魔法武士・種子島時堯

克全

第1話転生・5歳児で領地改革

 さて今回の転生はどうなんだ?


 何時も転生した直後はろくに目も見えず状況がよく分からない。でも油断したら産まれて直ぐに殺されてしまう場合もある。今回はそれなりの家に産まれたようで、間引かれる心配も捨てられる心配も無いようだ。


 まあ100回以上転生すれば、転生直後にすべき事は決まりごとになっている。先ずは今度の身体に魔力が有るかだ、魔力が無い場合は積み重ねた知識と経験だけで生きて行かなければならない。ありがたい事に今回は莫大な魔力を体内に確認できてほっと一息だ。


 次に確認すべきは、この宇宙・世界に魔素が存在しているかどうかだ。魔素があれば、莫大な体内魔力を外部に放出する魔法を使う事が出来る。または魔素を体内に取り込んだり活用することも出来るのだが、今回は極微量な魔素しか感じられなかった。


 残念ながら外部放出系の魔法は使えないようだ。だがその辺は慣れたものだ、骨・筋肉・皮膚を強化して常人離れした力を発揮することは出来るし、表皮と真皮の間に魔力防御層を創り出し、表皮を治癒魔法で治して行けば無敵の防御力・回復力で戦える。


 次に確認すべき事は、多元宇宙間の亜空間に蓄えた莫大な物資を活用出来るかだ。今までの転生生活で、多くの亜空間に魔晶石・貴金属・武具・防具・食料・原材料を莫大な量を備蓄してある。だがこれも残念な事に、この宇宙・世界からはどの亜空間備蓄庫にもアクセスすることが出来なかった。


 こうなると体内魔力と知識経験で生きていく事になるが、果たしてどうなる事やら。



1533年4月『種子島・5歳』種子島犬楠丸


「新太叔父、そっちに追い込んだぞ!」


「おう!」


 ダァーン


 恐らく最後の猪を新太叔父が仕留めてくれたのだろう。種子島で耕作をして行く上で、獣害は非常に厄介だった。猪を根絶やしにしなければ、限られた耕作地しかない狭い島内では、食料生産すら上手くいかなくなってしまう。


「若! 大物でございますぞ」


「うむ、今日は猪肉をたっぷり喰うことができるな」


「はい! しかしこれが最後の1頭ならもう2度と猪は喰うことができなくなりますな」


「屋久島にはまだまだいるだろう」


「そうですな、それに鹿も味噌で煮ればなかなか美味いですから、まずは猪を滅ぼして田畑を荒らされないようにせねばなりませんな」


 「そうだ、領民全てに米の飯を食わせてやりたいからな」


 「はい!」


 俺の立場は種子島・屋久島などを支配する種子島家の嫡男だった。しかもこの宇宙・世界は戦国時代の真っただ中だ、生き残るためには修羅の道を歩かないといけない。まあ穏やかな一生を送ろうと思えばやれないこともないのだが、この世界の両親や一族を見捨てて隠棲する訳にもいかない。種子島家の嫡男として慈しんで育ててもらえば、100度以上転生しているとはいえ愛情は湧いてくるものだ。


 そうなると、琉球・薩摩・大隅の豪族が種子島を狙っているのに備えなければならなくない。つまり今父上が支配しておられる領地を最大限に活用しなければならないのだ。


 だがら黒色火薬に必要な硝石を創り始めたし、鉄砲の伝来に先んじて肩つけの13匁士筒級の火縄銃を生産させた。同時に大砲も開発させ、大砲を搭載する屋久杉を活用したガレオン船を建造させた。だが大型のフリーゲートや戦列艦を建造する前に、小型のケッチやスクナーを建造して漁業に活用している。材木は屋久島の屋久杉が在るので何の心配もない。


「若! 鯨です! 鯨の群れが沖を泳いでいます!」

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