第64話商人アミル


 ニルーファルに補助器具のことをきいたら、ルーンを刻みやすくするための小さな刃のナイフらしい。ほかのナイフよりも刻みやすいように工夫がされているらしい。輸出制限もかかっていないし、お土産屋さんでも売っている品物だが、普通のナイフより割高なので、あまり買う人がいないそうだ。


 賢者のナイフという補助器具なのだが、協力してくれそうな、マーゴやシベルの分も買おうかと思ったのだが、そもそも錬金術の基本がわかって、ルーンの意味が分からないと、このナイフの意味はないのだそうだ。

 賢者のナイフにルーンを刻んでいて、持ち主が錬金術を使えるか判断しているようだ。錬金術が使えるという判定って何だろう?魔力では無いはずだ。


 そうなるとベックウィズ先生の双肩にすべてがのしかかることになる。それだったら、錬金術学科の生徒分賢者のナイフを購入して、ルーン文字の授業の時に課題として、魅了やあまり気持ちを抑えることができないようにする、という常時魔法を抵抗する魔法石を作ってもらえれば。

 賢者のナイフを大量購入するから、商会の人呼んでもらおうっと。




「……それで、アミルが来たのね」


「たまたまだよ。ビッリー」


「猫じゃ無いわよ」


 賢者のナイフを大量購入、輸送をしてもらうので輸出に強い商会の人を呼んでもらうように頼んだら、アミルがやってきた。アミルは部下も連れてきていた。


「今後、ナジュム王国で入り用があるときは、ラーヒズヤに申しつけてくれ」


 アミルの隣に並んでいた褐色肌の、黒髪で鋭い目つきの男性が一礼した。ラーヒズヤは、ナジュム王国でのアミルの商会の商会員だそうだ。


「賢者のナイフを錬金術学科の生徒と先生分を購入して、寄付として錬金術学科に納めたいの」


「これが商談の契約書。目を通してサインしてくれ」


 アミルから渡された書類に不備が無いことを確認して、サインをする。


「商談成立。で、ジュリアは、俺たちの隊商と一緒にランカスター王国に帰るか?」


 来月、お兄様が結婚式を挙げる。式に出席するために来月は一ヶ月間学校を休むことにしている。往復で20日間かかるし、結婚式は3日間続く。


「その方が安全だから、メンバーに入れてもらおうかな」


「結婚式での小物の入り用はないかな?ナジュム王国の小物をアクセントにするのも、粋だと思う」


「髪飾りが足りなかったはずだわ。帰国までに幾つか持ってきてちょうだい」


「毎度あり。ビッリーは支払いも早いし、気前も良いから良い顧客だよ」


 アミルはまた来ることを約束して、私の部屋から出て行った。来月一時帰国することについて、シャールーズに話したら、しばらく私をじっと見つめた後、帰国の時に渡す物がある、と言った。


 何をくれるんだろう。物をくれるのは嬉しいけれど、寂しがってくれた方が、好かれてるって感じがするのに。

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