第30話 1人目

瑠璃の考えには納得したが、全部に賛同した訳ではない。


少人数ではあるが、ある程度の情報を共有した、仲間が必要と考えていた。


焦りながらも、明確な答えを出した。


「確かに言わない方が良いけど、2人じゃどうにもならないよ!」


その言葉の意味に、理解を示した。


「じゃあ、霊子達には言う?」


今にも消えてしまいそうな、声を出した。


「いや、ここは男子もいた方が良いと思う。」


その言葉に、里奈への視線が強まった。


里奈が男を頼るのは初めての事だった。


心をいくら強く保っても、まだ18歳の女の子。


誰かに縋りたい気持ちが、恐怖と不安によって生まれたのだ。


瑠璃は長い間、里奈の心情を知る程、同じ時間を過ごした。


だから、自分から男子に頼る姿は微笑ましかった。


里奈の言葉が発せられている最中は、先程の事を瞬き程の僅かな一瞬だが頭から離れていた。


「里奈の言う通り、男子にも言おう。でも誰にする?」


目線を瑠璃からずらした。


「友希と正木で良いんじゃない?2人とも霊子に気があるし!」


続けて質問をした。


「じゃあ、霊子達も含めて7人になるけど、他には言わないで良いよね?」


2人は意見が纏まると、7人と恐怖を分け合った気持ちでいた。


「うん。」


ただ、一言の返事だった。


話を終え、皆のいる教室に入った。


京子が勢いよく、里奈達の方へ走って来た。


「里奈~、瑠璃~、何処行ってたのー遅かったじゃん。」


話を切り出そうとすると。


「実は・・・」


相手の回答を待たずに、話を続けた。


「さっきね、理枝達に霊子に絡んで来たと言うか、因縁をつけたと言うか!」


瑠璃は京子の何も知らない無頓着な光景は、体の悪臭が体から抜ける薬になった。


「どっちも意味、一緒!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る