ようこそウエストタウンへ

 Side 三枝 ユキノ


 ウエストタウンの人々は殺した相手の死体漁りの真っ最中。


 なんかのゲームを思い出す。

 

 町の雰囲気は何というか西部劇とポストアポカリプスが混ざったような、木製上宅にプレハブやらトラックやらを利用した建造物などが立ち並んでいた。


 そんな町を眺めていると西部劇の保安官のようなおじさんが出迎えてくれた。


「俺はジェイク。ウエストタウンの代表を務めている。そちらは?」


 俺はどう説明しようか悩んだが代わりにアイが前に出て。


「私はシェルターから来ましたアイです。こちらは三枝 ユキノさん。目的は様々ですがコンタクトを取るためにこうしてウエストタウンに訪れた次第です」


 そう言ってアイはペコリと頭を下げて俺も習って頭を下げた。


「これは親切にどうも――それにしても長いことこの町に住んでるが近所にシェルターがあったとはな」


「知らなかったのですか?」


 アイがジェイクさんに尋ねる。


「ああ、そう言う構造物があるらしいと言うのは知っていたが――レベッカの奴、災難続きかと思ったがまさかここで大当たりを引くとはな」


「レベッカさんはシェルターの管理責任者の一人です。ちなみに私はアンドロイドです」


「成る程、大出世だなレベッカの奴。そちらのアンちゃんは?」


 と、俺の方に話題を向けられた。


「詳しくは言えませんが我がシェルターにとっても超重要人物です。シェルターの管理責任者の一人でもあります」


「ど、どうも」


「うん。あまり覇気が感じられんな? シェルター暮らしだったのか?」


 ジェイクさんにそう言われた。

 そう言われても仕方ないので「まあそんなところです」と返しておいた。


「本当はゆっくりしていって欲しいと言うのが本音だがな。あの野盗連中がこのまま引き下がるとは思えん。態勢を建て直したらまた襲い掛かってくる。協力してもらえるか?」


「おいおい、勝手に話を進めるなよオッサン」


 そこでレベッカがやって来た。


「その前に防衛に手伝ったんだ。報酬を弾むのが筋じゃないか?」


 言ってる事は正しいのだがなんだか図々しい気がする。

 ジェイクさんは少し考え込む素振りをした。


「・・・・・・ふむ。確かに助けてもらった礼はしたいのだが明日死体になってるかもしれん身でそうもいかんのでな・・・・・・」


「おいおい・・・・・・じゃあ助け損じゃないか?」


 俺は思わず「いくら何でもそれは酷くないかな?」と言ってしまった。


「そんなだとただ働きで扱き使われるのがオチなんだよ」


「けど――」


「守りたきゃお前が守れ」


「うん・・・・・・」


 レベッカさんにはレベッカさんの考え方がある。

 この世界で生きていくためにはこうならざるおえなかったのだろう。


 俺はアイに目をやった。 


「ユキノさん。アナタの思うがままに行動してください」


 アイさんは何故か優しく、そう告げた。


「色々と相談したいことがある」


 俺のやりたい事は決まっている。


「おや、君はやる気かね? 正直嬉しいが人が良すぎるのも問題だぞ」


 ジェイクさんにもレベッカと同じような事を言われた。

 レベッカは「かーっ! お人好しだね、やっぱ早死にするタイプだよお前・・・・・・」などと言われる。


「でも、放っておけないよ――掲示板の人達に連絡がつけたらいいんだけど」


「ネットに接続ですか? ならトラックを使用してください」


「え? 出来るんですか?」


「ユキノさんの世界はともかくこれはユキノさんの世界のトラックよりも物凄いハイテクの軍用トラックなんですよ? ネットぐらい繋げれます」


「な、なるほど」

 

 そう言われるとネットが繋がるのがおかしいと考えるのが変なのか。


「とにかく掲示板に繋げましょう」


「う、うん」


 トラックに乗って液晶モニターにネットの掲示板に映し出す。


 スレは物凄い勢いで進行している。


 551:三枝 ユキノ


 おかえりー


 と書き込むと暫くただいまコールが続いた。


 そしてこれまでの経緯とアイが分かり易く動画で紹介してくれた。



 5:名無しさん


 正直ツッコミが追いつかん!?


 10:名無しさん


 衝撃情報満載なんですけど!?


