第6話ホーンラビット
原初の竜が喜々として帰った後で、まだ目の覚めない俺は何をするべきか迷っていた。夢なら食欲に応じて無制限に食べれてもいいはずなのだが、いつも程度の量で満腹になってしまった。
「セイ、狩りをしてみたいのだがいいかな?」
心を読まれるより、普通に話す方が精神的に楽なんだが。
(別に構わないが、食事ならドローン配送で幾らでも買えるだろう?)
セイ相手だと念話が普通になりそうだ。
「それはその通りなんだが、異世界に来た以上冒険を愉しみたいじゃないか」
夢と言ってしまうと興醒(きょうざ)めになるから、ここはセイの話に合わせて異世界転移を演じる事にしよう。それにしても、自由に夢をカスタマイズして見ることができるとは、ラッキーだと言うべきだろうな。
(そうか、ならば好きにするがいい)
「そこで新しい魔法を教えてくれないか」
(構わないが、どんな魔法を覚えたいんだ)
「殺した獲物はちゃんと食べないと、無駄な殺生をしたことになってしまう。セイが教えてくれたエタサンダーだと、鎧まで熔かしてしまう威力だから、肉なら炭になってしまってとても食べられない」
(ふむ、それなら風系統のエアカッターか水系統のウォーターカッターがよかろう)
「高圧縮した空気や水に高速回転を与えて、敵を切り刻む技だな?」
(そうだ)
「その技だったら、即死させずに血管を傷つけて失血死させられるな」
(そうか、生きているうちに血を抜いた方が美味しくなるのか)
「ああ、血が残ると不味くなるんだ。そんな事より適当な獲物はいるか?」
(そうだな、数が多くて弱い上に食用になるとしたら、ホーンラビットと言うモンスターがいいだろう。草食だが縄張り意識が強く、縄張りに入って来た生物には無制限で攻撃を加えてくるのだ)
「角の生えたウサギなんだろうが、どれくらいの大きさだ?」
(全長1mくらいで体重は10kgくらいだな、強靭な脚力で敵に飛びかかり、頭の角で心臓を一突きにする)
「聞いていると結構強敵なんじゃないか?」
(この世界のモンスターの中では最弱の部類だ、それにミノルの実力なら、ホーンラビットの攻撃程度は屁でも無いよ)
「本当だろうな?」
(デュオだから、我が常時防御結界を張ってやっているし、先の戦闘でレベルが上がっているから、レベルに応じて自然に身体強化されておる。そうでなければ、自分の攻撃の反動で身体が粉々に砕けてしまうであろうよ)
「なるほどその通りだな、レベルが上がって攻撃力が増したのなら、それに伴うだけの防御力・身体強化が行われているはずだな」
(まあ攻撃や防御の技術は学ばねば身につかないが、純粋な身体能力だけで楽勝だ)
「さて、後はどうやってホーンラビットを探すかだが」
(ふむ、それなら新しい魔法を覚えてもらおう)
「いい魔法があるのか?」
(ああ、一緒にマップと唱えてもらおうか)
「分かった」
「「マップ」」
おりょ!
ゲームの地図画面が眼の前に出て来たぞ。
(次にこいつがホーンラビットじゃ、覚えたか?)
「ああ覚えたが、簡単に捕まえたんだな、探すのも狩るのもなんだか馬鹿らしくなるんだが」
(さっきも言ったが技術は学ばないと身につかない、魔法も繰り返し使う事で精度も威力も増して行くのだ、まあミノルの実力なら些細(ささい)な違いだが)
「いや、ありがとう」
(では次の魔法だが、ホーンラビットを思い浮かべながらリサーチと唱えてもらおう)
「分かった」
「「リサーチ」」
呪文を唱えると眼の前のマップに光点が無数に現れた!
どうやら俺が知っている物だけを魔力を使って探し出してくれるようで、知らない物までは探せないようだ。異世界の知識が全くない俺には宝の持ち腐れだが、今のようにセイに教わってからなら使える魔法だ。
常に鉢植えのセイを持たなければならないのは不便だが、非常時は自力で飛んでくれると言うし、少々の不便は受け入れるべきだろうな。さて、初狩猟と行こうか!
「エアカッター」
1番近い場所にいたホーンラビットに近づき、視界に捉えてから呪文を唱えたのだが、初級と思われる魔法なのに切れ味が素晴らしい!
1撃でホーンラビットの首を切り落としてくれたので、自然に血抜きが出来る。しばらく放っておいて、次の獲物を狩る事にしよう。足音を立てないように、出来るだけ気配を隠してマップを頼りに次のホーンラビットに近づき、視界に捕えたらエアカッターで首チョンパにする。
「エアカッター」
調子に乗ってサクサク狩ってしまい、野原にいるホーンラビットを全滅させる勢いで熱中してしまった。無駄な殺生はするなと祖母(ばあ)ちゃんにきつく教えられたのに、馬鹿をやってしまった!
狩った以上はちゃんと美味しく料理して成仏させないといけないな、この後はウサギを料理することにしよう。
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