第24話島津家

「今ならば薩摩の島津家は3家に分かれて内紛しております、この時ならばやすやすと薩摩の国を攻め取る事が出来るのではありませんか? まして若殿様のご評判は国中に鳴り響いております、若殿様が空駆けるお姿をお見せして下されば、多くの国衆・地侍が戦わずして降伏いたします。力足らずではありますが、我ら坊津の商人も取引のある国衆・地侍に降伏を呼びかけさせて頂きます」


 確かに今の島津家は、島津勝久・島津忠良・島津実久が内紛を起こして血で血を洗う状態だ。だからこそ、俺が大隅国を攻め取った時も援軍を出すことが出来なかった。それに掃部助が言うように、今の俺の評判なら、戦わずして多くの国衆・地侍、何より農民兵が降伏するだろう。だが他にも確認しておかなければならないことがある。


「掃部助! 島津3家がそれぞれ坊津に運上金を要求しているのであろう!」


「!」


 掃部助が絶句しているが、種子島忍軍をなめてもらっては困る。玄米が喰えると分かった自作農・小作農が九州全土から種子島領に逃げて来ているのだ。各地の情報などいくらでも手に入るから、坊津が俺に聞かせたくない不利な情報だってすでに聞いていたのだ。


「自分たちに不利な事でも今後は正直に話せ、種子島家を騙そうとしたら死罪だ! 2度目はないぞ!」


「はっはぁ~、申し訳ございません、今後は決して嘘偽りを申すことも、秘密にする事もございませんので、どうか坊津をお救いください!」


 まあ助けてやるしかないな、少なくともここにいる3人の海賊商人なら、自分たちだけ種子島領に移り商売を続けることは簡単だったのだ。それを坊津を守ろうと、種子島家に乗り込んで交渉するくらいの気概と坊津愛があるのだ。このような男たちは結構好きだから、ついつい肩入れしてしまう。


「それでは具体的に種子島家に降伏臣従するだろう国衆・地侍の名を挙げてもらおう。それと直接ここに出向いて臣従を誓える者の名を挙げてもらおう」


 この後も結構生々しい交渉を繰り返すことになった。これは仕方のない事なのだが、直接この城に来たことが主君である島津に知られたら、即座に討伐の軍勢が攻め込んで来るかもしれないのだ。それを理解した上で、やすやすと種子島家に降伏臣従する者の名を明かすようなら坊津商人は信用できない。


 だから今回は、坊津商人も信義を守り名を明かすような事はしなかった。もし明かすようなら処罰しなければならなかったから正直有り難い、出来れば人を傷つけるような事はしたくない。


 それと坊津が種子島領となる場合の条件を話し合ったが、運上金や入湊税は島津家と同じにした。この時代の農民への税率は6公4民なのだが、俺は4公6民にしてるし。関所も廃止して通行税を取らないようにして、座も廃止して自由に商売できるようにもした。だが塩・煙草・酒・鯨製品などは専売制として種子島家からしか買えないようにした。これで毎日使う塩などと種子島家の特産品は独占販売だから、安定した収入が確保出来るようになり、種子島家の財政が安定するのだ。

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