第37話羽柴秀吉と蜂須賀正勝

「これで三介が死んでくれれば言う事ないのだがな」

「忍の話では、上杉が三介殿の首を狙っている」

「景勝の馬鹿にそれだけの力があるかな」

「馬鹿同士の戦いだから、どう転がるか分からん」

「問題は徳川殿だな」

「ああ、服部に集めさせた伊賀者を使い、武田の遺臣を使って甲斐信濃を狙っている」

「甲斐と信濃は難しいか」

「修理進殿と内蔵助殿を滅ぼしたら、徳川殿は上杉と結ぶかもしれん」

「そうだな。それに既に徳川殿は、北条と密約をしているな」

「忍びの調べでは、相模と伊豆で対峙しているように見せかけてはいるが、実際には何もしておらん」

「忍びの戦いで徳川殿や北条に勝てるのか」

「難しいな。俺の仲間は元々商人が本業だ。噂話を集めることは出来ても、荒事は難しい」

「となると、与一郎が召し抱えた、伊賀者と甲賀者に頼らねばならぬな」

「藤吉郎殿もその心算で、与一郎殿に伊賀を与えたのであろう」

「まあな。だがそう言う小六殿も、与一郎の将来を見込んで、娘を側室に送り込んだのだろう」

「藤吉郎殿の甥御の中では、麒麟児と言える存在だからな」

「それに与一郎の所には、小六殿の孫が三人も産まれているからな」

「有難い事よ」

「だが小六殿。与一郎の正室に子供が産まれたらどうする心算だ」

「どうもせんよ。全ては与一郎殿が考え決めることだ」

「本気か」

「藤吉郎殿こそ、羽柴家の家督はどうするのだ」

「何を言っているんだ」

「お互い長い付き合いだ。腹の底は理解している心算だぞ」

「・・・・・」

「ばれるような殺し方はするなよ」

「分かっている」

「天下を手にする前に殺すなよ」

「それも分かっている」

「儂も自分の孫が天下人になってくれるのなら、それに勝る喜びはないが、光秀のように逆臣として殺されるのは忍びない」

「そう、だな」

「それに藤吉郎殿よ」

「何だ、何が言いたい。何時までも顔を見ておらずに最後まで言え」

「藤吉郎殿に実子が産まれるかもしれぬ」

「今更か」

「だがないとも言えん」

「・・・・・」

「そんな喜ばしい事になったのに、それが原因で、藤吉郎殿と小一郎殿が争う姿など見たくない」

「そう簡単に羽柴家の後継者を決めるなと言いたいのだな」

「ぎりぎりまで秀勝殿を後継者としておけばいい」

「完全に天下を平定し、儂に子供が出来ないとはっきりするまで、秀勝を奉じ続けろと言うのだな」

「秀勝殿でも三法師様でも構わん。今回の件でもはっきりしたが、一門で争うなど愚の骨頂だ」

「そうだな。その通りだな」

「で、三介殿はどうする」

「上杉に討ってもらう」

「ならば修理進殿と内蔵助殿は小一郎殿と与一郎殿に任して、藤吉郎殿は三介殿亡き後の尾張を狙うのだな」

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