異世界(面白いかどうかはさておく)短編集
東利音(たまにエタらない ☆彡
スマホアプリで育てたキャラで魔物のはびこる異世界へ
俺はブラリーマン(ブラック企業で働くサラリーを貰う男)。
中の下流ぐらいの家庭に生まれ、奨学金を貰いながら偏差値そこそこの大学には行ったが、就職活動に成功したとは言えない。
思えば何の中身もない人生だった。
中学生以降は友達と遊んだこともなく、もちろん彼女なんてできたことがなかった。
社会人になってからも、会社と家の往復。休日出勤が多く、たまの休みは家でゴロゴロしている。
唯一の趣味と言えば、スマホでプレイしているゲーム。
わずかながら、課金しながら、ほそぼそと何年も続けている。通勤の電車内や休み時間をほとんど費やしながら。どちらかというとマイナーなゲームだが、飽きることなく続けている。
重課金勢には叶わないまでも、それなりのレベル、高ステータスのキャラを何体も育成できている。
そのアプリが近々サービス終了してしまうらしい。これからは何を目標に生きて行けばよいのだろうか? また同じように熱中できて、日々の激務の合間の癒しとなるゲームと出会うことができるのだろうか?
そんなことを考えながら、歩いていたらトラックに轢かれた。
俺は今……。
真っ白く、壁どころか天井も地面もない空間で神様らしき存在を目の前にしている。
「そうそう、死んだんですよ」
神様っぽい存在が軽く言う。
続けて、
「あなたはこの世界に未練はほとんどないようですから、異世界に転生したほうが良さそうですね」
「異世界……? それってWEB小説とかアニメで良くある感じの?」
「そうそう、そんな感じの。話が早くて助かりますわー」
ちょっとイントネーションが関西弁寄りかもしれない。
俺は訊ねる。
「異世界へ行く、以外の選択肢ってないんですか?」
「ええ、生まれ変わって新たな人生を歩むっていうのがスタンダードですんでね。魂の数って有限なんで。それで、どうします? 記憶を失くして、元居た世界で生まれなおすか、それとも今の記憶を持ったまま異世界に行くか」
「異世界に行くのであれば、記憶は引き継げるんですね?」
「全員がそうってことでもないですけれど。あなたの場合は今世がしょーもなすぎたんで、まあ来世は救済措置発動って感じで。そうそう、あなたが熱心にやりこんでいたゲーム。あのゲームで育てたキャラのステータスを持って転生することも可能ですよ、どうしましょう?」
「それも救済措置?」
「まあそんな感じですわ」
少し考えて、俺は
「それでお願いします」
と結論を出した。
さすがに何年もやりこんだだけあって、俺の育てたキャラのステータスは全ステータスが最高ランクのSに到達している。使える場面に遭遇する人生を送れるかどうかはわからないが、特殊なスキルを幾つも持っている。
異世界がどんな世界でどんな能力が必要なのかはわからないが、ステータスを引き継がずに転生するよりかは楽な人生になるのではないだろうか?
「じゃあ、早速ですが転生させますね。物心がついたぐらいで徐々に記憶と人格が蘇ってくるんで。親御さんに怪しまれないようにしてください。ほな」
神様的な存在がそういうと、俺の意識は徐々に失われていった。眠りに落ちる寸前のように。これから転生が行われて新たな人生が始まるのだろう。
混濁していく意識の中で、俺はこの数年間の努力の結晶でもある、自分の自慢のキャラのステータスを思い浮かべた。
ミート:S
パワー:S
守備 :S
走塁 :S
肩 :S
スキル:選球眼○、流し打ち○、以下略
野球ゲームのステータスが異世界で役に立つかどうかは未知数だが、どうか野球に似た競技が存在しているか、パワーとかミートが剣技とかにも応用できますように!
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