第11話 ともだち復活?
体育大会以後、ヘレナはあげはの所へ来るようになった。一歩一歩山に登るように、ヘレナは気遣いながらあげはに話しかけた。
「あげはー、今日の体育は出るの?見学?」
「そら見学や。体操とかできへんねん。左足でバランスとられへんからこけてしまう」
「あたしsupportするよ」
「いや、跳び箱とかちょっと怖いし。ぶつかったら怪我しそうやし」
「うーん」
「ヘレナは体育得意やから判らへんと思うけど、ウチどんくさいから」
「可愛い思うけどな」
「授業やから可愛いとか関係ないやろ」
見学しているあげはをも、ヘレナは気遣った。
「今の、上手かったやろ」
「凄いなー、跳び箱8段飛べるってヘレナだけやん。夏芽なんか5段で苦労してる」
並んでいた夏芽もしゃしゃり出る。
「私は上品に育ってるからさ、脚開いて跳ぶなんて恥ずかしいこと、出来ませんことよ」
「夏芽、教室で座ってるとき結構脚、開いてるやん」
「男子へのサービスよ」
「誰も見てへんけどな」
二人のやりとりにヘレナはクスッと笑う。夏芽が忌々しそうな目でヘレナを見る。
「普通、天は
「神様、ウチの分をヘレナに分けてしもたんや」
ボソッと呟いたあげはを、ヘレナは伺うように見た。
『あげは、昔のこと言うてる…。きっと足のことなんや。忘れてへんのや』
心の瞼を閉じてヘレナは踏切台に向かって走った。怯えてもあかん。少しずつ積み重ねよう。
別の日の朝、ヘレナは積極的に声を掛ける。
「おはよう、あげは。髪切った? 似合ってる」
「そーお?暑いから短くしたら、なんか小学生みたいやねん。ちょっと恥ずかしい」
「そんな事ないよ。activeに見える」
「そーかなー」
あげはは小さく照れた。ちょっとはにかんだほっぺ。ヘレナは思い出していた。この表情も変わらへん。
ん?ヘレナは重々しい視線を感じた。一瞬で切れた視線の先には、
「小山さんもあげはの髪型、似合うと思うやろ?」
「そう?誉め過ぎ。あげは、ちょっとヘアブラシ貸して」
夏芽はヘレナを見ようともせずに答えた。あげははリュックからポーチを出して、ブラシを夏芽に渡す。
「夏芽、
「私は誰かとは違ってサラサラ金髪じゃないから、しょっちゅうブラッシングしないと駄目なのよ」
小さな棘を感じたヘレナは、あげはに小さく手を振って自席に戻る。小山さん、寝起き悪いんかな。まあええか、あげはは特に変やなかったし、後で今日一緒に帰ろうって誘ってみよ。
その日の昼休み、ヘレナはあげはを誘うため、お弁当を持って、あげはの席にやって来た。丁度あげはがお弁当を開けたところだ。その日のお弁当はロールパンを使ったBLTサンドだった。ヘレナは目を輝かせる。
「Oh!Looks Delicious!」
「へへ、ウチ、結構パン好きやねん」
またあげはが少し照れたところに、後ろから夏芽が声を掛けた。
「あげは、ちょっと外、付き合って。外で食べよ」
「えー、開けたとこやのに」
「いいじゃん、また蓋すれば」
「夏芽、どこ行くのん?」
「行けば判るよ、急いで!」
「しゃーないなあ、ごめんなヘレナ」
お弁当を持ったまま残されたヘレナには戸惑いが残った。小山さん、まだ機嫌悪いんかな。せやけど、あげはは大丈夫そうやった。もう普通や。普通に喋れる、友だちになれる…。せやけど、一緒に帰るのは今度にしよ。
「ヘレナー、一緒に食べよう!」
「ヘレナ!今日はこっちでしょ?」
お弁当を持って席に戻りかけたヘレナには他の女子からたくさん声がかかった。
「えー、どうしよ。ほんならその間に座るー」
ちらっと教室の外に目をやりながら、ヘレナは一旦胸をなでおろした。
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