第64話商品見本

「イチロウ殿、見本に頂いた白胡椒を使った料理を振る舞ったり、料理に追加して振りかけってもらったのですが、その場で商談を持ちかけられるほど評判がよかったです」


「そうですか、でしたら次のオークションでは白胡椒も販売いたしましょう」


「今では駄目なのですか?」


「最低価格を黒胡椒の倍にして頂きたい」


「金の倍の重さですか?」


「はい、白胡椒の方が栽培期間が長くかかり、加工にも手間が掛かる上に、果皮を除くので分量が減るのでどうしても値段が高くなります」


「なるほど、それは仕方がありませんね」


 俺はネットを通してバルバラ殿と今回のオークションの結果を話し合った。商品すべてを買い取る資金を持つ者に、龍子姉ちゃんが定めた最低価格以上で買い取らせるのがオークション。全てを買い取れる者がいない場合は、最低価格で年中販売とするのだが。今回は一括購入出来る商人がおらず、最低単位100gで黒胡椒を販売した。


 今回も莫大な資金が手に入ったのだが、少しの利益を残して全て魔道具の購入に充てた。金が入れば入るほど、襲撃(しゅうげき)を受ける危険が高まるから、牽制(けんせい)の意味でも攻守の魔道具を買事が大切だ。


「それで川魚の料理の評判がよかったと言う事ですが、昨晩の料理はヤマメとイワナのバター焼きに塩胡椒したものでしたね?」


「はい、バターを集めるのに少々費用が掛かりましたが、集めた甲斐がありました」


「塩胡椒はこちらで手に入りますし、バターもあまり高いようでしたら故国から取り寄せましょう」


「しかし出来るだけこの国で手に入る物は、この国て確保して非常時に備えるのでしたね?」


「はい、姉さんと話し合った基本戦略です」


「その話を聞いていましたから、御指示通り牛・山羊・馬を買い取ると商人たちに話しました。牛・山羊・馬を持ち込んだ商人には、優先的の胡椒や砂糖を販売すると申しましたから、来月には多くの牛馬が集まると思われます」


「餌の方は、里山や奥山の草を狩り、木々の葉を集める事で確保できると思われます」


 最悪日本から配合肥料を集めればいいし、どうとでもなるだろう。


「イチロウ殿が故国から卵を取り寄せてくれた事で、従士の毎日の食事が豊かになりました。しかも卵を孵化(ふか)させ、サートウ領だけでなくローゼンミュラー領でも養鶏を教えて下さったので、領民たちも日々の食事で卵を食べることが出来るようになりました。感謝してもしきれません、ありがとうございます」


「まあサートウ家とローゼンミュラー家は同盟関係にあり、私とビアンカ殿は婚約していますから、当然の支援をさせてもらっただけです。それで御願していた獣人たちはどうなりました?」

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