【5ツ眼】~〇眼ノ憎悪~

其の百十五 終宴の開宴


 深淵が無限を産み出し、静寂がはた喧しく空間を包みこむ、『土曜日』の宵闇――


 

 「――彼、来るかしら……」



 ポツリと、小石が放られるように、『如月さん』の声が空間に反響する。



 「……来る……、と、思うよ」


 「……返事は、なかったのよね」


 「……うん、なかった……、なかったけど――」



 確信していた。

 僕の呼び出しに、アイツはきっと『応じる』。



 僕の、願いとは、裏腹に――





 ――ガラガラガラガラッ……



 遠慮がちに、

 無機質に、

 『なんでもない』ように――


 僕の耳へ、引き扉の擦れる音が飛び込む。

 ――タンッ、タンッ、タンッ……と、生気のない足音が木霊こだまし、真っ暗闇の舞台……、『1-Aの教室』の中へと、僕と如月さん以外の『誰か』が入ってきた。『ソイツ』はいつも通り、ゾンビみたいな顔つきで、覇気のない眼つきで、暗がりの中、僕たち二人のことをボーッと眺めていた。


 足音がピタっと止まり、静寂が再び刻の進行を僕らに伝える。



 「……どうして――」



 懇願するように、

 誰かに寄りすがるように、

 砂漠の城が崩れ落ちるように――



 僕の口から、一人でに、声が漏れ出た。



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