合法まおう!〜世界一優しい世界征服〜
ふみ台
第1章
第1話 その展開いつの時代のものですか?
会議室のようなこじんまりとした部屋に、モニターが複数台設置されている。こじんまりとしたスペースだ。そこに大柄ないかにも悪そうな男と、可愛らしいメガネをかけた貧乳少女がモニターを観察している。モニターには、名もなき勇者が魔物と戦っている様子が映し出されている。
「ダビデスさん、ファイルナンバー2931の勇者のバトル、合法ですかね」
4メートルにもなる大男が、慣れない手つきで機械を操作する。この男は機械よりも棍棒が似合いそうだ。機械を神経質そうに操作した後、少女に渡された資料を受け取り神経質そうに眺め、何かに気づく
「こいつ、昔ワシが懲らしめたヨゼフのジャンプソードかもしれん」
そう言うと、ダビデスはヨゼフのデータを探し少女に見せた。
「この動き、ヨゼフ=ハルトと同じじゃないか」
「あ〜ホントですね。敵を一旦ダウンさせてからジャンプして剣を刺す!これは、ヨゼフ=ハルトの動きですね。さっすが!ダビデスさん魔王を500年やっていただけありますね〜」
「ナオ、その言い方やめなさい!」
頼りにされることは嫌いではない。でも今の境遇に納得していないのだ。
「どうしてこんなことを、、、」
深いため息をつき、あの時のことを思い出した。
―――――――――――――――――――
禍々しくも重厚感のある城の主こそ、ダビデスだった。
ダビデスは、ユダという世界で最も恐ろしいと言われた男だ。そんな彼は、絶対悪のバベルを建国。バベルの王となり苦労の末、世界制服を果たしたのだ。世界征服をして、彼はバベルを掌握。苦節500年、彼はようやく夢を達成。これから、自分は世界の覇王となりこの世を”自分の正義”で収める。
そう考えると彼はワクワクして仕方がなかったのだ。もちろん、代償はあった。優秀な部下を多く失った。散った兵士のため、民のため、バベルのため、彼は群衆に問いかけた。
「見よ。ユダは我の手に。ダビデスの手中にあるのだ。民よ、お前たちを守るエデンはもういない。今日から私がこのユダを収め、永遠の楽園を築こうではないか」
恐怖を煽る演説。民が不安そうな顔をしていた。ダビデスは心の中で演説が成功したと喜んだ。満足したダビデスは、恐怖で震える民を見回す。これからどうやって生きていけばわからない民をダビデスは導くことになるのだ。どうやって希望を与えよう。そう考えていると、ダビデスは猛烈な眠気に襲われた。
体の感覚がどんどんなくなっていく。
動かない。
、、、、、
夢を達成した直後なのに。なぜこんな時に。そう思っていると、ダビデスは自分が凍ったことに気づいた。このまま死んでしまうのか。
世界征服をした直後に動けなくなった自分に絶望していると、どこからか声が聞こえてきた。
「ダビデス。ダビデス」
その声は暖かくどこかで聞いたことのある声。ダビデスには好意的に聞こえた。
「ダビデス。お前はまだここで死んではいけない」
死んだと言われて初めて自分が死んでいる事に気付いた。魔王たるもの後悔はしない。自分の人生に後悔はない。ダビデスは死神と思われるその声に対し力強く答えることにした。
「私は世界を征服するためにめちゃくちゃなことをした。死んでも仕方ないだろう」
「本当にそう思っているのか」
死神に問われた時に自分のことを考えると、確かに納得はしていない
「お前にチャンスをやろう」
「チャンス!?」
「世界征服をするのだ」
「いや、私は達成している‥‥」
「さぁ、行け。今度は失敗するでない」
死神にそう言われると、ダビデスの周りを光がまとった。
光とともに再び意識をなくすダビデス……。
「俺はやっぱり死んだのか?」
「‥‥さまぁ?‥スさまぁ!?」
「うっ、、、。ここは」
目を覚ますと、そこにはさっきまでいた荘厳な雰囲気の空間だった。重厚感あふれる鎧、剣、赤いカーペット。ダビデスが演説をした時と同じ状況だ。どうやら復活に成功したらしい。今までに聞いたことがないさっきの声の主は、弱そうな眼差しの15歳くらいの少女だった。エルフではなく、人間らしい。人間の中でもユダの世界では嫌われている種族とされる"クリステル"の誰かだろう。
「きさまか、私を起こしてくれたのは。よくぞやってくれた。名を述べよ。」
「ありがとうございます。私の名前はナオ=プラウディアです」
「ナオか。よくぞ生き返らせてくれた死ぬところだったぞ」
「まぁ、死んでいたんですけどね。世界を再び取り戻しましょう!」
「ちょっ、ちょっと待った!今サラっと重要なことを言ったな?」
「ええ?言いましたか?」
「私が死んだと言ったぞ。それに世界を取り戻すとも言った。どうなってる」
「その言葉の通りですけど」
「バカをいえ。さっき手に入れたではないか。私が宣言をした途端、アイスストームを食らって‥‥そうか、時が経過したのだな。私もバカではない。この展開知っているぞ。200年くらい経過しているんだろ」
「その展開いつの時代のものですか?」
「いつの時代って、今だろうが!」
「ダビデスさん、本当にバベルの住人ですか?氷づけ失敗だったのかな」
「何を言ってる!?アイスストームで200年凍ったんだろ?」
「そんな凍ってないです。凍ってたの30日ですよ」
「30日!?」
「今世界はどうなっている?」
「平和です。すごく」
300年ならまだしも、たったの30日。30日で世界が平和になるとは。自分の世界征服とは一体なんだったのか。その言葉を聞いてダビデスはガッカリした。
「たった30日で平和だと!?そんなはずが‥‥」
「そんなはずがあるから、起こしたんです」
ナオの言葉を聞いて安心した。必要とされている。でも、なぜ30日で世界が取り戻されたのか全くわからない。どうして世界征服が失敗したのかわからなかったのだ。
「ナオよ、お前は私の世界征服に賛成なのか」
「はい。大賛成です!でも今はやめた方がいいですよ!世界征服」
「どういうことだ」
「その言葉通り。とりあえず、何で失敗したのか。どうして私が世界征服に賛成しているのか理解するためについてきてもらえませんか?エデンに」
「エデン!?貴様、一体何者!?」
「エデン治安局第2部隊長のナオ=ヤハウェでーす!」
「治安局?私を逮捕しにきたのか?」
「そんなはずは。むしろ平和になるための協力をしてほしいんですよ」
「世界征服したいんでしょ。だったら自分の過ちを分析すべきです」
人生経験が明らかになさそうな女子にそう言われてショックだった。でも確かに世界征服が失敗したと言える。しかも、自分が信頼していた側近に起こされるのではなく、エデンの人間に起こされる始末。屈辱としか言えない。これまでの自分の行動を思い返すと「悔しい」の言葉しかない。
「協力する前に、30日で何があったのか真実を教えてほしい」
ダビデスは、現実と向き合う決意をした。
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