第104話種子島家の待遇変更

1539年11月『筑前国・博多湊』種子島大弐時堯・11歳


「おじさん、おじさんは種子島家の人?」


「あん? そうだがただの足軽だぞ」


「家の兄貴が種子島家に仕官しようか迷ってるんだけど、種子島家の扶持が減ったて言う噂は本当?」


「減ってないぞ、減ってないけど中身が変わったのは本当だ」


「どう言う事なの?」


「そうだな、俺たち足軽は今まで玄米5合と干肉・干魚に塩・味噌・漬物を頂いていた」


「羨ましいな、腹一杯飯が喰えるんだよね?」


「ああ、腹一杯喰えるぞ」


「で、どう変わったの?」


「玄米が2合減って、干魚が倍になって銭が10文もらえるようになった」


「それってうれしいの?」


「助かったのは確かだな」


「どうして? 飯を腹一杯喰えなくなったんじゃないの?」


「今までは、薪や生活に必要な細々とした物を買うのに、玄米や干肉・干魚を売らなきゃいけなかったんだ」


「ああ、そう言う事か」


「どっちにしても、玄米5合を何時も食べれていた訳じゃない」


「でも今まで5合食べれた日もあるんでしょう、減ってお腹すかない?」


 「どうしても玄米の飯が喰いたきゃ、もらった銭で玄米を買えばいい。銭を貯めていた者は蓄えをもっているしな」


「そっか!」


「それにな」


「うん? 何なの?」


「とにかく何でもいいから腹一杯喰いたきゃ、3合の玄米を6合7合の麦や稗・粟に変えてくれるんだ」


「そうなの? それなら腹一杯になるね!」


「ああ、元々小作人だった俺は、玄米なんて盆暮れにしか喰えなかったんだ、腹一杯喰えるんなら麦でも稗でも構わん、いや塩の効いた干肉・干魚に濃い味噌汁がついているんだ、十分美味しく喰えるよ!」


「そうなの? じゃあ今の方が前よりいいのかな?」


「そうかな? そうだな! 変わった今の方が幸せだな!」


「おじさんありがとう! 兄貴に仕官するように勧めるよ」


「そうか、種子島家はいいぞ、合戦になっても戦うことなんか無いぞ、敵は全部大弐さまが降伏させれくださるからな!」


「うんわかった! ありがとう!」


 よかった!


 扶持内容の変更は、おおむね家臣たちには喜ばれている。種子島領への人口流入と奴隷購入で、天災や戦争による食糧不足に対応するため、玄米の備蓄量を増やすことにした。その為に玄米の支給量を減らして、備蓄量の増えた雑穀を支給したかった。


 だが一方的に玄米の支給を雑穀に変更したら、同じ価値であっても不平不満が出てしまうだろう。そこで、家臣たちが玄米を銭に変えたり物々交換をして、酒を買ったり生活必需品を買ったりしていることに注目した。


 だから玄米1合分を現物ではなく銭で支給することにした。更に家臣たちに人気があり換金する場合にも人気のある干魚を倍にしてみた。


 だが何より1番喜んでくれたのは、玄米や銭を雑穀と変えれるようにした事だった。今まで物々交換や銭で買わなければいけなかった物が、値段交渉なしで安心して等価交換してもらえるのだ。何よりも喜ばれたのは、水で薄められていない濃い酒を安心して買うことが出来るようになった事だった!


 玄米を量が確保出来る雑穀に替え、出来るだけ多くの酒と交換できるようにする。その上で支給された干肉・干魚・漬物をアテに酒を飲むのが将兵たちの至上の愉しみになっていった。

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