第41話木下忍軍

「与一郎様、いかが致しましょう」

「殿にも知らせているのだな」

「はい。蜂須賀正勝様の忍の者を通じて、御知らせしております」

「三介様を奉じて、修理進殿と上杉が手を組むように、徳川殿が画策しているとはな」

「徳川殿は、三介様に頼まれたと言う形で、甲斐と信濃に攻めこむようでございます」

「三七郎様を抑え込んだと思えば、次は三介様とはな」

「徳川様が、このまま放置していたら、筑前様に尾張を奪われると、三介様に吹き込んだそうでございます」

「三介様は、それを鵜呑みにされたのか」

「はい」

「愚かな方だ」

「はい」

「だがこのような秘事を、よく集めてきてくれた。礼を申すぞ」

「恐れ多い事でございます。全ては与一郎様の御陰でございます」

「何を言っておる。その方達の力ではないか」

「そうではございません。与一郎様が我々に領地を与えて下さったので、一時雇で徳川様に扱使われている者達が、機密を流してくれているのでございます」

「そうか。これからも木下家に仕えたいと言う忍びは、全て領地を与えて召し抱えるから、その方が差配してくれ」

「有難き幸せでございます」

「それでな」

「はい」

「その方から見て、この同盟に楔を打ち込むとしたら、どこだと思う」

「与一郎様なら既に御気付きかと思いますが、三介様と行動を供にしておられる方々は、既に三介様を見限っているようです」

「なるほど。入庵殿達を切り崩せと言うのだな」

「あの方々は、羽柴様が修理進様達を説得し、旧領を取り返す軍を起こすようにしてくれた事、忘れていないと思います」

「そうだな。だがそれよりも、このまま三介様に付いていては、上野、甲斐、信濃を取り返せないという事を、重々承知しておられるだろう」

「はい」

「三介様と一緒に尾張に逃げ帰り、徳川殿が甲斐信濃に攻め込めば、自分達の領地が取り返せないと思うだろう」

「はい」

「そこに三法師様と御次公から御誘いがあれば、喜んで殿に味方してくれるだろう」

「見事な読みでございます」

「殿ならそれくらいの事は御存知だとは思うが、念の為に手紙を書くから、その方から届けてくれ」

「私のような者が、そのような重大な手紙を、直接羽柴様に御渡ししてもいいモノでしょうか」

「重大な手紙だからこそ、その方にしか頼めないのだ」

「有難き幸せでございます」

「それとな」

「はい」

「又左衞門殿達にも使者を送っていると御知らせしてくれ」

「承りました」

 与一郎に中忍から上忍に取り立てられた藤林長門守正保、改めて心の中で忠誠を誓っていた。

他の伊賀衆・甲賀衆と共に、織田信雄と共にいる滝川一益・森長可・毛利秀頼は勿論、柴田勝家と行動を共にしている、前田利家・金森長近・不破直光・佐々成政を調略することになった。

「木下忍軍」

百地丹波・滝野吉政・小沢智仙・百田藤兵衛・町井清兵衛・町井貞直・植田光次・下柘植小猿・下柘植木猿・城戸弥左衛門・音羽半六・伊賀崎道順・藤林長門守正保・森田帯刀・福喜多将監他多数

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