第13話女傑対決2

「バルバラ殿、まずは胡椒と金貨を交換してもらおうか」


 忙しい姉ちゃんは、2度目の交渉時間を早朝に指定していた。だからノートパソコンとスマホを肌身離さず持ち歩いていたが、ローゼンミュラー家の面々もこの時間に合わせて朝食を準備したのかもしれない。


「残念だが、今我が家には金貨も銀貨もほとんどないのです」


 細やかな交渉条件はバルバラが相手をするようだが、アーデルハイトも交渉に加わる気満々だ。


「では確認しておきたいのだが、金貨も銀貨も混ぜ物はないのか」


「ない、純金と純銀でできています」


「金貨の重さは何グラムだ」


「金貨も銀貨も銅貨も3gに統一されています」


「では300g分の胡椒で相殺だな」


「まて、昨日説明した通り、部屋を貸し与える費用や日々の食事の費用も支払ってもらうぞ」


 アーデルハイトが我慢できずに横から口出ししたが、バルバラの目配せで気まずそうに口を閉じた。


「では聞いておきたいのだが、部屋を借りる費用と食事の費用は幾らなのだ?」


「部屋代は1日銀貨1枚、ライ麦パンが1個銅貨5枚、猪肉や熊肉が1kgで銀貨25枚です」


「金銀銅貨の交換比率か知りたい、それと細かな商品代金の表を作ってくれ」


「金貨1枚で銀貨16枚で、銀貨1枚で銅貨16枚だ。商品表は既に作っていますから、後でイチロウ殿に御渡ししましょう」


「それとそちらに剣闘士などの戦闘奴隷はいるのか?」


「いますが、我が家で人質となっている間は、戦闘奴隷を購入することは禁止します」


「逃げることや敵対することはしないと、神に宣誓(せんせい)しているのだから構わないだろう」


「それでも駄目です、領内に武器を持った者を入り込ませる訳にはいきません」


「だがな、こちらの最終的な目的は、一朗をこちらの世界に戻す事だ。そのためには、護衛を務める事のできる兵士が必要不可欠だ」


「では我が家の兵を護衛に付けましょう」


「ローゼンミュラー家で何人の兵士を一朗につけれるのだ?」


「前金でいくら払って頂けますか」


「もしかして、ローゼンミュラー家で傭兵を雇って、そいつらに護衛をさせる気か?」


「当然でしょう、油断すれば何時誰が領地を奪いに攻めてくるか分からない時代です、領内にイチロウ殿に忠誠を誓う者を入れる事など出来ません」


「分かった、それで構わないから、100人程度の歴戦の兵士を雇うには幾らかかる」


「通常騎兵が1日銀貨2枚と銅貨6枚、歩兵が1日銀貨1枚と銅貨3枚ですが、倍頂くことになります」


「兵士では無く召使を雇う事はできるのか?」


「それも我が家を通じて行って頂きます」


「分かった、では一朗をローゼンミュラー家の領地から出す事はできるのか?」


「それはできません、大切な人質ですから」


「では質問を変えるが、領地を出て人里に降りるのに何日かかる?」


「月相が悪いですから、20日以上待って頂くことになります」


「もう出かけなければいけない時間だ、一朗君、あとでラインかメールで連絡するから、今はしっかり腹ごしらえしておいて」


「分かりました」

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