第105話 歩み

雨で霞む町。


「………………」


ここが、どこなのか分からない。


道端に放置された私。気づいたら、この町にいた。




記憶喪失?


う~ん。




「あっ…………」




どうしてあの人は、頭がないんだろう。


ハロウィンは過ぎたよね?






『もうすぐ晴れるよ』




灰色の空から、声が聞こえた。その囁きが、私の背を押す。




でも分からない。


私は、これからどうしたらいいんだろう?




目の前に、背中にナイフが刺さったままの男の人が立っていた。ニヤニヤしながら私を見ている。




「お前も死んだんか?」




「えっ、わたし……。死んだの?」




「あぁ……そっか。まだ死んだ自覚ないんやな。可哀想に」




何となく。この知らない男の人と一緒に知らない町を歩く。




「なんで背中にナイフ?」




「彼女に刺された。まぁ、浮気を繰り返した俺が悪いんやけど」




「…………」




「いや、そんなに離れるなって。お前には、何もしないから!」


悪い人ではなさそう。


深いことは考えないで、とりあえずこの人と歩き続けようと思った。




「ってか、眩しいなぁ。どっかにサングラスないんかな」


「うん……。久しぶりに晴れた気がする」




雨上がりの町を【影のない二人】が歩いていく。


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