第87話 あの日の始まり

2階の理科室は、1階の構造と変わらず、室内の奥に更に部屋があるのも変わらない。


ただ、1箇所を除いて。


人目を避けるなら、奥の部屋に行くのが普通だ。


廊下を通っただけでは、中は全く見えないし、何より理科室だ。


関係の無い人は、普段は入らない。


つまり、吉沢先生しか入らないという事。


だが、吉沢先生は後ろの何も無い壁に手を当てている。


すると、壁が教室のドアぐらいの大きさが回転しながら開く。


隠し扉だ。


再び、2人を担ぎ中に入って行く。


部屋の広さは、畳11.5帖ぐらいだ。


真っ白な部屋。


所々、部屋の壁には血が飛び散った跡がある。


部屋には、様々な拷問具やナイフ、槍などが部屋を埋め尽くす程あった。


気を失っている拓己を、部屋の半分を埋め尽くす拷問台に両手を伸ばし、鎖に繋がれた。


反対側の足も、鎖に繋がれている。


鎖の根元は、鉄で出来た丸太のような形が台の中の上と下にあり、そこから鎖が伸びている。


拷問台の中心地に、スイッチのような物がある。


準備を終えると、小平をロープで縛り身動きの取れない状態にした。


人より一回り大きい、女性の形をした鉄で出来た棺の様な物があり、扉のように開ける事が出来る。


小平を入れる為、扉を開いた。


開かれた扉には無数の穴が空いており、扉を閉めると内側に向けて、人がナイフ程の釘が穴の数だけあった。


いわゆる、鉄の処女だ。


その中に、小平を入れた。


小平は物音に目を覚ました。


状況も場所も分からない。


確実なのは、殺されかけてる事だけは理解出来た。


叫ぼうと口を開くが、恐怖で声が出ない。


吉沢先生は声が出ない事を、まるで自分がこれから殺される事を見せつけるように実行した。


拷問台のスイッチを押した。


すると鉄の丸太のような部分が回転し、鎖を巻き始める。


両手両足を、固定された鎖ごと。


拓己は、体が千切れそうな痛みに絶叫した。


「痛い…辞めて、痛い、痛い、痛い…アァァァァァ」


ブチブチブチ。


「ギャアァァァァァ」


腰から上と下に千切れていた。


惨たらしく腸や骨、臓器が千切れた部分から垂れ落ちる。


口からは、よだれが垂れ、白目を向いてさっきまで生きていたとは信じられない程、年期を帯びた死体になっていた。


絶叫を無視するかのように、機械音が無情にもなり響いた。


皮肉にも、スイッチを押し止めたのは拷問台を作り、殺しとして使用した吉沢先生だった。

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