第97話断罪の始まり
卒業式当日、私は錬金術師としての正装をして臨んだ。錬金術師の正装は、剣舞の時に着ている服装と同じだ。そこに帽子が加わる。魔法学校の卒業式は、錬金術学科は剣舞訓練場、魔法学科の生徒は大講堂で行う。貴族と平民が同じ場所で卒業式を行うのはもってのほかだ、ということのようだ。
錬金術学科の生徒が魔法学科の生徒を助けたのだから、多少は歩み寄っているかと思ったけれど、現実は中々うまくいかない。
剣舞訓練場で卒業生の席に座る。一人一人、錬金術学科の先生から名前を呼ばれて、卒業証書が手渡される。私はベックウィズ先生に名前を呼ばれた。
全員名前を呼ばれて、卒業生代表の挨拶をクラスメイトのロバートがしていた。ロバートが首席かぁ。ここでの錬金術の授業も面白かったかも知れない。
卒業式が終わって、みんなで会場の外に出る。首席のロバートを取り囲む。みんな帽子を手にとって合図を待っている。
ロバートのかけ声に合わせて、帽子を一斉に空へ投げる。
卒業式が無事に終わった。私は捕らえられていない。やった……!ゲーム時間を超えたのだ。
「ジュリア、卒業式パーティー行きましょう」
クラスメイトのレイラが誘いに来た。どうやら今年は、大講堂で卒業式パーティーを魔法学科と合同でやるらしい。
錬金術学科が魔法学科の生徒を助けたことにはやっぱり意味があって、卒業式は時間短縮のためにバラバラに行い、パーティーは一緒にやろうということになったのだそうだ。
パーティーというとパートナーと連れて行かなければいけないとか細かい決まりがあるけれど、卒業式のパーティーなのでもっとラフだ。
卒業式の時に着た錬金術師の正装で出席してもかまわないのだそうだ。
私も錬金術師としての誇りがあるから、ドレスではなくて錬金術師の正装で出席することにした。
魔法学科の卒業式は、ジョシュア王子が卒業すると言うこともあって来賓席は国王、王妃、そしてナジュム王国の国王シャールーズが出席している。
本当は、シャールーズは錬金術学科の卒業式に出席するはずだったのだが、警備上の関係で魔法学科の卒業式に出席になっていた。
来賓や保護者も出席する卒業式パーティーとなると、あまり羽目を外す人もいなくて、安心できる。
会場内は、すでにたくさんの卒業生が集まっていた。魔法学科の生徒と錬金術学科の生徒が親しそうに話しているグループもあった。
会場内でレイラと別れて、マーゴとシベルを探した。マーゴとシベルは、貴族の令嬢の正装をしていた。シベルは以前、アミルがしていた変わった色取り取りのブレスレットをしている。
あれ?私じゃなくてシベルに売りつけたの?いや……あ!もしかして……
三人で近況を伝え合っていると、大講堂の中央ステージにジョシュア王子が立っていた。
片手にグラスを持っているので、乾杯の挨拶をするのだろう。直接ジョシュア王子に会うのは、あの告白された日以来だ。
彼の耳には、もう、私があげたピアスは飾られていない。
「今日、この場を借りてみなさんに、報告をしたいことがあります」
ジョシュアは、以前よりも少しだけたくましくなったような雰囲気がある。アーラシュ帝国で変わるきっかけがあったのだろう。
ジョシュアが何か言おうとするよりも先に、近くに居たアリエル・ホールドンが大講堂中に響き渡る声で言った。
「ジュリア・デクルー!貴女を、犯罪者として断罪します!!……そうですよね、ジョシュア様」
アリエルは、うっとりしながらジョシュアの腕に自分の腕を絡ませた。
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