第9話 性犯罪の闇

 赤いランドセルを背負った女の子が、住宅街の細い路地を歩いている。

 白い水玉のワンピースに同じ柄のリボンをして髪をポニーテールに結い上げている。歩く度にランドセルについている鈴のキーホルダーが鳴り、同時にポニーテールをした髪が左右に揺れている。

 「あの、ちょっといいかな?」

 女の子がビックリして振り返ると一人の男が立っている。男は痩せており、口元が笑っている。女の子は、学校や親から知らない人から声をかけられても話してはいけません。と言われていたので、不安げな表情を浮かべて男を見上げている。

 「猫が逃げてしまったんだ。まだこの辺にいると思うんだけれど一緒に探してくれるかな?」男はやさしい口調で頼み込んだ。

 女の子はしばらく黙ったあと、「でも知らない人についていっちゃ駄目だって言われてるから…」と小さく口を動かして断ろうとする。しかし、男は携帯で猫の写真をみせ「この猫なんだ。まだ子猫だから見つからないと、寒さで死んでしまうかもしれないんだ。早く見つけてお家で暖かい毛布にくるんであげたい。助けて欲しいな…?」

 女の子は、子猫が命にかかわると聞くと真っ直ぐな瞳で「わかった…」と言う。

 男は笑顔になり「ありがとう。名前はチョビだよ。」といって横に並んで歩き始めた。

 「チョビ~チョビ~。」男と女の子が電信柱の裏や気の植え込みなどを探しながら歩き続ける。

 人気のない場所に来ると無人の集会所を男が指差した。「あそこに猫がいる!」女の子は身を乗り出して「どこ?」と見たが見えなかった。「あそこにいたんだ。チョビかもしれない。行ってみよう。」集会所は古い建物で、隣に鍵のかからない物置小屋がある。

 なかには町内会の運動会で使う赤いポールやおみこし等が無造作に置かれている。

 「この中かな…」男は物置小屋に入って女の子に手招きをしたのだが女の子は、不安げな表情を浮かべて「もう帰らないと。」と言って背を向けその場を離れようとすると、ランドセルをぐいっと引っ張られ物置小屋に連れ込まれた。「やめて!」女の子は男に押し倒され抵抗したが、体力的にも男が有利で無理だった。

 男は笑いながら、女の子の体をさわり始めた。女の子は泣いて助けを求めた。すると男の後ろから何かで頭をおもいっきり殴る音がして男は横に倒れこんだ。

 白いポロシャツのわたる先生が、金属バットを持ち立っている。

 男は気絶しているようだが、わたる先生は泣いている女の子に「大丈夫?怪我はない?早くお家に帰りなさい。」と呟いた。女の子は、しばらく手を震わせていたが、立ち上がることができたのでランドセルを背負いあわててかけ出していった。

 わたる先生は、女の子を見送るとタバコに火をつけた。

 

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