第39話 いよいよ女子会開催です。

 ミトレスは早目に着いて、あたしを手伝ってくれた。ミトレスのオレンジの髪は左右を編み込んで、後ろは垂らす。白いワンピースにデアウルフの襟の着いた、ホロヤギのコート。通常購入したら、35万テニア(1テニア=5円、日本円だと175万円位)の高級コートだが、材料は自分達で狩ってきた物を使っているので、5万テニア位で済んでいる。ワンピースは裾にフリルやレースがふんだんに使われ、見た目は夢見る乙女みたいだ。


 赤毛のアン復活だ。喋らなければね。


 ミトレスはギークとヨウク草のキッシュを作ってきてくれた。助かる!


 あたしも水色のワンピースにエリだけ白で複雑なレースが使われた、シンプルな物にした。昼間は明るいので、抑えたデザインにした。


 実はあのまゆの変化から解った事の1つに、あたしの体が太陽にあたると、魔力も蓄えられるようになったみたいなの。太陽電池みたいな感じかな。


 そして、魔力が充分蓄えられると、瞳も髪も肌も虹色に微量に発光する。元々虹色なのに、更に発光するもんだから、派手がちになり過ぎるもの。


 アミダラさんが薔薇を大量に持って来てくれたので、テーブル以外にも飾れて、華やかになった。薔薇の花は彼方あちらの世界から移植され、数を増やし独自に種を増やしていった物らしい。多分あたしに合わせて、虹色を選んでくれたみたい。ありがとう。


 ニーナさんとジェーンさんとアナスタシアさんがハーブティのセットを持ってきてくれた。皆、そんなに気を使わなくて良いのにな。


 マチルダさんは討伐で武器を破損したので、武器屋に剣を修理に出してから来るので、少し遅れるらしい。


 最後にソフィアさんとリリーアンさんが現れた。瞳の色に合わせた、ソフィアさんは青緑色のドレスに、ブルーフォックスのコート。上品な装いは流石だった。リリーアンは部族衣装のような、白い綿の胸元にスカート部分が幾何学模様織のドレスだった。元々、シャンタナよりもっと西の少数部族出身で、そこの正式な民族衣装らしい。


 まずはアルフがお茶会用に用意してくれた、アールグレイの紅茶を淹れた。やっぱり香りが凄く良い。華やかで、上品。


 ラングドシャクッキーやソフィアさんが持ってきてくれた、チョコレートを並べて出す。


 皆、ぎこちなく手にとっては上品な会話を試みていて、何だか痛々しい。何それどうしちゃったの?


 最初にアミダラさんが「無理!せっかくこのメンバーなんだからさ、普通に喋っていいよね?」と口火を切ると、皆もたまにはいいけど、長時間はダメ!と笑った。


「ソフィアさんだって、行く行くはジョージと一緒になるんだし、今からこのメンバーに慣れてもらわないとね。」とミトレス。

 ソフィアさんの顔が真っ赤になった。可憐だわ。


 ニーナさんだけは「イヤイヤ、一応、ミトレスも貴族なんだから、一通りお嬢様マナーやった方が良いよ?だって、女王様の前で緊張したんでしょ?」と言ったが、その時に女王が目に涙溜めて、笑った話をミトレスがして、エラく盛り上がった。


 ゴメン!アルフ。ここでも、ネタにされてます。暫く、笑いのツマミにされるだろうな。


「そういえば、ニーナさんてグレンさんの妹さんなのよね。グレンさん、女性だらけのチームで、問題なかった?」素朴な疑問として、気になっていたので聞いてみた。


「あ〜〜。うん。色々大変だったみたいよ?ホラ、お上品なレディ達ばかりではないしね。胃薬をよく飲んでいたかもね。」皆を見ながら、少し言いにくそうに話した。


「マチルダが揶揄からかうからよね。下着姿でウロついたり、グレンが川で汚れを落としている時に、着替えの側で戻るのを待ったり。色々やってくれたわよねぇ?」

アミダラさんがマチルダさんの顔を横目で見ながら、呆れたような顔で話した。


「可愛い坊やだからね。どんな反応するのか、気になるじゃない?固い事言うなよ。中々見れないイケメンだし、ちょっと位いいじゃない。」とマチルダさんが言うので、


「それって、酒場で若い女の子を揶揄からかう、オヤジさん達みたいよ?」


と思わずマチルダさんの肩を叩き、言ってしまった。


「え?マジか!!アレか!オッさんに文句言ってたあたしが!同じ事してたって?それは確かにイカンな。」


 そして、今後も女子会を定期的に開こうと言う話になり、サンドイッチをつまみながらリリーアンが提案した。


「次回はレッドホーンの皮が大量にあるから、全部売らないで、お財布とか小物入れとか、皆で作り合うのやらない?」


 リリーアンの出身の部族では、皮製品の加工が盛んで、部族の者であれば、其々独自の作り方を持っている。リリーアンも試したい方法があるとか。それは面白そうね。一人で作るのは抵抗があるけど、解らない時はリリーアンや皆で考えて作れるし、アルフのキャンピングカーとか、バイクとか、ジープのキーケース作ろうかな。喜んでくれるかな?



 僕達はウラヌス渓谷で何か燃やしたような跡を見つけた。ここで野営をしたのか?それにしてはお粗末だな。食べ残したエルクの肉が生焼けのまま、捨ててあった。


 普通、狩をする際、匂いに敏感な魔物や野生の動物に狙われないよう、食物の匂いには充分気をつける。やむ終えず捨てる場合は土に埋める等をして、匂いが出ないようにする。それでも、デアウルフなんかは鼻が良いから、穴を掘り返してしまうけどな。


 しかも、他にもゴミを置いたままだ。缶とか、ペットボトルとか、いかにもの世界から購入した物ばかり。貴族だから、金を出せば幾らでも手に入るだろうが、ゴミを散らかして置いた状態で移動する等、何を考えているのだ。

オーレンが状態検索魔法を使って、いつ頃ここに居たのかを調べた。


「……昨日まで居たっすね。討伐期限日過ぎて、ここから更に北に向かっています。つまり、ワザと戻って来なかったというのが、キッチリ確定したって事っすよ。どうしますか殿下。」


 討伐ルール違反をこれ以上増やしてもらっては困る。只でさえ、期限以内に戻って来ないという違反を犯したというのに、王立討伐隊の総指揮官である僕にとって、それだけでも許せない事だ。それに、討伐終了後、やっと春音と結婚式を挙げる予定だったのに、よくも予定を潰してくれたな!!


 この落とし前は絶対につけさせてもらう。奴らが残したゴミを片付けながら、僕は心の中で決意した。

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