第6話侵攻作戦

 1533年10月『種子島・5歳』種子島犬楠丸


 ガン・ガン・ガン


 ドン・ドン・ドン


「若様、禰寝軍が攻め寄せて来ました!」


 湊に配備してある緊急を告げる鐘と太鼓が連打されているなか、櫓に乗って俺の作った望遠鏡で状況を確認した家臣が禰寝軍の襲撃を報告してきた。


「民と商人たちはどうしている?!」


「湊にいた者は皆こちらに逃げて来ております、南蛮と明国の商人たちは船の上で戦支度をしておりますが、禰寝軍は商人の船を無視してこちらに向かって来ております」


「ならば俺が迎え討つ! お前たちは民を城に収容して護れ!」


「は!」


 父上様と種子島家家臣団の大半が京に向かって2カ月、以前から種子島家を狙っていた禰寝清年が攻め込んで来た。今なら父上様が留守なので、簡単に島を占領出来ると思ったのだろう。だがそうは問屋が卸さない、最初から禰寝清年を誘き寄せる罠として父上様たちに京に行って頂いたのだ。


「やあやあ、吾こそは種子島の領主・種子島恵時が嫡男・種子島犬楠丸なり! 卑怯にも父上の留守の攻め込んだ禰寝清年! 正々堂々吾と一騎討ちせえよ!」


 俺は身体強化魔法を使い飛ぶような速さで湊に到着した。そして禰寝軍の攻撃を領民からこちらに引き付ける為、わざと大声で名乗りを上げて禰寝軍に種子島家の嫡男がここにいると知らせた。もちろん負ける気などサラサラないので、俺の武名を天下に広める目的でもある。


 名乗りの間も雨あられと弓矢が飛んでくるものの、俺から見れば亀の歩みのようにゆっくりとしたものだ。そんな矢に射られる俺ではないが、万が一当たったとしても表皮の下に張っている防御魔法で弾くことが出来る。


「え~い何をしている、さっさと殺してしまわんか!」


 目立つ甲冑を着た馬鹿な男が、中々俺を倒す事が出来ないので躍起(やっき)になって命令を下し出した。その御蔭で敵の総大将の居場所がはっきりした。神速のスピードで敵総大将に近付き掌底で殺さないよう背中を痛打して気絶させた。


「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ、吾こそは種子島の領主・種子島恵時が嫡男・種子島犬楠丸なり! 卑怯にも父上の留守の攻め込んだ禰寝清年をここに討ち取ったり!」


 5歳児の小さい身体で敵総大将の身体を差し上げて、皆に禰寝清年を討ち取った事を知らせた。本当に禰寝清年かは分からないが、敵総大将であるのは間違いない、少々のハッタリも必要不可欠だ。


 後は簡単なものだった、5歳児の驚異的な強さに大半の禰寝軍将兵は武器を捨て降伏したし、僅かに抵抗する将兵も簡単に気絶させる事が出来た。俺に恩を売りたい商人が護衛の兵を引き連れて加勢に駆けつけてきたが、捕虜になった敵将兵に縄をかける以外にする事はなかったほどだ。


 今回の侵攻作戦に禰寝清年は全力を掛けていたのだろう、捕虜にした禰寝軍の艦船数と兵力は以下のようなものだった。


小早船(20丁櫓・40兵)10船・400兵

関船 (40丁櫓・90兵) 5船・450兵

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