第36話 1人目
霊子は覚悟を決め、こくりと頷いた。
それは記憶のない状態の自分は、役に立たないと思っていた矢先、記憶喪失の事を皆に話すと里奈が言った為、それを話せば今の話に進展があるとの認識だった。
正木にとって、霊子程、綺麗でお淑やかな女性は初めての拝見だった。
クラスの女子達にも可愛い子は何人かいたが、どれも比べ物にならなかった。
時に、その美しさがある代わりに、自然と苦労の連続だったんじゃないかと思った。
霊子の顔は笑っていたが、どこか悲しみのオーラのような雰囲気が、立ち込めていたからだ。
「あの事って、霊子ちゃんなんかあったの?」
真に迫る感じで伝える。
「霊子は記憶喪失なの!前の学校の事も何もかも覚えてない。」
吉沢先生の写真を見てから思っていた事があった。
自分達にそっくりな30人のクラスメート、年が変わらずにいる教師、そして転校生の霊子、全ては偶然ではない、そう直感する。
その始まりの合図は、霊子の転校に関係があると推測し、周りにいる人達に霊子の記憶喪失を伝えれば、少しは何かのきっかけになると考えての事だった。
良くも悪くも、人の秘密を自分の口から話すのは、あまりいい気分ではない。
ましてや、親友の事なら尚更だ。
結果的に、霊子の記憶が戻るきっかけでもある、そういい聞かせないと、胸のズキズキした気持ちは取れそうもない。
正木は里奈から霊子に目が行き、心配そうに霊子の側まで駆け寄り、再び里奈に視線が戻る。
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