体になって、お前は、なにをやっているのだ?
「厳しいなぁ~、ま、あと1回あるからいいかぁ」
俺に抱き着いたまま、ライサは言った。
小麦色の肌はツルツルでお湯をぴんぴんに弾いていた。
「まて、おっぱいモミモミの制限回数は?」
「うむ、1日3回だ。ちなみに、私にも適用されるので、私のおっぱいを揉むときも気を付けてほしい」
「もまねーよ。千葉のおっぱいは揉まないから」
「いや、遠慮せんでいいぞ。親友とはいえ、私も許嫁となった身だからな」
「やだよ」
「アイン――」
「なんだ?」
「俺は、もう日本には帰れん」
「まあ…… そうだろうな」
「ああん、千葉君、そんな弱気になっちゃだめよ。あきらめちゃダメ、うふ」
先生はもっと帰れないから。100パーダメだから。あきらめた方がいいから。
「だから、俺はお前しかいないのだ―― お前とともに、この世界で生きていく。その覚悟ができている」
「千葉……」
「なあ、俺のおっぱいを揉んでくれないか? 吸ってもいい――」
いつの間にか、千葉の一人称が「私」から「俺」になっていた。
それは、作り事ではない本音を語っていることを意味していたのかもしれない。
『アイン×千葉ね! 今、付いているかしら?』
『腐った精霊様は静かにしてください』
『腐ってないわ! 全方位対応なの』
可憐と言っていいエルフが俺を見つめた。
エメラルドグリーンの瞳。そして、同系色の髪の毛。
濡れた髪の毛が細い体にくっついている。
中身が千葉であることを考えたとしても美しく幻想的だった。
「波動関数は収束しているのか?」
「ちょっと触ってみる」
「触るのも観測なのか?」
「ああ、それも観測だ」
要するに見るだけではなく、そこがどうなっているか?
確認する全ての行為によって波動関数の収束が起こる。
「ああああん、いいい~」
ビクンビクンと千葉が体を震わせる。
「どうした?」
「ああ、アイン、今は女だな。俺が観測し続けている間はぁぁ、はぁ…… 女だぁ… あん、いい……」
「なんだよ、その声」
「アイン、いいぞ。女の体はすごくいい…… はんッ!」
ビクン、ビクンと痙攣するエルフの肢体。だが、中身は男子高校生、出席番号18番の千葉君だ。
俺はソロプレイを始めた千葉を無視した。
『チッ! 使えないわね!』
千葉のソロプレイ開始に精霊様が怒りをあらわにした。
「なあ、シャラート」
「なんですか?」
「条約のエッチな行為の回数は見直した方がいいと思うな」
「アインが大丈夫なら、それでいいです」
「じゃあ、キスは最大10回、おっぱい関係は全部合わせて30回が妥当だろう」
「あはッ! アインはおっぱい好きだな」
「ああ、好きだな。おっぱいの嫌いな男子はいないだろう」
湯船をかき分け、シャラートが近づいてきた。
俺の隣で密着する。
濡れた髪の毛の匂いがすごくいい。ああ、このお姉様は素晴らしい。
「じゃあ―― これは…… どうしますか?」
そういって、シャラートは俺の波動関数が常に収束している場所に指を這わせてきた。
「あうぅぅ…… それは……」
「ああん、それは、それは1日1回って…… はぁ、はぁ」
ソロプレイをしながら千葉が答える。エルフの美しい声が淫靡な色を帯びていた。
俺は痺れた頭で考える。まず、なにもって1回の終了とするかだ。
手が離れたらか?
それもとも、賢者になった時点で1回か?
どうなんだろうか? あああ…… 気持ちいい。
やばい、お風呂で賢者様になってしまいそうだ。
賢者だとすると、1人1回で1日3回だ。これはどうか…… 微妙なラインだ。
くぉぉぉ……
は、波動関数がぁぁっぁぁ
1日2回とすると、一気に1日6回となる。
これは厳しい。思春期真っ只中の俺の若い肉体でもかなりきつい。
妥当か……
「ああああ、それは1日1回でぇぇぇぇ……」
俺の声が風呂場に響いた。
◇◇◇◇◇◇
そして、風呂場から俺たちは部屋の戻った。
池内先生も、この部屋に泊まるようだ。
俺1人に、婚約者が4人で腹違いの姉と同級生を含む。そして許嫁ではないが担任教師がなぜかいる。
性別とか人類かどうかを無視すれば、立派なハーレムだった。
シャラートは、俺の腹違いの姉で、黒髪メガネ娘で、クールビューティの巨乳。
ライサは、緋色の髪のパワフルな、超絶美少女、釣り目気味のルビーの大きな瞳。
エロリィは、金髪ツインテールで、小さくて可愛いし、テクが凄い。
千葉はエルフで、性別は量子力学的に揺らいでいる。測定すると決まる。
池内真央先生は、魔族と混ざって半分人間を辞めている。
俺の異世界生活は、結構順調なのか、どうなのか……
判断に悩むところだった。
部屋にはすでに布団が敷いてあった。
ベッドではなく、布団を引いて寝る習慣の場所のようだ。
きれいな布団だったので、悪くない。
部屋は魔法の炎がランプの中でゆらゆら揺れている。
その影と光がなんともいえず、妖しげな雰囲気を演出していた。
「さあ、アイン、こっちに来て、一緒に寝ましょう」
横になったシャラートが布団を開けて、俺を誘った。
俺は逆らうことができないので、フラフラとその布団の中に入ったのであった。
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