シェルター開拓編

新たな日常に向けて

 Side 三枝 ユキノ


 パーティー明けの翌日。


 ウエストタウン代表者用の執務室――と言うよりレジスタンスの司令室みたいな場所で挨拶することになった。


「昨日はどうも。今回の恩を我々は一生忘れないだろう」


 ウエストタウン代表者、ジェイクさんに改めて礼を言われた。


「ど、どうも」


 人に感謝されるのにやはり自分は慣れてないのを痛感する。

 アイは「お役に立てて光栄です」と機会とは思えないような自然な返事をする。


「時にレベッカは?」


「酒の飲み過ぎです」


「そうか・・・・・・あのヤンチャ嬢ちゃんにも困ったものだ・・・・・・」


 それだけで色々と察してくれたらしい。

 レベッカは酒の飲み過ぎでダウンしてトラックで横になっている。

 自分も昨日のアルコールがまだ体に残っているがレベッカよりかはマシだ。


「元々この町には取引で来たんですけど」


「ああ、水や食料などか――欲しいのは欲しいのだが・・・・・・」


「大体想像は付きます。財政面的にキツイんですね」


「話が早くて助かる。現在ウエストタウンはあの野盗どもから受けたダメージのせいでかなり危うい状況だ。野盗を倒して他の町や集落と交易して財政の立て直しを図らないといけない」


「レベッカさんが聞いたらふざけんなとか言いそうですね」


「すまんな・・・・・・」


 レベッカさんを説得するのが今から恐いんですけど。


「残念ながら取引は出来る状態ではない。さらに困ったことはある」


「まだなにか?」


 その内容とは――



 シェルター前。


 ロボット達が順調に稼働していく。

 レベッカは終始不機嫌そうだった。

 

「どうして食い扶持が増えてるんだよ――」


 財政悪化などにともない、ウエストタウンでは養えない子供達を引き取る事になった。


 大人も何名か付いてきている。


 早速シェルター内外で定住作業が始まった。


「ハッキリ言わせて貰うがお前は人が良すぎる。何時か身を滅ぶすぞ」


 と、レベッカに言われたが――


「でもウエストタウンが無くなったら困るのは俺達だよ?」


「だからって上手く使われてんじゃねえか!?」


 そんなレベッカに子供達が寄ってきて「やっぱり私達迷惑なの?」、「ごめんねお姉ちゃん」、「僕達しっかり働くから」などと言われてレベッカは慌てて「ごめんな、ちょっとお姉ちゃん言い過ぎたわ」などと可愛らしい一面を見せた。


「と、とにかく引き取ったからしっかり面倒見ろよ!? いいな!?」


「はい」


「それはそうと、シェルターの外に住まわせる気かよ」


 アイは陣頭指揮を取ってあれこれ指示を飛ばしている。

 ロボットなどがフル稼働してバリケードやら簡易的な居住地などが建設されていく。

 手にはタブレット端末を持っており、リアルタイムで掲示板の住民とやり取りして知恵を貸して貰っているのだろう。 


「自分もそのつもりです」


「はあ? お前はあの家があるだろう?」


「でもなんか自分だけ特別扱いって言うのは落ち着かなくて」


「お前なあ・・・・・・」

 

 言わんとしている事は分かる。

 確かに自分は特別な立ち位置にいるが、だからと言って早々割り切れるもんじゃない。

 だから皆と一緒に外で暮らそうと思った。


 それに、不謹慎だがなんかワクワクする。

 学生に戻ったような気分だ。


 ブラック企業時代、ニート時代からは考えられなかった新しい生活。


 どうなるかなんて分からない。


 けど確かなのは、今自分は未来を選択できる立場にいることだ。

 

 

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