第40話王子様のお茶会
私は、部屋の片付けもそこそこに寮の談話室に向かった。談話室は、1階の寮の玄関の近くにある。イメージカラーが青なので、寮の談話室も青色の調度品が多い。
談話室は寮生が主に使う部屋だが、他の寮生と会うのにも使うことが出来る。談話室には、数人の寮生がグループを作ってくつろいでいて、そこにジョシュアが一人でソファに座って待っていた。まるで、玉座に腰をかけているみたいだ。
「殿下、お待たせしました」
「じゃ、行こうか」
ジョシュアは私を寮から連れ出した。久しぶりに二人で並んで歩く。私は、二人で並んで歩くのは嫌いじゃない。ジョシュア王子は死亡フラグじゃなければ、いい人だ。二人の間に沈黙が流れても嫌な気分にならない。それは、幼なじみだからという理由が大きいと思う。
私たちは婚約者候補同士という親や大人の思惑で結ばれた縁だけれど、正式な婚約者というわけではない緩やかな関係が、今の私たちを作ったのだと思う。私は、この穏やかな関係が好きだ。
特別教室が多く集まっている管理棟までやってきた。人の居ない回廊で、ジョシュアは、短い呪文を唱えて回廊の壁を軽くノックした。すると、今まで何も無かった壁に急に扉が現れた。
「どうぞ」
ジョシュアは、扉を開けて私が中に入るように促した。
部屋は、過ごしやすそうな居間があった。学校にこんな部屋があるのだろうか?
「秘密の部屋への入り口。やり方覚えた?」
「魔力使う方法は私にはできないと思うけど」
「魔力はほんのちょっとだけ。呪文というかキーワードかな。決まったキーワードを言うと秘密の部屋がでてくるようになっているんだ」
「もしかして、そういう魔法をあらかじめあの壁にかけておいたの?」
「誰かがかけたみたいだね。僕たちはそれに気がついて解いた」
「解いた?」
「分からないように魔法がかけられていて、謎解きができた人だけが、この部屋を使う権利がある」
ジョシュアは、ソファに座った。私にもソファに座るように勧めた。
「ここを知っているのは、僕、マーゴ、シベル、クラレンス、そして、君だ。みんな呼んだからそろそろ来ると思うよ」
ドアベルが鳴るような音がしてマーゴとシベルが部屋に現れた。
「ごきげんよう、殿下、ジュリア」
「ごきげんよう」
マーゴとシベルがその場で優雅にお辞儀をして、私もそれを返した。また、すぐにドアベルが鳴って、クラレンスがやってきた。
「僕が最後かな?」
クラレンスも優雅に一礼して、ソファに腰掛けた。
「それじゃ、お茶会を始めようか」
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