第127話 生きるは死・死は生きる

このままでは、追い付かれると思った。


柚木は、近くにあった教室に入ろうと、左手をドアにかけようとすると、感覚がない。


自分の腕を見ると、左手の肘までなくなり、血が流れていた。


即座に霊子の方へ向くと、私の腕を咥えた霊子が、迫って来た。


咄嗟に殺されると思い、両手で顔を塞いだ。


ズシンとした。


見てみると、今度は右肘まで切られていた。


「う…うわ…ぎゃあぁぁぁぁぁぁ…腕が…腕がない。」


霊子は床に落ちた右手に指を指して、高笑いした。


「キャハハハハハハハ…腕ならここにありますよ!キャハハハハハハハ…じゃあ、次はどこを貰おうかな?」


柚木は近付いて来る霊子を、足で蹴り飛ばそうとした。


霊子の腹部に当たった。


スパン。


無情な音が鳴り響いた。


ボト。


足が切り落ちた。


ドシャ。


柚木は、体を支えきれなくなり倒れた。


「痛…い…助…け…て…お…願…い…許…して」


1つの魂はまた消滅した。


霊子は、開かずの間に運んだ。


再び、次を探そうと、階段を降りようとしたら秀と鉄也に遭遇した。


秀と鉄也は、即座に状況を把握して逃げようとした。


霊子は持っていた鎌を、まるでブーメランのように投げ、秀の右頭部に刺さった。


鉄也は一瞬足を止めたが、そのまま逃げようとした。


霊子は13段を飛び、着地して刺さった鎌を抜き、即座に鉄也の背中に切りつけた。


「があぁぁぁぁぁぁ」


鉄也は、背中を抑えながら走る。


霊子はそのまま、後ろから首を切りつけ落とした。


ゴロン。


首が階段から転げ落ちる。


霊子の脳裏に過去の映像が浮かぶ。


黒い球体に、体を入れると体が癒されていく。


まるで、今までの出来事が嘘のように。


霊子には、黒い球体の意味が分からない。


だが、壁が崩れ落ち、赤いマグマのような空間に変わった。


そこには、いくつもの鎖で、塞がれた鋼鉄で出来た扉があった。


私は、近づき、鎖を解こうとした。


すると、聞き覚えのある声が聞こえた。


声の先には、光に包まれた扉があり、鎖はなく、神々しいまでの威光を放っていた。


声が・・・誰か、思い出した。


お父さんとお母さん。


じゃあ、あの扉は天国。


鎖が巻かれた扉は地獄。


「私にどちらか選べって事?…神は汚いな…私が人を殺したのは、貴方が罪無き両親を死なせたからでしょう?」


返事はなく、重苦しいまでの空間。


半分は天国で、もう半分は地獄なのに、この地獄を匂わす赤い空間は何?。


私は地獄の方が相応しいわけ?。


神が両親を守っていれば、私は…殺人なんてしなかったのに。

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