第56話 復讐の冷血

「そうですか!」


授業が始まり、人見の言う通りバスケの授業だった。


1試合10分程の試合を4本して、男女混合の中、皆楽しそうにしていた。


ただ、2人を除いて。


試合中も休憩中も終始、京子ばかりを見ていた。


その目は悍ましい程の眼力で、まるで睨まれたら呪われて死ぬと思わせる。


京子は視線に気づいていた。


自分には心当たりがない京子は、ちらちらと様子を伺いながら、機会があれば直接聞いてみようと思っていた。


時を同じくして、理枝や彩と仲が良かった夏希は、霊子の様子を伺っていた。


いつもの人見なら、霊子に視線を送る者を見逃しはしなかった。


けれど霊子の綺麗な鮮血のような唇から出た音は、京子と言う人見以外の人物。


頭の中は、京子でいっぱいだった。


夏希の目線は、霊子に行っている事に気がつかなかった。


夏希は1月前、理枝と彩と3人で霊子を虐める為追っていた。


だがいくら校内を探しても、霊子は愚か理枝や彩すら居なかった。


仕方なくその日は諦めた。


けれど、次の日もその又次の日も学校に来ていない。


あの2人は小学生から一緒で、夏希は高校から輪に入り3人でいつも一緒だった。


だから、2人の家庭環境も知っていた。


2人の両親は有名な大学の出身で、父親の方が病院の先生をやっていた。


理枝の方の親が院長で彩の親が副院長。


いつも私の子なら、優秀な医者になれると、期待され相当なプレッシャーだった。


両親が仲良かったのもあるが、同じ悩みがある事が、2人が仲良くしていた主な理由だった。


常に親から離れる為に、家にいる時間はなるべく無くした。


そんな事をしていたら、周りから不良と認識されるようになった。


只でさえ孤立していたら2人は、高校で夏希に会うまで、誰も恐れ関わろうとしてくれなかった。


それ故に、学校に来ない理由がなかった。


2人に何かあったに違いない。


そう思い、次の日霊子に尋問してでも聞こうと思った。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る