第100話一条家からの依頼
1539年5月『筑前国・大宰府』種子島大弐時堯・11歳
「大弐さま、ぜひ援軍をお願いいたします」
「されど援軍を送ったりすれば、一条殿の面目を潰してしまうのではないか?」
「ここだけの話ではございますが、権大納言さまはお体がすぐれず、実際の戦の指揮は左近衛大将さまと民部少輔が執らせていただいています。しかしながら土佐の国衆たちが手を組んで抵抗しているうえに、伊予の西園寺家と河野家が国衆連合を支援しており、苦戦しておるのでございます」
「伊予の西園寺家と河野家には、時政青龍に命じて土佐に手出しさせないようにしているのだが?」
「はい、確かに大弐さまの支配が及んでおられる幡多郡からは、猫の子1匹土佐に入ることは叶いません、ですが他の郡からは入り込んで来ております。どうか大弐さまのお力を持ちまして西園寺家と河野家を抑え込んで頂けないでしょうか?」
「だが一旦俺が動くとなると、一切の妥協をせずに伊予国を支配下に入れてしまう事になる、それでもいいのか?」
「それは構いません、一条家としては土佐一国を完全に支配下に置くことを優先いたします」
「使者殿の言葉を信じない訳では無いが、私としては直接権大納言様と左近衛大将様のお言葉を賜りたいのだ」
「権大納言様も、大弐さまがそう仰られるだろうと申されておりました、ご足労をかけますが、出来ますれば空を翔けて土佐まで話をしに行って頂けませんでしょうか?」
「分かった、使者殿には悪いがこのまま直ぐに土佐中村に向かわせてもらおう、本気で飛べは土佐までは五分(15分)もかからん」
「有り難き幸せでございます」
一条権大納言房家:土佐一条家の第2代当主。関白・一条教房の次男
一条左近衛大将房冬:土佐一条家の第3代当主
敷地民部少輔藤安:一条房冬の守役
正直余計な事になったものだと思う!
俺としては台湾侵攻に全精力を傾けたかった、だが空を翔けて台湾の状況を確かめたところ、やはり風土病は猖獗を極めていた。俺が噛み付いて魔法を使う事で、全ての病気や感染症は治癒させる事が確認できた。
しかしそれでは大内家や一条家が裏切った場合や、尼子家や西園寺家・河野家が攻め込んでいた場合に、どちらかを見殺しとまでは言わないが損害を出してしまいかねない。そこで予防薬や治療薬を開発生産させようと思っていたし、俺自身が体内で薬を精製するつもりでいた。
まあ台湾遠征軍全てに薬を行き渡せるには、可也の準備期間を必要とするから、その間に片手間で伊予を攻め取るのも一興かもしれない。そんな事を考えながら、土佐中村へ行く為の準備、特に手土産を用意している間に思いもかけないことが起こってしまった。
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