第4話 再会①


「東条さん、おはようございます」


「おお、渡辺、おはよう」


 空港で待ち合わせをしていた部下の渡辺と合流した。

 渡辺は今回が初めての中国だ。今後は私の代わりに行ってもらう可能性もあるので、出来るだけいろいろと教えたいと思っている。


 それに、いつもなら月曜から金曜までの出張だが、今回はスケジュールの都合で土日を挟んでの1週間だ。間に休みがある分、ゆっくりとできる。



 さあ、中国に出発だ。



 ――――中国に到着した私達は迎えの車に乗った。


 初めて中国を訪れた渡辺がなにやら隣で騒いでいる。


「うわっ、マジか・・・怖っ・・・」


 車のクラクションを鳴らしながら、別車線に割り込もうとする運転手たち。当たるか当たらないかのギリギリまで幅寄せしていく。

明らかに積載量を超えてそうな、荷物を山積みのトラックがあちらこちらに走っている。


「ははは、まあ、初めてだと怖いよな」


「これ、絶対、事故るでしょ?」


「まあ、事故は多いな」


「祈るしかないな・・・」


冗談半分でそんな会話をやり取りしながら、会社に向かった。



 ――――会社に到着した私たちは、駐在員の安西と社員に渡辺を紹介して、短い時間だったが今後の指導内容の確認を行った。


 社員との打ち合わせも終わり帰り支度をしていると、安西から親睦会の用意がしてあるから皆で行こうと誘われ、私と渡辺を含めた8名で行くことになった。


 日本人街に着くと、初めて訪れた渡辺はネオンの派手さと通りの賑やかさに驚いていた。


「むちゃくちゃ、店が多いですね!居酒屋フジサンとか、ちょっと笑いますよね」


「まあ確かに、“フジサン”とか“さくら”とか日本ぽい名前の店は多いな」


「さあ、入ろう」


 渡辺の自己紹介で宴会が始まった。

居酒屋だが、料理は日本のものとほとんど変わりない。結構本格的な懐石料理もある。マツタケの土瓶蒸しは格別美味かった。


 宴会が終わり安西から二次会を誘われ同行することになった。1ヶ月前に行ったクラブだ。



(シュウリンに会える)



 ――――部屋に入ると小姐が並び始めた。

 渡辺は初めてなのでシステムを説明し、小姐を選ぶように言った。

 皆が選んでいるときに、ママらしき人が私の隣に座って言った。


「前に指名した子にしますか?新しく指名しますか?」


(なぜ、俺のこと憶えてるんだ、こいつは・・・)


「あ、シュウリンで・・・」


シュウリンに会うのを楽しみにしているのを、見透かされたような感じがして少し照れた。



 ――――シュウリンがやってきた。1ヶ月ぶりの再会だ。


(あー、そうだ、そうだ、こういう顔をしていたな)


「好久不見」(久しぶり)


私は、ちょっと照れながら覚えた中国語で言った。


「好久不見」


と、彼女もそう言って隣に座った。


「別の人を指名するんじゃないかと思ってた。指名してくれてありがとう。嬉しかった・・・」


と照れくさそうに言った。


「1か月後に会おうって約束していたからね」


「うん、でも、もし指名されなかったら悲しかったな」


「嘘ばっかり!営業トークだろ!」


と、冗談交じりに言ってやった。


「ごめんなさい。ちょと言い過ぎた。でも、嬉しかったのはほんと」


(やっぱり、営業トークだったんかい!)


(けど、初めてごめんなさいって言ったな・・・)


「でも、あなたどうして嘘てわかた?」


(・・・こいつは)


ふと、彼女の指に指輪があるのに気付いた。


「それ、彼氏に貰ったの?」


「ううん、自分で買ったよ」


「彼氏は買ってくれないの?」


「彼氏いないよ」


(よっしゃあああ)


何故か若者のように喜んでしまった。


会話は尽きない。1ヶ月前の話をお互い思い出すように・・・。


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