第68話九条禅定太閤殿下の帰京
1537年8月『日向国・土々呂城』種子島右近衛権少将時堯・9歳
「禅定太閤殿下とこれでお別れかと思いますと、とても寂しく悲しいです」
真っ赤な嘘だけど!
「麿もとても寂しいでおじゃるが、なあに直ぐに妹の嫁入りで下向するでおじゃる」
もう2度と来ないで欲しいんだけどな・・・・
「本当にそうなるでしょうか? 陛下が一条家の姫と九条家の姫が同時に種子島家に嫁入りすることをお許しになられるでしょうか?」
「一条家の姫と言っても養女でおじゃる、血統で言えばまろの妹とは格が違うでおじゃる」
「しかしながら公式に養女となされた以上、それに相応しい家格と待遇が保証されるのではありませんか?」
「確かに養女といえども娘は娘でおじゃる、だが同時に実子と養女に違いは確かに存在するでおじゃる、特に家を継承する上では重大な事でおじゃる」
「それはそうでございますが・・・・・」
「まあまかせておくでおじゃる! 少将の子供が将来九条家を継ぐ可能性すらあるのでおじゃるぞ!」
「いえいえいえ! そのような大それた事など考えてもおりません!」
とんでもないことを言いだされた!
俺の子供が九条摂関家の後継者になるだと?
確かに禅定太閤殿下には男子がおられず、姫がお1人おられるだけだが、その姫には親王殿下でもお迎えして、皇別摂家にでもすればいいのだ!
「まあ、まかせておくでおじゃる! ただそのためには資金が必要じゃ!」
また銭の無心だよ!
下向以来、禅定太閤殿下は毎日毎日毎日銭を無心されるが、種子島家としても支配下に入れた国衆や地侍の元に、毎日率先して一緒に訪れてくれる殿下には助かっている面もあった。だから当然のように毎日1貫文・2貫文・10貫文と無心されるがままに銭をお渡しした。
さらに筑後国・肥前国・壱岐国の国司就任の根回しに必要だ、父上様を大宰帥(だざいのそち)に任じ俺を大宰権帥に任ずるために必要だと言われれば、1000貫文・2000貫文とお渡しするのに躊躇はなかった。
大宰帥の地位を得る事が出来れば、日本の外交と防衛を主任務とする事が出来る上に、西海道9国(筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後、日向、薩摩、大隅)と三島(壱岐、対馬、多禰)については、掾以下の人事や四度使の監査などの行政・司法を所管することが出来る。与えられた権限の大きさから、大昔は「遠(とお)の朝廷(みかど)」とまで呼ばれていたのだ!
まして俺の想像通り、買い戻したり新規に購入できた九条家縁の領地を、妹姫の化粧領として持参させると言われれば、1万貫文であろうが2万貫文であろうがお渡しする事に躊躇はなかった。まあそれだけの銭をドブに捨てても大丈夫なくらい、種子島家が裕福だからこそ出来る事ではある。
「分かりました、もう1万貫文お渡しさせていただきます」
「それは助かるでおじゃる、受け取った銭に見合うものは必ず少将に返すでおじゃる」
「期待してお待ちいたしております」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます