第26話ウォード家の反乱


 四人で話し合って買ったボードゲームは、おどろおどろしい髑髏が描かれたゲームだった。あまりルールが複雑では無いもの、と店員さんにきいたら、これをおすすめされた。ホラーなゲームは嫌なんだけど、店員さんはホラーじゃ無いですよ、と言っていた。じゃあ、なんで、ボードゲームが入っている箱の絵柄が髑髏なんだろう。


 次に向かうのは、書店だ。お兄様達は課題をやるための参考資料がほしいらしい。我が家の図書室には無い本はないんじゃないか、という蔵書数だが、広く一般的に揃えているので、専門書は無いことが多いのだそうだ。


 お兄様、まだ一年生なのに、そんな専門書が必要なほど勉強されているなんて、素敵。


 私は書店で、近年の出来事が書かれた本を探すつもりだ。グリュー家についての暴露本とかあったりすると、非常にありがたいんだけど。


 私は、ゴシップ的な内容が書かれた本が並んでいる一角で、グリュー家について書かれた本はないかと、色々な本を手にとってはぱらぱらとページを流し読みする。


 うーん……不倫とか、浮気とかの暴露話は載ってるんだけど、お取りつぶし騒動的なのとは、ちょっと毛色が違いそうだ。


「なにを熱心にみてるんだ?」


 お兄様と一緒に課題用の資料を探していたアミルが、私の手にしていた本を後ろから覗き込んだ。


「こういうゴシップ好きなのか?」


「ちょ、ち、ちが……あの王国歴195年に起きた出来事が書かれた本を探してるの」


 不倫や浮気に興味津々の侯爵令嬢だと思われては、たまらない。


「195年?……ウォード家の反乱のことか?」


「ウォード家の反乱?」


「ああ、当時のウォード侯爵がうちに攻め入ろうと軍備を備えていたら、うちとの交戦に反対だった王家が止めに入って、内乱になったんだよ。結局、ウォード侯爵は処刑になったんじゃ無かったかな」


「そこに、グリュー家って出てくる?」


「さすがに、ランカスター王国で誰が関わってたかは詳しく分からない。うちは、うちの事情があってこの反乱鎮圧を助けてたから、帝国では平民に至るまで知ってる有名な話だ」


「そのことが書かれた本が欲しいわ」


「だったら、こんなゴシップまみれの所じゃ無くて、歴史書の所だよ」


 アミルは私の手を取ると、歴史書が並んでいる棚までエスコートしてくれた。


「これとか、そうだと思うけど」


 アミルが手渡してくれたのは、なかなかの厚さの本だった。


「これ読みやすいんじゃ無いかな?」


 ぱらぱら、と本のページをめくりながら、グリュー家について書かれていないか探した。


 だいたいアミルが説明してくれた内容が、短い文章で書かれている。もうちょっと詳しいのないのかな?


「もう少し詳しい内容の本のほうがいいかも」


「熱心だね」


 私は、手近にあった、いかにもウォード家の反乱について、書かれてますよと思わせる本を手に取った。

 この本は、ウォード家の反乱について詳しく書かれていて、歴史書に書かれているウォード家の反乱を検証していた。当時の一次資料を丹念に読み解き、ウォード家の反乱の全貌を明かそうとしているみたいだ。


 ここに、ウォード家の反乱で、ウォード家側についた貴族達の名前が書かれている。「グリュー家」の文字を見つけた。


 私は、この本を買うことにして、お兄様にお強請りしにいった。


○●○●


 ウォード家の反乱について、一級資料を元に検証をしているこの本によると、ウォード家はランカスター王国の侯爵家で王の信頼も厚かったらしい。


 だが、ここでウォード家はアーラシュ帝国への侵略を王に提案する。勝ち目が無いとして王は反対したが、密かにウォード家は兵力を集め編成した。


 これを、王家に叛意ありと判断され、数日間の内乱ののちに、ウォード家はお家お取りつぶし。ウォード家一族の5歳以上の男子は全員ギロチン、女子は全員修道院送り、5歳以下の男子は伯爵以下の貴族へ引き取られるか、裕福な平民のもとに引き取られたらしい。ウォード家の長女は王子の婚約者であったが、当然、婚約破棄の上、修道院に半ば幽閉状態だったようだ。


 ウォード家に味方した、グリュー家も取りつぶされ、一家離散したということが書かれていた。


この本、家系図までついてる。この本書いた人、かなりの凝り性なのでは?


私は何気なく家系図を見た。反乱に加わった貴族の家系図が全部書かれている。みんな、何処かしらで姻戚関係が結ばれているので、反乱に参加せざるを得ない状況だったのだろう。


私は、家系図の一点で目を留めた。ここに、何故、この人の名前があるの?


 

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