第42話土佐国中村城
1536年8月『土佐国・中村城』種子島左近衛将監時堯・8歳
父上様を京に送りだして6日目、父上様から思いがけない使者が帰ってきた。スクナーを使いに送られてきたその内容は驚愕すべきもので、一条摂関家の当主・一条房通が土佐国中村城に下向されていると言うものだった。
そこに書かれた文章から判断すると、父上様が今年は土佐国周りで上京することを知り、急いで下向されたそうだ。さらにそこには俺のミスが明らかになる内容が書かれていて、土佐一条家次期当主・一条房冬の4男が、大内家の養嗣子となっていると言うのだ!
自分が無敵の力を持っているので、直ぐに攻め込む予定のない敵対国への調査をおろそかにしていた!
その所為で父上様を死地に送る事になってしまったが、3年に渡る朝廷への献金・献納は無駄ではなかった!
貧乏のため、長らく即位式を行えなかった後奈良天皇は、俺と父上の見返りを求めない献金・献納にいたく感謝されていたようで、一条房通卿を勅使として土佐一条家に種子島家と敵対しないように命じて下さった。
本来なら孫の養家・大内家と敵対する種子島家当主など殺したい土佐一条家の房家だが、摂関家の血が濃く公家としての立場があるから、子供である一条房通が後奈良天皇の勅使として仲介にくれば無理も出来ない。
そこで俺も土佐国中村城に行って、大内家と九州の支配地域について話し合う事になったのだ。
「九州の国割はどうする?」
「実力次第の切り取り自由でどうですか?」
「それでは大内家と種子島家の戦争になるではないか!」
「いえそのような事にはなりません、大内家が支配している領地に種子島家が攻撃をかけることは絶対ありません。ただ九州の国衆・地侍が種子島家に降伏臣従してきた場合は、なにがあっても護ります」
「え~い、九州の国衆・地侍が種子島家を慕っているのは分かっておるわ! 大内家に従いたい九州勢が1人もいないことなど分かっておる」
「それなら大内殿は尼子に専念されてはどうですか? その代わりと言っては何ですが、種子島家は中国地方には決して攻め込みません。伊予・讃岐に進みますから、一条家は京を荒らしている三好の阿波を攻められてはどうです?」
「なに!?」
「父上・兄上、それがよいのではありませんか? 種子島家が今まで通り朝廷に献金・献納してくれれば父上や兄上の負担も減りますし、阿波の三好を抑えることが出来れば後奈良天皇もお喜びになられます」
「う~む」
どうやら一条房家は、娘たちが嫁いだ婚家からひっきりなしにお金をせびられているようだ。まあこんな時代だから、少しでも余裕のある親戚を頼るのは仕方ないだろう、ならば止めをさそう!
「房家殿、種子島家の交易艦隊が往復で土佐の湊に立ちよれば、莫大な富がそこに落ちることになります。主だった湊を一条家の直轄にして、材木などの特産品を輸出されたら、この中村を古の京に匹敵する町にする事が出来ますよ」
「よし分かった! ただし中国地方には絶対手を出すな! それに阿波も我が一条家のものだからな!」
俺を含めた種子島家・土佐一条家で九州・中国・四国の国割が決められたが、それを大内家が無条件で飲むとは限らない。だが俺が空を飛んで土佐国中村城を訪れたのを一条家の面々は見ているから、とてもではないが勝ち目がない事は悟っている。まあだからこそ、こんなに簡単に話がまとまったのだ、大内家も俺が空を飛んで城門を破壊すれば簡単に話がつくだろう!
「この世界の一条家」
一条房通・1509年生まれ
一条房家の次男で大叔父の摂関家・一条冬良の婿養子になり摂関家を継ぎ一条家当主となる。
一条房家・1475年生まれ
関白・一条教房の次男として誕生し、兄の政房とは30近く年が離れており、誕生時には既に兄が戦死していた。正二位の高位に昇り、その名門の権威をもって土佐の国人領主たちの盟主として勢力を築き、土佐一条氏の最盛期を築き上げ、本拠地の中村には「小京都」と呼ばれるほどの街を建設している。
一条房冬・1498年生まれ
一条房家の嫡男・次期土佐一条家当主・1535年には官位は正二位左近衛大将にまで昇っている。
大内晴持・1524年生まれ
一条房冬の4男、大内義隆の養嗣子で次期大内家当主
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