第277話探索

「はい、権大納言様。アムール川流域に住む部族の内、ニヴフ族は樺太にも同族が住んでおりますので、その者達を通じて交易を行い、家臣に出来る者は交易艦隊で召し抱えております」


「そうか、よくやってくれた」


「アムール川流域に居住しているアムールアイヌ族・ホジェン族・オロチ族・ネギダール族に関しては、樺太アイヌやニヴフ族を通じて交流交易を図り、弓矢の扱いに通じた者を家臣として召し抱えております」


「うむ、想像以上の成果だ、よくやってくれている」


「沿海州に関しても、沿海アイヌ・ウデヘ族との交流交易に成功しております。特に明国から野人女真と認識されているウデヘ族に関してましては、他の野人女真族との交流交易に働いてくれました」


「うむ、まことに天晴である。アムール川を遡り、各部族を探りつつ味方に加え、満州を通過し大興安嶺を越え、モンゴルの地まで渡って命懸けの探索を成功させた。また沿海州でも探索の手を緩めず、野人女真を味方に加えるなど並みの者に出来る技ではない」


「お褒めの言葉を頂き、恐悦至極でございます」


「これは探索費用とは別の褒美である、受け取るがよい」


 俺は麻で編んだ丈夫な袋に分け入れた、1万枚の1匁銀貨を与えた。金は今後の事を考えれば出来るだけ使いたくないし、何より明国内の主要通貨としたら銀貨の方が便利だ。


「過分な褒美を頂き、有り難き幸せでございます」


「それと今まで使った費用を申せ、全て返還いたす」


「それは無用でございます、探査費用は既に真珠や石鹸・蝋燭・漢方薬の形で前払いして頂いております。むしろ過分な金額分を頂いており、御返しすべきだと考えておりました」


「そうか、だがそれでは命懸けの奉公に報いた事にならんな。では沿海や満州・モンゴルまで赴いてくれた者達に、城地を与えてその労に報いろう」


「なんと!? 多くの者は下忍に過ぎませんが?」


「構わぬ、下忍であろうが奴隷であろうが、働きに応じて報いねばならぬ。優れた奉公にはそれに相応しい褒美が必要じゃ、大陸に渡った者は一律に100石の知行地を与える。遠く満州・モンゴルにまで渡った者や、調略に成功した者には200石300石いや500石の知行地を与えよう」


「真に有り難き事、壱岐守は感激で涙の流れる思いでございます」


「いやいや、特に壱岐守よき働きをしてくれている。よって加増分として1000石の知行地を与え、蝦夷地の全ての城下に敷地を与えるゆえ、交易の拠点として活用するがよい」


「まことにもって有り難き幸せでございます」


 いやいや、明国やモンゴル・女真に逆調略を仕掛けられては困るからな、女房子供が種子島領内におり、帰るべき城地が有るとなれば寝返りを少しでも防げるだろう。特に交易艦隊の司令官と商船団の団長を兼任しているから、金になる蝦夷地の産物を売買する拠点を手に入れていれば、莫大な利益が確約されてる。それらを全て捨てて裏切る可能性は極端に低くなるだろう。

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