第5話 ミモザ先生


「……ということで殿下、まずは教師陣に探りを入れたいのです。教師陣なら誰が書いてそうだと思いますか?」


「妥当に考えると古文解析の先生方だろうか……?」


「いえ、そのようなことはありません、有り得ません!」


「何故そう言いきれる?」


あら、珍しい。殿下のムッとした顔……意外に絵になりますね。性格があれなのでキュンとは全くしませんが……これがもしノア様だったら……


「ルシア、聞こえてるのか?」


「ああ、申し訳ありません……妄想に浸っていました。なぜかと言うとあのおっさ……んんっ……あのダンディな叔父様方に繊細で純情乙女心がかけるとでも?」


殿下が呆れたような顔でこちらを見てくるが気にすることは無い。いつもの事だ。


「確かに……そうなると女性な可能性が高いな。しかも貴族や庶民の心がわかる人……あっ」


「「ミモザ先生!!!」」


ミモザ先生は商人の娘だったが伯爵との大恋愛で結ばれた庶民棟の憧れ。

その話はとても素晴らしく……聞いてるこっちがドキドキしましたわ。

確かにミモザ先生ならこの作品を作り上げることが可能でしょう……


「そうと決まれば早速行くぞ。」


「殿下、その前にそのボサボサな髪をどうにかしましょう。昼寝をしていた事がバレバレですよ?」


-----

長くて広い大広間を2人で歩く。職員棟は人気が少なくリラックスして喋れる。


「……少しはマシになったか……?」


「はい、やっと王子様に見えてきましたよ?」


「何ににえていたのだ……?」


「髪の立ち方が鳥のようでした」


「鳥……?」


どうやって寝たらあんなニワトリのような立派なたてがみになるのか。私が聞きたいところですわ。


コンコン


「ルシア・フローレンスです。ミモザ先生いらっしゃいますか?」


「はーい……ってあら、誰かと思ったら珍しい組み合わせね」


「少し先生に聞きたいことがありまして……立ち話はあれですし、カフェテリアにでも行きません?」


-----


「なるほどねぇ〜……残念だけどそれを書いているのは私ではないわね……」


「そうですか……心当たりとかも……?」


「あっ……学園専属医のユリア様はこのような系統のお話好きだったわよ!確か、ユリア様のお母様は昔は花売りの少女だったようですし……」


「可能性は大いにありますね……ありがとうございました」


「何かあったらいつでも頼って頂戴!…例えば恋のお悩みとかね?」


「機会があれば是非。」


まぁ私は推し意外は眼中にないので!相談することはなさそうですけど……そういえば殿下……全く喋りませんね……

もしかして……緊張している……?


「……ふふっ……すいません……ふふふっ」


「ルシア……何をそんなに笑っている?」


「だって殿下が緊張している姿が……ふふっ……殿下って案外人見知りなんですね」


「……」


カラン カラン


「あら、もうこんな時間なのね。貴方達、午後の授業に遅れないようにね?」


「はい!ありがとうございました!」


ユリア先生……どんな方なのか全くわからないわ……ミモザ先生にもっと聞けばよかったかしら?


「あ、殿下……明日の昼休み廊下でアリーナさんが荷物を落としますからお気をつけて。」


「……了解」


わたくしと殿下は軽く会釈をしてそれぞれの教室に向かった。

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