第82話謁見料理

1538年7月『筑前国・大宰府九条屋敷』種子島少弐時堯・10歳


「ほっほっほっほっ、遠慮することはないでおじゃる、皆面を上げるでおじゃる」


「「「「「はっは~」」」」」


 九条禅定太閤殿下はとてもご満悦だ!


 普段なら直答はもちろん、同じ部屋に入る事すら憚られる国衆に謁見を許されている。御簾を下ろすべきところを直接顔を見せることも許された、余程に完成した新築の屋敷を披露できるのがうれしのだろう。


 もちろん九条禅定太閤殿下の屋敷の関しては、大隅国には国分清水城と根占城、筑後国には鷹尾城、日向国には土々呂城、肥後国には八代城と5カ所も屋敷を用意していた。だから決して今ままで不自由な思いをお掛けしていた訳ではない。


 だがそれでも今回の大宰府・遠の朝廷に広大な屋敷を新築出来た事は、零落し京を離れ困窮した生活をしていた九条禅定太閤殿下に取って、喜びもひとしおな出来事なのだろう。


 父上様も俺も、九条禅定太閤殿下の妹姫を正妻に迎え、しかもこうして友好的な関係、いや父上様と俺が殿下を養っていると言う事実を、降伏臣従させた大名・有力国衆に見せつけることは出来るのはとても有効だ。


 だから屋敷の落成式に招待した元大名・元有力国衆に出す料理にも細心の注意を払った。


1日目

本膳・本汁・鰯のつみれの白味噌汁

  ・膾 ・鮎と野菜の酢の物

  ・坪 ・揚麺・鯨・野菜の餡かけ

  ・香物・3種の糠漬け

  ・飯

二膳・二汁・大浅利の澄まし汁

  ・平 ・鯨・山鳥・猪・牛・鶏の旨煮

  ・猪口・野菜の白和え

三膳・三汁・岩牡蠣の赤味噌汁

  ・刺身・鯨ベーコン・烏賊・飛魚

  ・小附・鮎の塩辛(うるか)

与膳・鯛の塩焼き

五膳・羊羹・干錦玉・鰹節


 だが何より1番彼らを驚かせたのはワイン・麦焼酎・蕎麦焼酎・吟醸酒・紹興酒・ウォッカなどの多彩な酒が出て来た事だろう。清酒が出るだけでも驚きなのに、この時代では考えられない吟醸酒や高アルコールの焼酎を飲めるのだ、酒好きには天国のような状態だ!


 しかもそれは1日では済まず2目も歓待されるのだ


2日目

本膳・本汁・鯖のつみれの白味噌汁

  ・膾 ・イサキと野菜の酢の物

  ・坪 ・鯉の唐揚げ野菜の餡かけ

  ・香物・3種の奈良漬

  ・飯

二膳・二汁・ホヤの澄まし汁

  ・平 ・鰻のかば焼き

  ・猪口・野菜の白和え

三膳・三汁・鮫の赤味噌汁

  ・刺身・鯨尾身・蛸・太刀魚

  ・小附・醍醐(チーズの燻製)

与膳・鯛の塩焼き

五膳・外郎・干錦玉・鰹節


 2日間に渡って下向してきた公家衆と共に元大名・元有力国衆を歓待した事、特にへべれけに酔わせて本音を引き出し、心に奥底に残り溜まっている物を吐き出させた。これで少しは種子島家への反感を減らすことが出来ただろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る