第37話撮影会

「皆の者、狩りに行くぞ」


「「「「「はい」」」」」


 べアトリクスは意気揚々(いきようよう)と50人の従兵に命令を下したが、俺とビアンカはドローンの送る映像でそれを見ている。今回配信する動画は、異世界で獣や魔獣を狩るシリーズなのだが、こいつも爆発的に再生開数が伸びている。


 何といっても地球には存在しない動物や魔獣を狩る映像だから、本当に異世界に転移して撮影しているのか、CGで合成した物なのか議論が沸騰(ふっとう)している。御陰で動画を再生に来る人が世界的規模で増え、他のシリーズも合算すると、次の振込みは3000万円を超えそうなほどだ。


「1番隊、伏兵の奇襲にを警戒しつつ、敵本隊を罠に追い込め」


「「「「「はい!」」」」」


「2番隊は敵本隊を待ち受けて矢を打ち込め」


「「「「「はい!」」」」」


「3番隊は私の側を離れず、敵の奇襲を警戒しつつ、敵本隊が2番隊から逃げ延びた場合の追撃に備えよ!」


 ベアトリクスも必死なのだろう!


 次の新月期には、アーデルハイトとバルバラがダンジョン都市に交易に向かう。当然今度も貴族と有力騎士家の妨害があるだろう。いや、必ず妨害は行われるし、攻撃のために大軍を送り込んでくる可能性が高い。


 3代目当主の父親は頼りなく、2代目当主の祖父は病に倒れている。頼りの長姉と次姉が領地を離れれば、領地を護るのは自分の責任と思い悩んでいるようだ。俺の依頼で行われる狩も、実践訓練(じっせんくんれん)の良い機会と考え、獣や魔獣を敵本隊になぞらえて味方を指揮している。


 本来なら率先(そっせん)して狩りの指揮を取りたがるアーデルハイトも、バルバラから諌(いさ)められて見るだけで我慢(がまん)している。普段のアーデルハイトなら、絶対自分が指揮をとっただろう(子供かお前は!)。明日はブリギッタが実践訓練をかねて狩りの指揮を執るが、明後日は幼いビアンカが指揮を執ることになっている。もっともビアンカは館に残った状態で、ドローンで映像を見てマイクを使って指揮を執るから、最前線に立つわけではない。


 だが今回の狩りでも、ビアンカは新しく購入したドローンを駆使して、狩りのリアルな現場を立体的に撮影してくれている。この訓練の積み重ねが、非常時での冷静な判断と行動につながるだろう。いや、ぜひつながって欲しいものだ。そのために100万円以上を投入して、5台ものドローンを追加購入したのだ。


 他にも着々と完成に近づいているサートウ騎士家の城設備用に、風力発電セット4基・リチウムイオンバッテリー9基・ノートパソコン5台を購入したのだ。うまく使いこなせれば、1000や2000の兵が攻め込んできても撃退できる。そのためにも、俺自身もドローン操作をもっと上手にならなければならない!

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