第88話 あの日の始まり

「うーん、中々の出来だ。


霊子は喜ぶだろうか?…次はお前…だ…ぞ…拓己ぃぃぃぃぃ。」


鉄の処女に近づき、扉を閉めようと手をかざすと、拓己は必死に首を横に振るった。


死にたくない、死にたくない。


口に出さずとも、怨念じみた圧があった。


吉沢先生はそんな圧をものともせず、最後の言葉を言い放った。


「安心しなさい。


君の死は、私や霊子の最高のディナーに仕上げよう。


約束だ…じゃあ、次に会うのは皿の上でだね。」


ギイィィィィィバタン。


扉を閉めると、同時に悲痛な叫びが上がった。


「ギャアァァァァァ」


扉の無数の穴から、血が滝のように静かに流れ落ちる。


頭を両手で抑え、しゃがみ込む。


「あーあぁぁぁぁぁ…ふふ…あはは…ははははは」


笑いと共に立ち上がり、流れた血を穴ごと舐め回し、狂気がほとばしる。


扉を開けると、宙吊りになって体は穴だらけ、まだ血は止まらなく、首はだらんとし人形のようだった。


「美しい。


君もやっと醜い物から出て来れたんだねお帰り!」


吉沢先生はぶら下がった拓己を、優しくそっと抱きしめた。


「さてさて、霊子にプレゼント。


まだ、私からとは分からないようにしないと」


拓己の死体の足を掴み、扉を開き、理科室に放り投げた小平の2つに別れた肉体の上半身の髪の毛を掴んだ。


下半身は足を掴み、まるでゴミ捨て場に運ぶゴミ袋のように、杜撰な運び方だ。


持ち歩くと、上半身から臓器のような物が落ちた。


哀れみな目で、臓器を見た。


「臓器の一個くらい、無くても良いだろう。」


落ちた臓器は、拾わず理科室に運んだ。


台車に2人の死体を乗せて、体育館に向かった。


体育館に着くと、拓己の死体を取り出し2階の鉄格子にロープを引っ掛け、首にしっかりと巻きつけ宙吊りになった。


両手の中心に、釘を打ちまるで神が罪人を裁くかのように。


小平の上半身と下半身も吊るされ、無情にも宙吊りに吊るされた。


「これで完成、我ながら完璧だ。


霊子もきっと喜ぶさ、ひぁははははは」


吉沢先生は体育館を後にした。


こうして2人の犠牲によって、霊子に記憶が流れた。


今回の記憶映像は2つだった。


霊子は記憶をより感じ取る為に、目を瞑り五感を研ぎ澄ませた。

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