第三〇話:シュレディンガーの〇〇コ
「ああん、ダメなのよ。天成君。先生にも、先生にも洗って欲しいっていうのね(ああん、天成君、なんでそんな目で先生を見るの、うふ。私は教師よ。だめ、そんな目で見られると、教師から牝になってしまうの。そう、淫らなメスに――)」
俺はそんな目で先生みてなかった。
ぼーっと立っているから、気になったのでみていただけだった。
池内真央先生は、スルリと体に巻いてあったバスタオルを脱ぐと、俺に巨大な胸をおしつけてきた。おっぱい。でっかいおっぱい。
両手がふさがっているのを見ると足を持ち上げた。
俺の足を自分のおっぱいにめり込ませた。柔らかくてズブズブしずむ。
足から尾てい骨にかけて、快感の電流が走って行く。
クリクリとした乳首を足先でもてあそぶようにして俺の足を操る。
俺の足の裏で、自分の体を洗いだした。まずは、おっぱい。
シャラートのおっぱいもスイカレベルだが、池内先生のはさらに大きい。弾力では一歩譲るが、柔らかさでは確実に上だった。
特上のホイップクリームに足を突っ込んだみたいだ。ズブズブを沈んでいく。
「これも、生徒とのコミュニケーションなの、うふ。天成君のこと、もっと知っておかなくちゃいけないわ。そうよ、これは担任教師としての役割なの(ああ、私のおっぱいの上を天成君の足が…… だめ、だめよ。こんなのダメ。でも、どうなの、先生の体どうかしら? ああん、天成君、もっと先生の体を洗ってもいいのよ、うふ)」
そんな、担任教師は「フ〇ンス書院」か「マ〇ンナメイト文庫」の中にしかない。少なくとも、日本には。
という訳で、俺たちは体の洗いっこをした。
お風呂だから当然だった。
湯船にいはいる前にキレイに体を洗うことは常識だ。
俺の体をシャラートが洗う。
彼女の指がゆるゆると俺の体の上を這っていく。
俺も、右手でシャラートの体のある部分を入念に洗ってあげる。
俺の体をライサが洗う。
彼女の指がちょっと強引な力で俺の体の上を這う。
俺も、左手でライサの体を洗ってあげる。キレイキレイにする。
俺の体をエロリィが洗う。
彼女の小っちゃく可愛い体が俺の背中に密着。
肌を合わせての洗いっこで、キレイキレイになる。合理的だ。
そして、池内先生は俺の足をとって、自分の体を洗っている。
十分にキレイなったところで、お湯で体を流す。
うむ、お風呂は気持ちいい。大好き。
「千葉、キレイにしているか?」
「ああ――」
エルフとなった千葉は、自分で自分の体を洗っていた。
一人で体を洗っているエルフというのがなぜかさびしげに見えた。
俺は、4人と洗いっこした。
これは、不平等ではないかと思った。
かといって、シャラート、ライサ、エロリィに千葉の体を洗ってくれとは頼めない。
エルフとなったといっても中身は男子高校生の千葉君だ。出席番号18番なのだ。
池内先生と洗いっこしているとこを見たいという気持ちはないではなかった。
人外の体の洗いっこだ。これはもう、異世界のファンタジー世界の入浴シーンでしかあり得ない。
俺は、体を洗っている千葉を見た。
細い背中だった。緑の髪が濡れて、貼りついている。
「俺が洗ってやろうか」
ほろりと、思わぬ言葉が俺の口からこぼれた。
「アイン…… いや…… 天成」
男同士で体を流し合うというのは有だ。
しかも、コイツは親友なのだ。
体はエルフだし。楽しいかもしれない。
よく考えてみると、一緒に体を洗いっこするのは楽しいのではないかと思った。
中身は千葉だけど、心のスイッチを切って、見た目だけに専念すれば、かなり楽しいような気がしてきた。
なんか、踏み越えちゃいけない、ラインを超えてしまうような気もしたが、お風呂が気持ちいので、どうでもいい感じだった。
気持ちいことは素晴らしい。
『いよいよ、来たわね』
俺の脳内でサラームもワクワクしている。
「待つのよ、アイン」
「ん、エロリィか。なんだ?」
すっとエロリィが俺の前に立った。
金髪ツインテールではなく、今は金髪の長い髪になっている。
お風呂に入るので、髪を解いているのだ。
「下僕の体は私が洗ってやるのよ!」
バーンとエロリィが言った。
両手に植物繊維性のタワシを持っていた。
ダートリンク家のお風呂でも使っていたのと同じ種類のものだった。ヘチマみたいなものだ。
「エロリィちゃんが洗ってくれるですとぉぉ!」
叫ぶ千葉!