 20:名無しさん


 世紀末にもやはりモヒカンがいたか・・・・・・


 25:名無しさん


 子供トラップとか定番すぎる。


 30:名無しさん


 それよりもパワーローダーの無双ショーよ!?


 なにあれ!?


 あの図体で空飛べるの!?


 40:名無しさん


 しかしパワーローダーも次々出てくるな。


 野盗制のハンドメイドパワーローダーにウエストタウンのシャーマンか。


 兵器産業の人達が発狂しそうだな。


 50:名無しさん


 40>

 てかとっくにしてんじゃねえのか?

 レーザー兵器とか出してるんだぞ?

 それに戦闘用ロボットに浮遊ドローンとかも衝撃だ。


 60:名無しさん


 とりあえず本題に入るぞ。

 町の防衛プランだな。

 

 70:名無しさん


 敵の戦力は多くて30以上。

 最悪それ以上に膨れあがる。

 

 ウエストタウン側の戦力は10。

 町全部を守りきるのは難しい。

 幾ら単機の戦力が強くても被害が出るぞ。


 75:名無しさん


 自衛官ニキとかならどうするんだろう?


 80:名無しさん


 それな。


 90:退役自衛官さん


 とにかく敵の情報が少なすぎる。

 ここは偵察が必要だな。


 93:名無しさん


 た、たいえき自衛官!?


 100:退役自衛官


 なんか色々と騒がしいから興味本位でね。よろしく頼むよ。



 105:名無しさん


 本物?

 

 てか自衛隊歴何年?


 最終階級は?



 110:退役自衛官


 あまり喋りすぎると本人を特定されるが・・・・・・勤務は四十年以上。

 最終階級は言えんが所属の駐屯地は○X駐屯地だ。

 災害派遣にも何度か出動したぞ。

 まあ大声では言えんが風俗やパチンコ狂いの部下に頭を悩ませたり、男女付き合いで問題を起こす部下を叱ったりして大変だったよ。


 ヘタに鉄拳制裁なんかすると怒られるしなぁ・・・・・・


 115:名無しさん


 退役自衛官さん>


 自衛隊あるある話だけどそれでも元本職かどうかは断定できんな。


 てか年齢幾つ?



 120:名無しさん 


 115>


 まあ今は動画サイトでおばあちゃんやおじいちゃんがゲームのプレイ動画とか挙げたりする時代だから。


 125:三枝 ユキノ


 ともかく偵察が必要なのは分かりました。

 他には?


 130:名無しさん


 あ。三枝さん信じる方向なんだ。


 150:名無しさん

 

 藁にも縋りたい気持ちなんだろう。


 170:退役自衛官


 敵は集団で一斉に逃げたと言う事はタイヤの跡や逃げた方角から奴達の拠点を把握出来る筈だ。


 ジェイク氏にそう言う場所に心当たりがないが尋ねて欲しい。

 

 動画を見て敵の装備を観た感じでは溜まり場となる場所は限られるだろう。

 ましてや荒廃した世界だ。

 そう言う場所は多くはあるまい。


 それと偵察する場合は退路の確保を念入りにしておいた方がいい。

 罠を用意できれば設置したりするのも有効だろう。


 200:三枝 ユキノ

 

 退役自衛官さん!!


 ありがとうございます!!


 210:退役自衛官


 礼には及ばん。


 君の幸運を祈るよ。  

 


「ふむ、そう言う場所があるとしたら廃棄された軍事基地が一カ所だな――あの規模の連中が根城にするには丁度いい広さだ。だが本当に偵察するのか?」


 早速ジェイクさんに尋ねると心当たりがあるようだ。


「私はパスだ。ノーギャラで働きたくはない」


「分かりました。万が一のためにベルセルクは置いておきますね」


 アイにそう言われてレベッカは驚いた。


「おいおい? 持ち逃げしておさらばする可能性とかは考えないのかよ?」


「私の計算通りならあの規模の野盗がうろついている状態で町の外を出歩くのは危険でしょう。ベルセルクをずっと着てられるのなら話は別ですが」


 アイがそう言うとジェイクさんが笑った。


「お前の負けだなレベッカ――坊主、代わりにシャーマンを持ってけ。俺の予備機だが無いよりかはマシだ」


「ありがとうございます。急ごうアイ」


「はい。ユキノさん」


 そして俺とアイは出発準備にとりかかった。

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