第74話初実戦
「閣下、今でございます!」
俺の側を離れず護りを固めてくれているツェツィーリアが、俺の獲物にすべく人獣族が囲んでくれ、生かさず殺さずしているゴブリンに魔法を掛けるタイミングを指示してくれた。
画面を通してドローンを駆使している時は、最良とまでは言わないが、それなりのタイミングで魔法を掛けていた。だが実際に自分の眼でモンスターを見て、自分の言葉で魔法を発動させるとなると、なかなか決断がつかないものだ。そこをツェツィーリアが気合を入れてくれることで、何とかどもりながらも睡魔の魔法を発動させる事が出来た。
ゴブリンは人獣たちに囲まれ、命懸けで包囲網を突破しようとしており、そこ興奮度は最高潮だろう。これほどアドレナリン全開のゴブリン相手なら、実戦を想定した訓練としたら最適だろう。いや、この戦いが命懸けでないと言う訳ではないのだが、俺が害される可能性は極端に低いと言う事なのだ。危険なのは、俺の為に簡単に殺せる相手を殺さないようにしている人獣族たちだ。
彼らの苦労が報われ、ゴブリンが1度の魔法で眠りに倒れたことで本当に安心出来た!
「御見事でございます、閣下」
「ツェツィーリアありがとう! 皆も本当にありがとう、御蔭で実戦で魔法が使えることが確認できたよ」
「閣下、無礼は承知で申し上げますが、ここで初体験を済まされた方がいいのではありませんか?」
人虎族のギーゼラが俺に決断するように勧めてくれる。
「確かに今経験しておくべきかもしれないが、そうなるとこの後の訓練を続けられない可能性が高い」
「閣下、ギーゼラの申す通りでございます。ここで初体験を済まされて下さい、我ら一同毎日何度でも喜んで御供させて頂きます」
ツェツィーリアもギーゼラの意見に賛成のようだ。
「閣下、私も賛成でございます。毎日閣下の御供が出来るのなら、それに優る喜びはございません!」
ギーゼラとツェツィーリアに続いて、俺の護衛をしてくれていた人獣族たちが、我も我もと毎日の訓練に付き合うと言ってくれた。ここまで言ってもらえているのに、嫌だ怖いやりたくないと言う訳にもいかない!
ここで初めて命を奪う経験をするのだ!
いや、それは嘘だ。
幼い頃にアリやザリガニを殺した経験はある。そうそう、家族でキャンプに行った時に釣った魚を殺して食べたことさえあった。昆虫や甲殻類・魚であろうと命は命、大型で人と同じように二足歩行していようと、魔物だけは殺せないと言うのは可笑しい。ここは性根を据えて命を奪わなければならない!
俺の魔法にかかり、睡魔で倒れているゴブリンを殺すのだ!
そう決断したのだが、そう決断したからこそか、心臓が早鐘の様にドクンドクンと動き出し、一瞬で血の気が引いて寒気が襲って来た。殺すために歩いて近づこうと思うのだが、そのために一歩を踏み出すことが出来ない!
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