そして、金髪碧眼、北欧の妖精と緑の髪のエルフが洗いっこすることになった。
俺は見学する。特等席だ。
タワシを持って、トコトコとエロリィが千葉の前に進んだ。
そして、じっと視線を落とした。
エロリィと同じものがついているんだから見てもしょうがないはずだが……
じっと見つめるエロリィ。
「なんで、エルフの女は、アインと同じものがついてるの?」
「なんだとぉぉぉ!!!」
俺の叫びが浴場の中をワンワンと反響する。
「あはッ! ついてるな! なんだよ、男だったのか?」
「付いてますね。でも、アインの方が可愛いです」
「ああん、千葉君ってやっぱり男の子なのね、うふ。とても元気だわ」
ライサ、シャラート、池内先生が前に回って確認した。
俺はその場でプルプル震えていた。
確認なんてできなかった。
美しいエルフの女の子。まあ、中身は千葉だとしてもだ。
確か、胸は膨らんでいたはずだ。体のラインも男じゃない。
ああ、エルフだから、男もおっぱいあるのか? もう、よく分からん。
「千葉! お前、女になったんじゃないのか?」
「どーですかな」
そう言うと千葉は俺に背中を向けてすっと立ち上がった。
緑の髪が体に貼りついている。
くるっと俺の方にターンした。
「無いな……」
無かった。男であることを証明する物はなかった。
ガラス細工ような細く繊細な体のラインをみせるエルフのボディ。
その胸は決して大きくはないが、美しい双丘のふくらみがあった。
そして、股間はない。いや、無いのがこの場合正しいのだが……
「なんでなのよ! あったのよ! ちゃんとあったのよ!」
そう言うとエロリィが前に回ってきた。
「な、ないわね…… アンタ、いったい?」
碧い眼を見開いて、エルフとなった千葉を見た。
シャラート、ライサ、池内先生も前に回ってじっくりと、舐めるように観察している。
しかし、そこには、無かった。存在しなかった。
「最初に気づいたのは、トイレだった……」
遠くを見つめるエメラルドグリーンの瞳。
「オシッコの方法が違う…… 女子と男子ではオシッコの方法が違う。アイン知っているか?」
「お、おう、知ってるぞ……」
「しかしだ。俺はしばらく、男と同じようにオシッコをしていたのだ」
「なんだと!!」
それは衝撃的な告白だった。
現に今の千葉にはその、オシッコをするための器官がない。
いや、正確にはあるのだろうが、男用の物が無いのだ。
どうやって、男のようにオシッコをするというのだ?
「あったのだよ。私には立ってオシッコをするための器官があった――」
美しい、旋律のような言葉で告白を続けるエルフだった。
千葉が優雅な動きで自分の股間を隠した。
繊細な指が完全にその場所を覆い隠したのだった。
すっと、その指が離れる。特に変化はなかった。
「ふむ―― 観測者の意識が影響する可能性もあるか……」
エルフとなった千葉は思案気にひとり語ちる。
そして、エルフとなった千葉は、「ふん、ふん、ふん」と言いながら、手で股間を隠したり、出したりした。
なにをやっているのか?
唐突だった。
「なんだそれ!! あるじゃねーか!」
「ああ! それ、さっきのよぉぉ!」
「あはッ! どうなってんだ?」
「ア、アインの方が可愛いです……」
「ああん、千葉君って立派だわ、うふ」
それが突然股間に出現した。何が何だかわからないが、本当に分けがわからない。
「俺は、この現象を、トイレで何回も経験した。そして俺は原因を考えたのだ――」
ぐっと手を握りこみ、エルフとなった千葉は語った。
「天成、『シュレディンガーの猫』を知っているか?」
「おお、知っているが…… それが?」
『とある〇術の禁〇目録で、超能力の説明に使っていたわね。H〇LLS〇NGでは、ネコ耳准尉がいたわ。あとは……』
俺の脳内でサラームが2ダースぐらいの作品名を上げていた。確かに多いな。
みんな大好きだな。しかし、粉じん爆発とかと同じ定番なんだろうな、うん。
量子力学に興味はなくとも、アニメ、ラノベではお馴染みのものだ。俺にも分かる。
しかし、漫画とかラノベを描く奴はどうして、量子力学が好きなのか、お前ら文系だよな?
「そもそも『シュレディンガーの猫』とは、量子力学の矛盾を突いた命題なのだ。これは否定派の出したパラドックスだったのだよ」
「ほう―― で?」
「うむ、この思考実験では、ネコは箱を開けるまで、生きている状態と死んでいる状態が重なり合っている。つまり、同時に死んでおり、生きている。それは確率的にまじりあっている」
「だから?」
「俺の〇〇コも同じだ。観測される前のチ〇〇は「存在する」と「存在しない」の状態が重なり合っている」
「なるほど」
「そして、観測することにより、波動関数が収束する。そこで、どちらかの結果がでるのだ。存在するか、しないのか――」
「なんで、そんなになった?」
もう、俺は説明に飽きてきた。なんか、千葉君の話は難しいんだよね。
「おそらくは、完全な変身がなされる前に、俺の体が繭から出たせいではないかと思う。あの呪いは、生物的なものではなく、可能性という量子的な呪いでは無かったのかと今は思っている。多層次元。俺がエルフである可能性をここに現出させたものが、あの呪いの正体だ」
「な、なんだってー」
一応、驚いたふりをする俺。俺もニート時代から成長し、空気を読めるようになってきたのだった。
「あー、では説明は終わりましたので、湯船に入りましょう。冷えてしまいます」
シャラートは、そう言うと湯船に足をいれた。
「さあ、アインも一緒につかりましょう――」
「はい! お姉様!」
俺は即座に湯船に飛びこんだ。
まあ、千葉君の股間の問題は、めんどくさいので、後で考えようと思った。
今は、湯船に入って楽しくやりたかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます