第80話王都から港町ギティへ
夏休みになった。
共鳴石のペアリングは、石を持っている者同士が一メートル以内じゃないとペアリングできない状態で時間切れで提出した。
何かが違う気がするんだけれど、何が違うかわからないんだよね。ルーン文字は奥が深い。
毎年夏休みは、ナジュム王国のギティで過ごしていたけれど、今年はどうしよう。両親とルイがギティに滞在しているのは、手紙が来たので知っている。でも、王都パルヴァーネフから、港町ギティまでは駱駝で二日かかる。
砂漠も越えなきゃ行けないし。
「家族に会いに行くのか?俺もついて行こう。俺も挨拶しておこうと思っていた」
シャールーズの言葉に、私は口を開けたまま固まった。
シャールーズ、そんな普通の彼氏みたいな発想あったんだ。
「なんだ、その表情は。俺にだって常識ぐらいある」
何様、俺様、シャールーズ様、っていうぐらい偉そうにしているシャールーズだけれど、家族思いな一面もあるのか。
「嬉しい。弟には会っているから、両親に紹介するわ。お兄様は、領地に住んでいるから、ギティには来ていないの」
「デクルー侯爵には、毎年会っている」
ん?
「毎年王宮まで表敬訪問に来ている。外務大臣の仕事だ」
「知らなかったわ」
「俺は王太子時代から、ずっとデクルー侯爵に娘を妃にすると宣言し続けていた……が、まったく相手にされなかったな」
それは、たぶん、お父様は私と、ジョシュア王子がいい仲かもしれないと思っていたからではないかしら。ジョシュア王子が、我が家に遊びに来たとき仲良く遊んでいたのをお父様は知っているだろうから。
「ギティに行くんだったら、通常の旅装準備の他に、対魔獣用の用意もしておくと良い」
「何かあるの?」
魔獣用って穏やかじゃ無い。主要な街道は騎士団が魔獣排除をしていて、私たちの生活にはほとんど関わりが無い。
「毎年、俺は色々遭遇しているからな」
シャールーズは、毎年何にであってるんだろう?こういう妙なことを引いちゃうのもシャールーズなんだよね……。
○●○●
王都パルヴァーネフから港町ギティまでは、アミルの商会の商隊と一緒に行くことにした。身分を隠したシャールーズも一緒。
シャールーズは身分を隠したというか、特徴的な瞳の色を変えて、質素な服装にしただけだ。偉そうな態度は変わらないので、何も知らない人が見たら、貴族だろうなというのは察しそう。
アミルの商隊の人たちも、この時期のパルヴァーネフからギティルートは、危険が伴うというのは知って居るみたいで、重装備だった。
え?何が出るの……。
不安しかない状態で、王都パルヴァーネフを出発した。すぐに砂漠へと出る。太陽の日差しから自分を守るため長い布を頭から被って全身を覆う。
駱駝に揺られて一日の行程が終わったところで、辺りが騒がしくなった。
燃え落ちそうな太陽が地平線へと消えていったそのとき、冷たい空気が辺りに漂い始める。たしかに砂漠は夜は冷えるが、いきなり気温が下がり始めるのは異常だ。
低いうなり声が聞こえ始めた。獣の声とは違う。虚ろで、嫌な声だ。
「来るぞ。全員盾を構えよ!」
シャールーズの号令で、商隊の護衛達が盾を構える。私はシャールーズに庇われ、すぐに魔法陣が空中に浮かぶ。
魔法かと思ったけれど、これは錬金術のルーン文字で構成されていた。
直後、半透明の塊が空中に現れ、大きな手で護衛達を叩く。
辛くも盾で防いだものの、続けてもう一度。隊列が乱れたところに、乾いた音を鳴らしている骸骨が剣を振りかぶる。
アンデッドの有名どころがお揃いだー!
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