恋をするレベルに達していないのに好きになっていいのか
黒田寛実
第1話
晴れた日だが、日差しはちょうど良い。雲も適度にかかっている。教室は、昼休みの最中で、人がまばらだった。
そんな中でも、僕の心は晴れなかった。
「不安だ...。」
そう呟いてしまう。誰か友達でも話しかけてきてくれないか。この不安、怖さが紛れるのに。でも来ない。一応仲良くしている人はいるはずなのに。向こうに友達のはずの男子がいるが、他の友達と楽しそうに話していて、こっちに寄ってくる気配はない。......一番の友達ではないからなあ。彼とは趣味の話はするが、他愛のない会話はしない。だから今は話せるタイミングではない。
この不安はどうしたらいいのだろう。宿題の提出が一週間後に迫っているのだ。調べ物をして、自分の意見をポスターに書く、という宿題だ。いい加減なことはしたくない。ネットの記事だけで書くのも手抜きな気がする。図書館で信用できる本を探してそれを使いたい。文章も主題と結論がはっきりしていないと。文体にも気をつけないと。そんなことを考えていると、なかなか進まない。部活もある中で、このままではまずい。
「あれ、昼練行かないの?」
突然、部活が同じで、クラスも同じの古田に話しかけられて我に返った。
「机に座ってボーっとしてるね。暇なら昼練行こうよ。」
僕の所属している吹奏楽部は、別に強豪ではない。しかし、楽器は「一日休むと、取り戻すのに三日かかる」などと言われているので、それを信じる僕らの吹奏楽部は練習日、練習時間が多い。昼休みは自由参加だが、やる気がある古田のような部員は、毎日行っている。
「いや、調べ学習の宿題、あったじゃん。それが心配で、考えてた。これから少しやろうかな、と。」
「あれ一週間後の提出だぞ!?まだ余裕あるじゃん。前日に徹夜すればなんとかなるでしょ。それより練習行こうよ。演奏会近いし。」
彼の言うことは正しいかもしれない。だが、
「演奏会は二週間後なんだが...。」
「いや、すぐだよ。まだ満足に全通しできてないし、このままだと間に合わなくなっちゃうよ。」
ああ、伝わらないか。
「分かった、行く。」
僕は席を立って、古田と共に部室へ向かう。
そうじゃない。そうじゃないんだ。どうして基準が変わる。勉強は軽んじられるのか。どうしてそんなに宿題には楽観的なんだ。割り切れない思いだった。
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