モンスタリスト〜異世界ではモンスターホイホイらしいです

秋春 じゅん

第1話 忘れ物したとか、それってフラグ?



 -漆黒の闇に覆われて、もがくような光の粒が歪まれ、やがて散りと消えた。


 掌を漂う魔力の残滓も残す事なく。

 再び手にする事も出来ない。


 暴走していた魔力も彼方へ


 紅く燃えるような瞳も消え、黒く翳る闇の瞳が浮かぶだけ。


 の世界に想いを馳せるも、もう取り戻す事は出来ないのであろう。


 余の命を救いし乙女は虹色の瞳をしていた。

 やがて、再び逢い見える事もあろう。


 それが事の摂理というものだ。


 その時こそ、余の命も尽きる時かもしれぬな。







 ・---・---・---・---・---・



 ワ…ワタクシの名前は藤島春音ふじしまはるねと申します。超お嬢様・お坊っちゃま学校と世間では言われております、私立 教清きょうしん高等学校に通っておりまして、この度2年生のバリバリの花の17歳になりましたの。


 うふっ。


 本日、教清高等学校の修学旅行にて、おフランスはパリに来ておりますのよ。


 わたくしとしたことがもう嬉しくて嬉しくて、とても興奮してしまいましたの。飛行機の中でも、あまり……いえ、全然眠れなかったのですわ。



 ……オホホホホ。



 え?お嬢様高校に通っているのに、なぜ海外旅行ごときで、そんなに興奮しているのか、ですか?



 まぁ、おほほほほほほ……。



 ほほふあははははははは!!




 あ、はい。学校は確かにお嬢様高校に通っておりますがぁ。


 あたしは至って普通の平民も平民。一般庶民。


 父はごく普通の商社のサラリーマン。中間管理職の課長代理ってやつですね。それって上からも下からも突き上げられて、胃薬手放せない、なのに全然給料大したことないって立場の父、藤島真一ふじしましんいち


 そして母、藤島香ふじしまかおりはかつて若い頃、読者モデルをほ〜んのちょっとやった事があっただけなのに、見栄をはらずにはおけない性格なので、しなくても良い苦労をする羽目になったのでありまする!


 もう、なんせね見栄っ張りなので、可愛い我が娘をお嬢様学校に入れたいとずっと思い描いていたんですが、そんなお金は棚ぼたでも無けりゃ〜あるわけもない。仕方なく近所に知られない為に、家よりかな〜〜り離れた缶詰工場でバリバリ働き、なんと見事工場長にまでなりましたとさ。そして娘を見事エスカレーター式の私立の超お嬢様学校へ行かせる事が出来、それが何よりの楽しみだっていうだから、はぁ……。当の娘としたら、もう困ったもんですわ。


 そんな父、母の間で、外では花よ蝶よと「ごきげんよう」の世界で育てられた風を装い、家では猫皮脱ぎ去って、お嬢様?何それ美味しいの鼻ホジホジなパンツ穴空いてるけど、この履き心地手放せないのよね〜。そんなちょっと残念な庶民平民なあたし。


 しかも、実は修学旅行のお小遣いの為に、校則でバイト禁止なのを隠れてせっせとバイトに励み、この度、初めての海外旅行を経験しようとしているのであ〜る!!


 かはぁ〜〜!もう!幸せ!!見栄の為とはいえ、海外の修学旅行に行ける私立 教清きょうしん高等学校に行かせてくれて、ママンありがとう!!


 おっと、パパンもありがとう!お土産に、おフランス産の効きそうな胃薬買って帰るよん。


 まぁ、そんな訳で〜、本日、花の都に着いたってわけですよ。


 ………ですが、着いたそうそう、思わず「あがーーーっ!!!!」っと雄叫びをあげそうになったんでありますわ!



 ……な、なんと、あれ程、頑張って必死に貯めたバイト代!


 出かける前に何度も、何度〜も中身を確かめて、今年出たばかりの◯ィトンのお財布買っちゃおうかなぁとか?日本ではまだ売ってないオサレ〜なメーカー探しちゃおうかなぁとか?

 ママンにはエ◯メスのスカーフとか?色々考えてムフフニヒニヒニマニマしていたのにぃ!!


 あの後、確かに手提げポーチの内ポケットの中に入れたと思ったのに!!!


 ない。


 ないの。いくら探してもあたしの汗と涙の結晶が微塵も、無い!!



 ファ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!



 ……終わった。



 あたしの海外旅行。



 この先もう来れるか、来れないか、分からないってぇのにぃ……。



 あ〜〜〜ん!!!(泣)


 何で何度も、出したり入れたりした!?

 バカじゃないのぅあたし!?


 あ〜!あたしの◯ィトンのお財布もお!フランス香水なんて、ちょっぴり大人計画も!可愛い雑貨屋さん巡りも、何もかもが終わった!!


 はぁ〜〜〜〜。

 長いため息ばかりのあたしを心配した、只のクラスメイトってだけなのに、この高坂海斗こうさかかいとってやつ!こいつがマジうざい!

 ムカつくったらないんすよ。



「フランス語は確かに難しいよな。発音とか。英語も通じる所あるから、そんなに心配するなよ。なんとかなるよ。もし、し…心配なら君の代わりに俺が通訳してあげてもいいからさ。」



 かぁ〜っ!

 流石お坊ちゃまざんすのぅ。


 通訳だって!通訳してくれるんですと!でもね僕ちゃん!あたしはフランス語とか別に心配なんてしてないし、スマホの翻訳で良いんじゃね?とか、勢いでしょとか?


 ……ってか、今そんな事、もうど〜〜でも良いし!しかも、自分で言っておいて、何ちょっと頬赤くしてんの?……バカなの?


 なんか色々言ってたけど、相手するのも面倒だったのよ。「そうですか、そうですか、それは

 よござんした!ほほほっ」と苦笑いしつつも、耳穴休眠モードで誤魔化しちゃいましたわ。だいたいね!買物に男連れてくとか無いから。平民な本性知られたら………ヤ…ヤバいでしょうが!!


 あー。でも買物に行く事も、美味しいお菓子食べたりも、出来なくなっちゃったんだっけ。

 ふむ。こいつに奢らしたろうか?


 否……面倒臭い事になっても、ヤバいって。

 うん。うん。やめとこやめとこ。

 これはやっぱり、自由時間はお一人様行動で決まり。


 はぁ。一応、ママンにラインで銀行に振込お願いしたんだけど、忙しいみたいで、既読つかない。

 あたしの部屋に多分、置いてあるはずだしね。そっから送ってもらえばいんじゃね?とか思ってたんだけど。


 早目に見てくれ!頼むよママン!


 まぁ、だからって、貴重な自由時間をホテルに籠るなんて、あたしの辞書には書いてないんですよ!


 当然、外行くでしょー!オサレーな街並みを見たり?ウィンドウショッピングとか?お金が無くても全然、楽しめる性格なんですわ!そら平民ですからね。はははは!


 で、早速、自由行動の時になりまして、お嬢様方がどこそこに行きませんこと?とお誘いをいただきました。


「ご、ごめんなさいまし。皆様、実は前から親しくしておりますフランス人のお友達と今日は約束しておりますの。久しぶりに会うので、ごめんくださいませ。」


 とか何とか自分でも何言ってるの?な会話で逃げつつ、後退した。



 あ!マズイ。………高坂が来たので、超早足で人ごみの中に紛れてチャッチャッと撒くことにした。

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