第8話落城

「やあやあ、吾こそは種子島の領主・種子島恵時が嫡男・種子島犬楠丸なり! 卑怯にも父上の留守の攻め込んだ禰寝清年は吾が捕虜にした、もはや禰寝家に勝ち目はない、早々に城門を開いて降伏いたせ! もし禰寝家の誇りを取り戻したいのなら、城を賭けて正々堂々吾と一騎討ちせよ!」


 俺は禰寝清年から奪った15隻の船を率いて禰寝家の本拠地に攻め込んだのだが、守備兵のほとんど残っていない城は城門を固く閉じて守りに専念してしまった。そこで人質として連行していた禰寝清年を両手で差し上げて城内を威嚇した上で、正々堂々名乗りを上げて挑発もした。


 だが城内の禰寝一門衆・守備兵は臆病風に吹かれたのか、一騎打ちに応じないどころか当主を救い出す為の交渉の使者すら送ってこなかった。


「若君様、この後はどういたしましょうか?」


「お前たちはこのまま城の大手門と搦め手を封鎖しておれ、私が城門を破って降伏させてくる!」


「・・・・・」


 先の種子島合戦で、俺の鬼神のような戦いを見ていた商人護衛兵もこの言葉には戸惑ったようだ。まあ論より証拠、いちいち説明するよりやって見せるのが1番早い。俺は常に稼働させている身体強化魔法によって、神速の早さで富田城の城門前に移動した。その上で伝説の鬼や巨人を超えるような剛力無双の力で、城門を一撃の拳で破壊してみせた!


 そして破壊した城門内に入り込み、当たるを幸いに手当たり次第に禰寝兵を掌底で気絶させていった。


「城内は占拠した、安心して入城せよ! ただし婦女子に乱同狼藉した者はその場で殺すぞ!」


 まあ元々禰寝兵だから大丈夫だとは思うが、それでも卑怯で凶暴な者が中にはいるかもしれない。気絶している身分ある女性に欲情して乱暴でもしたら、総大将の俺の名にも傷がついてしまうので、念には念を入れて味方を入城させた。


 俺の2度に及ぶ鬼神のごとき戦いぶりを見た将兵は、静々と入城して悪さは一切しなかった。気絶した守備兵を捕虜として牢に入れた後、富田城の守備に100兵を残して他の禰寝家城砦を攻略すべく侵攻を続けることにした。


 「こわっぱ! 吾こそは光孝天皇八代の孫・敦如が子孫・税所篤長なり! 吾の槍を見事受け止めてみよ!」


 次々と禰寝家の城砦を攻め落として行ったが、ほとんどの城は城門を固く閉めて籠城しようとするか早々に降伏した。中には兵を掻き集めて俺だけを狙って攻撃してきた城もあったが、唯一一騎打ちに応じて来た武者がいた。それは瀬脇城主・税所篤長だった。


 一騎打ちに応じるだけあって、税所篤長の槍捌きは名人ともいれる妙技と力強さだったが、いかんせん俺には全く歯が立たないものだった。篤長の突きの力を利用して槍を引き、篤長を転倒させた後で掌底で気絶させ捕虜とした。


 本拠地の富田城に加えて高木城・国見城・野間城・水流城・瀬脇城・辺塚城など、大隅国大隅郡の禰寝清年に支配下にあった城砦を全て降伏落城させた。俺は瞬く間に大隅郡を完全制圧する事に成功した。

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