第281話三好家始末

1547年12月:京・種子島屋敷:種子島時堯・三好長慶


「この度は我らを家臣に受け入れて下さい、真に有り難き幸せに存じます」


「うむ、領地を与えることは出来ぬが、一族一門が不自由しないくらいの扶持は保証しよう」


「この御恩に報いるべく、身命を賭して働かせていただきます」


「これから美濃を手始めに、東海・関東・東国を平定していく、三好家の働きには期待しておる」


「御期待に沿えるように、粉骨砕身務めさせて頂きます」


 さて、結論だけ言うと、阿波三好家は城地を捨てざる得ない状況となり、既に俺の家臣となっていた安宅摂津守冬康・野口若狭守冬長を頼って種子島家に降伏臣従してきた。


 俺は一条摂家・土佐一条家が力を持ちすぎないように、土佐一条家を守護大名型に留めるつもりでいた。だが一条家も馬鹿ではないので、俺の思惑などは百も承知だったのだろう。全ての大名・国衆を攻め滅ぼすことは出来なかったが、1番厄介な三好家は族滅させる心算だったようだ。


 戦国大名として飛躍するためには、足利義冬や細川持隆を残した以上、三好家まで残す訳にはいかなかったのだろう。何より大内家と血族として結束するには、義隆の姉妹が嫁いでいる足利義冬と細川持隆は、ある程度の地位を保証して残すしかなかったのだ。


 俺が指揮する種子島家と対抗するには、大内家との連携は不可欠だと一条家は判断したのだろう。


 だがその結果として、三好家は名誉の戦死を遂げるか、城地を捨てて逃げ出すかの2択を迫られることになった。多くの家臣が三好家を見捨てて、土佐一条家に降伏臣従した。一所懸命と言われるくらい、城地に執着するのが武士だから、それは仕方のない事だろう。


 ここで三好長慶は一族が生き残るために英断を下し、俺に降伏臣従の使者を送って来たのだ。この状況に追い詰められても、三好家に忠誠を誓う忠臣と決死の籠城戦を行うと共に、後ろめたさで槍先が鈍る阿波・讃岐勢の間隙をついて使者を送って来たのだ。


 この状況になれば、俺に否やはない!


 城地から切り離され、厳選された忠臣だけで編成された三好家は、家臣にするには最適の存在だ。人格見識に優れ、天下人に相応しい才気に満ちた漢を家臣にできるのだから、これほどの幸運は2度とないかもしれない。


 三好家が新たに根を下ろす為の城地を得る為なら、まさしく命懸けで働いてくれるだろうし、厳選された忠臣だけで編成されているから、乱暴狼藉を心配する必要も無い。


 1軍を任せる将としても、三好長慶だけではなく三好実休、安宅冬康、安宅冬康・十河一存・野口冬長・三好長逸・篠原長政・松永長頼・松永久秀など多士済々であり、美濃攻めを控える俺には渡りに船だった。

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