第68話お兄様の結婚式


 お兄様の結婚式当日、私は朝からドレスに着替えて化粧をして、完全に令嬢として武装している。

 招待客の人たちが次々にやってくるので、その挨拶を受けていた。


 中庭はいつも以上に手入れをされていて、芝生も青々としていて目に美しい。中庭の通路の両サイドに招待客が並び、式が始まるのを待っている。

 中庭の一番見晴らしの良いところに台が置かれていて、そこに教会の儀式の道具が置いてある。司祭様がそこで式を執り行う。


「久しぶりだね、ジュリア」


 招待客の相手をしていたら、シベルの兄であるウィリアムズがやってきた。アングルシー侯爵家にはデクルー家から招待状を送っているし、お兄様はウィリアムズとも仲が良かったので個人的に招待状を送っているだろう。

 一緒にシベルも来ていた。


「お久しぶりです。ウィリアムズ様」


「本日は、おめでとうございます」


 シベルも貴族令嬢として武装していて、いつもと違った雰囲気だ。話し方も声の出し方もいつもと違う。


「よかったら、ちょっとシベルの相談に乗ってくれないかな?困ったことになっていてね」


 ウィリアムズが私に、そっと耳打ちをした。シベルが面倒なことになってるって、……あれか、エディット・フィッツウィリアムでなにかあったのだろうか。


「わかりました。この後のパーティーの時にでも」


 そろそろ特製の魔法石の効果が出てくる時期だ。エディット・フィッツウィリアムにどんな変化があったのだろう。シベルやマーゴとは、手紙のやりとりをしているが、そこまで酷いことは書いていなかったと思う。



○●○●



 結婚式が始まった。お兄様は、純白を基調とした騎士服を着ている。髪の毛はオールバックにしていて、秀麗な顔がよく見える。

 よく似合っていて格好いい……。


 お兄様が中庭の通路の途中で待っていると、エイマーズ伯爵にエスコートされた純白のドレスを着たゾーイがやってきた。

 細かなレースの縁取りがされたマリアベールは、身丈よりも長くて裾を、ベールボーイとベールガールがしっかりと握って引きずらないようにしている。ハイネックで首元までレースで覆われていて、華やかだけれど肌が露出しすぎないようになっている。スカート部分は光沢のある布地で、全体的にレースの刺繍が施されている。

 エスコート役が、エイマーズ伯爵からお兄様に変わるとき、お兄様とゾーイ様が目を合わせて幸せそうに微笑んだ。


 お兄様は、私たち家族の前ではあまり言わなかったけれど、ゾーイ様のことをとっても好きだったみたい。

 ゾーイ様は、栗色の髪を後ろで編み込んでまとめていて、一緒に生花が留められているので妖精みたいだ。

 司祭様の所まで歩いて行って、司祭様の言葉と誓いの言葉を新郎と新婦が互いに言う。


 やっぱり、結婚式って憧れる。私も、シャールーズと結婚式を挙げる確率が高いけれど、ランカスター王国式では無いだろう。ナジュム王国式のはずだ。

 そういえば、いつだったか、ギティで花嫁さんに出くわしたっけ。マントですっかり覆われていたのでどんなドレスを着ているのかはわからなかったけれど。



「それでは、誓いのキスを」


 お兄様とゾーイが幸せそうに、すこしはにかみながら唇を合わせた。

 結婚おめでとう。お兄様。

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