第57話新領地
「男爵閣下、サートウ城から歩いて1日半のところに里山を発見しました」
「その里山は沢沿いなのか?」
「はい閣下」
「広さはどれくらいあるのだ?」
「沢を含めてかなりの広さです、サートウ城の縄張りの10倍はあります」
「それはローゼンミュラー砦の周りにある里山と同じ程度と言うことか?」
「はい、それくらいだと思われます」
「それだけの広さがあって、人里がまったくないのか?」
「はい、今のところ発見できません」
「だが里山地帯なら、空濠を掘り土塁を設けたら人が住む城砦にすることも可能だな」
「はい、閣下は里山にサートウ城を築かれ、人が暮らせることを成功させておられますので、ここも十分な準備と人員を整えられれば可能かと思われます。ただ問題は、サートウ城からここまで1日半もの行程があり、その間に魔獣や獣の襲撃を受ける可能性があると言う事です」
「ツェツィーリアが言うように、事前の準備を万全に整え、満月期までに狭くても鉄壁の拠点を最初に設けることだな」
「はい、それがいいと私も考えます。それで私たちはこれからどうすればよいでしょうか?」
「無駄な危険を冒す事はない、新月期の間にサートウ城に戻ってくれ」
「承りました」
新たに家臣に加えた人狼族の5人に対して、サートウ城から更に奥地に人の住める場所がないか探索させることにした。もちろん何の監視もなく、身体能力が高く領地を欲している人狼族を送るわけには行かない。だから監視役として、人狼族の周囲をつかず離れず付き従うドローンを送り込んだ。もちろん飛行時間を延ばすためにバッテリーを増設し、操縦半径を伸ばす為に送受信能力を改良したセミオーダーメイド機だ。
ドローンを使って領内の巡察を行うには、セミオーダーメイド機は必要不可欠だった。もちろん送られてくる画像を見るのはノートパソコンの画面だから、俺かローゼンミュラー家の人間にしか任せられない。
事ここにいたって5姉妹だけでは手が回らず、頼りないものの3代目当主・クラウスと、その正妻のカミラにも画像監視にあたってもらうことになった。だがローゼンミュラー家の人間にアバーテ方面は任せられても、奥地に関しては俺かビアンカがやるしかない。
今回人狼族と会話しているのは、ドローンに増設したマイクと標準装備のカメラを使っており、携帯やスマホのような秘蔵品を貸し与えたわけではない。このような秘蔵機をまだ信頼しきれない人狼族に貸し与えるわけには行かない。
ローゼンミュラー家の御陰で男爵の地位と領地を手に入れることができたし、アーデルハイトたちが教都から戻って多くの兵と移民を手に入れることができた。今から彼らを使って準備していた遠征を、本格的に開始する為の指揮を執らなければならない。
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